慢性硬膜下血腫:原因は?症状は?検査や