頭痛:どんな症状? 原因やリスクは? 自分で対処する方法は? どんなときに医療機関を受診すればいいの?
更新日:2020/11/11
- 頭痛専門医の荒木 信夫と申します。
- とつぜん頭痛がしたり、ひどい頭痛が何日も続いたりすると、心配になりますよね。「何か悪い原因で起こっているのではないか?」と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、頭痛の一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察のなかで、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしいこと」について記載いたします。
目次
まとめ
- 頭痛は日本人の多くの方が経験します。頭が痛くなることの原因はさまざまです。ただし、緊張型頭痛【きんちょうがたずつう】とか、片頭痛【へんずつう】とよばれるものが多くを占め、ほとんどの場合、命に関わるようなことはありません。
- ただし、今までに経験したことがないような激しい頭痛が起こった場合や、痛みが強くなった場合は、急いで脳神経内科や脳神経外科などの医療機関へ行くことをおすすめします。くも膜下出血や髄膜炎など、緊急治療を要する危険な病気がひそんでいることもまれにあります。
- 特に気をつけていただきたいのは、中高年以上の方です。ふだんから頭痛でお悩みの方も、いつもと違う頭痛を感じたら、必ず医療機関を受診してください。
頭痛って何? どんなふうに診断するの?
- 頭痛は、文字どおり、頭の一部分に痛みを感じることです。
- 医学の世界では、「眉毛と耳を結んだ線より上の部分」を頭とよび、そこに感じる痛みを頭痛といいます。
- 頭痛の診断は、次にあげるようなことを参考にしてなされます。
頭痛の診断の指標
- どのように生じたか:徐々に? 突然? 瞬間的? など
- どれくらいの程度か:じっとしていられない? 動けなくなる? など
- どれだけの時間続いているか:痛み始めてからずっと? 良くなったり悪くなったり? など
- 頭痛の前になんらかの症状があったか:はき気? 目の前がチカチカする? など
- 頭の左右で痛みの違いはあるか:頭全体が痛い? 右だけ? 左だけ? など
こんな症状があったら救急車を!
- 頭が痛いと感じたときに、まれに緊急で専門の医療機関を受診することが必要なときがあります。
- 次のような症状がある場合には、救急車を呼んで、CTやMRI検査が行える医療機関を受診してください。
救急車での医療機関受診が必要な症状
- 転落や交通事故など、頭部をけがしたあとに頭痛を感じた
- 突然起こった頭痛で、バットで殴られたような激しい痛みがある
- 頭痛と同時にねつがでている
- どんどん痛みがひどくなる
- 頭痛と同時に、うまく話せない、記憶があいまい、からだが動かしづらい、ものがぼやけて見える、意識がおかしいなどの症状がある
こんな症状があったらかかりつけ医を受診してください
- 以下のような症状がある場合には、かかりつけ医を受診してください。
かかりつけ医の受診がすすめられる場合
- 頭痛が頻繁に繰り返し現れる
- 手持ちの頭痛薬を飲んでも効果がなく、むしろ悪化していく
- 片頭痛を疑わせるような特徴がある
- これまでの頭痛とは様子が違う:特に40歳以上の方
- がんや免疫を抑える病気や治療、精神の病気などがある
- 強い頭痛があり、眼が充血している
どんな医療機関を受診すればよいの?
- かかりつけ医がある場合は、まずはかかりつけ医の先生に相談してみましょう。
- かかりつけ医がない場合は、最初は、内科の医師に受診をするとよいでしょう。
- 原因の疾患によっては、神経内科、脳外科、精神科、皮膚科、女性外来、頭痛専門外来への受診が必要になる場合があります。また、診断に当たってCTやMRI,髄液検査などの検査が必要になることがあります(下の「どんな病気のことが考えられる?」の項に、どのような受診が望ましいか記載しましたので参考にしてください)。
お医者さんに行ったらどんなことが行われるの?
- 病院ではまず患者さんのお話しを伺い、症状の詳細を教えていただきます。
- 特に、次のような情報をお医者さんに正しく伝えていただくと診療の助けになります。紙などに書いて持ってきていただくと、大変役に立ちます。
診療の助けになる情報:頭痛チェックシート
- 初めての頭痛か、以前にもあった頭痛か?
- 頭痛の持続時間は?:数分、数時間、数日など
- 痛みの場所は?:おでこ、くびの後ろ、後頭部、片方、両方、など
- 痛みの感じ方は?:ズキズキ、締め付けられるよう、人生最悪の頭痛、ピリピリ電気が走るよう、など
- 1回の頭痛はどれくらい続くか?:数秒~数分、数時間、ずっと続いている、など
- 頭痛以外の症状は?:熱、はき気、めまい、意識がおかしい、しゃべりにくい、目が見えにくくなった、手足のしびれ、頭にぶつぶつがある、など
- 頭痛の原因を詳しく調べるために、血液の検査や、頭部の画像検査(CTやMRIなど)を行うことがあります。
- まれに、背中から針を刺して、髄液【ずいえき】というものをとって検査することもあります。
頭痛にはどんな原因があるの?
- 頭が痛くなることの原因はさまざまですが、緊張型頭痛【きんちょうがたずつう】とか、片頭痛【へんずつう】とよばれるものが多くを占め、危険性は少ないことがほとんどです。これらはいわゆる慢性頭痛【まんせいずつう】で、代表的なものとしてはズキンズキンと痛む「片頭痛」です。
- ただし、くも膜下出血のような危険な病気がひそんでいることもまれにありますので、痛みがひどい場合や、手足のしびれなどの症状があるときは医療機関を受診してください。
片頭痛
- 片頭痛とよばれる病気は、脳になんらかの変化が生じて、脳の血管が拡張や収縮をすることで起こると考えられています。
- 片頭痛の患者さんは人口の8%、およそ840万人もいるといわれています。
- 朝方に起こり、はき気といっしょに頭の片方がズキンズキンと痛く感じるのが典型的な例です。
- 頭痛が起こる前に、視界にモザイクのような光が見える(閃輝暗点【せんきあんてん】といいます)こともあります。
- 暗いところで安静にし、まず薬局などで買えるお薬で対応しますが、あまり効果がない場合は病院でお薬をもらうこともできます。
- 片頭痛のセルフチェック:(1)にあげる4つの症状のうち2つ以上があてはまり、(2)の2つのどちらかがあてはまった方は、片頭痛であると考えられます。
片頭痛のセルフチェック(1)
- 頭の片側が痛む
- ズキンズキンとする痛み
- 日常生活に支障があるくらいの痛み
- からだを動かすと痛みが悪化する
片頭痛のセルフチェック(2)
- 頭痛が起こるとはき気がする
- 光・音に敏感になる
筋緊張頭痛
- 7割以上の方の頭痛は、筋緊張頭痛【きんきんちょうずつう】という筋肉の収縮による頭痛で、ストレスや疲労が原因となって痛みが起こります。
- 午後に仕事などで疲れたときに、こめかみや後頭部をベルトで締め付けられるような痛みを感じるのが典型的な例です。
- 市販の痛み止めのお薬で対応をします。
- この患者さんは最も多く、人口の20%、2,000万人の方が経験しているといわれています。
- 筋緊張頭痛と片頭痛とは、痛みの起こり方や前兆などが異なります。また、緊張型頭痛は、一般に片頭痛と比べて長く続きます(30分程度で治まったり、1週間程度続いたりと個人差があります)。
- 緊張型頭痛のセルフチェック:(1)にあげる4つの症状のうち2つ以上があてはまり、(2)の2つのどちらかがあてはまった方は、緊張型頭痛であると考えられます。
緊張型頭痛のセルフチェック(1)
- 頭の両側が痛む
- 圧迫するような痛み
- 仕事はこなせるくらいの痛み
- からだを動かしても痛みが悪化しない
緊張型頭痛のセルフチェック(2)
- 頭痛が起こってもはき気は生じない
- 光か音が気になったとしても、どちらか1つ
お薬の使いすぎによる頭痛
- 片頭痛などを抑えるための鎮痛剤の使いすぎが原因で起こる頭痛です。お薬の使い過ぎによる頭痛(薬物乱用頭痛)とよばれます。
- もともと頭痛をもっていらっしゃる方が、月経痛や腰痛になったときにも、痛み止めとして鎮痛薬を使用すると思いますが、このような場合も、鎮痛薬を飲みすぎると頭痛の原因になりますので、注意してください。
- お薬の使いすぎによる頭痛のセルフチェック:3つの項目すべてにあてはまれば、お薬の使いすぎによる頭痛であると考えられます。
お薬の使いすぎによる頭痛のセルフチェック
- もともと片頭痛や緊張型頭痛などがある
- 1か月に15日以上頭痛がある
- 痛み止めのお薬などを3か月以上使用している
群発頭痛
- 群発頭痛【ぐんぱつずつう】では、片目の奥にはげしい痛みを感じます。群発頭痛は男性に多く、12万人くらいの患者さんがいるといわれています。
- 片方の目の奥のあたりと側頭部にはげしい痛みが起こる、また頭痛が生じている側の眼の充血、涙や鼻水が止まらないなどの症状があり、いずれも片方だけに症状が現れることが特徴です。
- 群発頭痛の症状は1~3時間ほど続き、夜から明け方、特に眠ってから2時間ほどで起こることが多くみられます。
コラム:片頭痛と群発頭痛の違い
- 痛みだけではなく、興奮した状態になって動き回ったり、気分が落ち着かなくなったりすることがあります。これが、からだを動かすと悪化する「片頭痛」との違いです。
- 私が受けもった患者さんでは、自分で自分の頭を殴ったり、壁に頭をぶつけたりするような方もいらっしゃいました。
かぜなどによる頭痛
- かぜ、インフルエンザなどの病気にかかったときに、同時に頭痛を感じることもあります。
重篤な病気による頭痛
- また、頭痛の背景に重篤な病気を認めることがあることを知っておいてください。
- 特に、もともと片頭痛をもっている方が、いつもとは違う頭痛を感じた場合は要注意です。くも膜下出血や髄膜炎などのような別の病気が原因の可能性がありますので、必ず医療機関を受診してください。
コラム:頭痛の落とし穴
- もともと片頭痛を持っていらっしゃる方が、いつもとは違う頭痛を感じて診察を受けに来た場合には要注意です。私も苦い経験があります。その患者さんは、最初はいつもの片頭痛と思って放置していたそうですが、受診された時にはもう手遅れで、結局、くも膜下出血で亡くなられました。
- ここが頭痛の落とし穴で、慢性頭痛の方も、別の病気が原因の頭痛になる可能性があるということです。ふだん、頭痛でお悩みの方も、いつもと違う頭痛を感じたら、必ず医療機関を受診してください。
頭痛に対して、よくなるために自分でできることはあるの?
- もともと頭痛もちの方は、必ずしも医療機関を受診する必要がない場合がほとんどです。
- 特に以下に示すような方法を試すと頭痛を予防することができたり、早く良くなったりすると考えられています。
今ある痛みに対してできること
- ストレッチ:デスクワークなど、肩こりや首の疲れにつながりやすい作業をして痛みが生じた場合には、首や肩のストレッチをすることで頭痛が軽くなります。
- 温める:緊張型頭痛では、温めることで痛みがやわらぎます。
- 市販薬の内服:痛みがつらいときには、薬局などで購入できるお手持ちの頭痛薬を飲んでください。
市販の頭痛薬との付き合い方
- 最初は副作用の少ないアセトアミノフェン(市販薬:ノーシンACなど)がおすすめです。効果が不十分な場合にはロキソプロフェン(市販薬:ロキソニンS)を使うとよいかもしれません。
- アレルギーがある方や腎臓のはたらきが悪い方、胃潰瘍がある方は、頭痛薬を安易に使用することは避けてください。
- なお、痛み止めを長く飲み続けていると、痛み止めを飲んでいないときに頭痛が生じるようになることも知られています(「薬物乱用頭痛」です)。週2回以下の利用にとどめることをおすすめします。
予防のためにできること
- 睡眠:緊張型頭痛は、睡眠を十分にとることで予防をすることができます。ただし、睡眠が多すぎても少なすぎてもいけないので、規則正しい生活をするようにしてください。
- 十分な休養:かぜやインフルエンザにかかっている場合は、十分な休養をとると早く頭痛が楽になります。
- リラックス:ストレスは頭痛を悪化させるため、できるかぎりリラックスすることを心がけてください。
- 休憩:パソコンを長く使っていると眼の負担になり、緊張型頭痛を引き起こすことが知られています。パソコンを使うときはむりをせずに、休憩をはさみながら作業をしてください。
- 正しい姿勢:緊張型頭痛は、決まった姿勢で長い時間仕事をする人でよく起こります。座ったままの仕事が多い方は、ときどき立って仕事をするなど姿勢に気をつけることで予防できます。
- 運動:運動は緊張型頭痛の予防に効果があります。可能ならば1日に3~5回、1回2分程度の運動を行うことがおすすめです。
- 食事に注意:片頭痛は、チョコレートやワイン、チーズなどで悪化する場合があります。頭痛が起こるのが食事のあとなどの場合には、食事の内容を確認してみてください。
- 寝る姿勢に注意:朝方にピリピリと頭の後ろが痛くなるのは、後頭神経痛という病気です。枕が神経を圧迫することで起こりますので、寝る姿勢などを注意する必要があります。
行うと望ましくないこと
- 次にあげるのは、頭痛を悪化させると考えられていることです。
行うと望ましくないこと
- アルコールを飲むこと
- 食事を抜くこと:たとえ食欲がない場合でも、望ましくありません。
- 必要以上に睡眠をとること:頭痛をかえって悪化させます。
- 目を使いすぎること:たとえばPCやスマホなどの画面を見続けること。
もっと知りたい 頭痛のこと!
どんな病気のことが考えられる?
- 頭痛の原因には数多くの病気があります。痛みのせいで毎日の生活に大きな支障が出ている場合は、医療機関で相談してください。
- 頭痛の原因を探る手がかりになるのは、痛みが「急に起こった」ものか、「何度も繰り返している」ものかという点で、急に起こった初めての頭痛は通常、医療機関の受診が必要です。
- 以下、頭痛の原因とその典型的な症状を記載しました。
何度も繰り返す頭痛
お薬の使いすぎによる頭痛
- 鎮痛剤などの飲みすぎによって、薬剤がないときに頭痛を認めるようになった状態で、頭痛専門外来の受診が必要です。
急な頭痛の原因
- くも膜下出血:脳の血管に動脈瘤などが生じ、それが破裂して、血液が脳の周囲に漏れてしまう状態で、バットで殴られたような激しい頭痛を伴います。くも膜下出血は怖い病気で生命にかかわりますので、直ちに医療機関、とくにCTが撮像できる病院を受診してください
- 髄膜炎:脳を保護している3枚の膜が細菌やウイルスなどにより感染を受けたときに起こる頭痛です。典型的には高熱を伴う頭痛が数日から数週間つづき、意識がぼーっとします。緊急で医療機関を受診する必要があります。救急指定病院など地域の救急対応の可能な医療機関を検討ください。髄液の検査が必要になることがあります。
- 脳腫瘍:数週間~数か月単位で頭痛が強くなり、手足の麻痺やけいれんが現れます。MRIをもつ医療機関の受診をおすすめします。急性副鼻腔炎【きゅうせいふくびくうえん】:かぜをひいて、一度治ったころに頭痛が起こることや、まれに、虫歯が原因で生じることもあります。耳鼻科への受診を検討してください。
- 後頭神経痛【こうとうしんけいつう】・三叉神経痛【さんさしんけいつう】:頭の表面の神経に影響して起こり、ピリピリ電気が走るような痛み方をするのが典型です。脳神経内科への受診を検討してください。
- 帯状疱疹【たいじょうほうしん】:ピリピリとした痛みと水ぶくれが特徴です。水ぶくれの前に、痛みや違和感が先に現れることがあります。子どものころにかかった水ぼうそうのウイルスが原因ですので、皮膚科への受診を検討してください。
- 硬膜下血腫:頭部打撲後、ひと月ぐらいあとに生じる頭痛が特徴です。CTをもつ医療機関への受診を検討してください。
- うつ病:ひどく気分が落ち込み、頭痛がすることがあります。気分のあがりさがりにより頭痛が悪化したり、軽快したりしますので、精神科、心療内科への受診を検討してください。
- 高血圧症:まれに、血圧が高いことで頭痛を生じることがありますが、その頻度はあまり高くありません。
- 緑内障【りょくないしょう】:目の充血を伴う痛みが特徴で、正確には頭痛ではありません。目の痛みがひどすぎる場合は頭にまで痛みを感じることがあり、緊急の眼科の受診が必要です。
- 顎関節症【がくかんせつしょう】:歯ぎしりをする人が朝方に頭痛を認める場合などが典型例です。ご飯を食べるときに顎が痛い場合に考えます。口腔外科または耳鼻科への受診が望ましいです。
- 月経前症候群:月経の前後で生じる頭痛を特徴とします。内科、女性外来への受診が望ましいです。
- 中毒:アルコールなどを飲んだ後に生じる頭痛や、一酸化炭素中毒のときに生じる頭痛です。内科、救命救急科などで問診を基に診断となります。
- 低髄液圧性【ていずいえきあつせい】頭痛:立ち上がったときに悪化する頭痛が特徴です。脳神経内科への受診を検討ください。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- より詳しい情報や最新のガイドラインなどについては以下の書籍やウェブサイトを参照してください。
- 日本頭痛学会ガイドライン
- http://www.jhsnet.org/guideline.html
- https://www.neurology-jp.org/guidelinem/ch/index.html
- 日本神経学会・日本頭痛学会監修、慢性頭痛の診療ガイドライン作成委員会編集:慢性頭痛の診療ガイドライン2013.医学書院、東京、2013
- 日本頭痛学会・国際頭痛分類委員会訳:国際頭痛分類第3版.医学書院、東京、2018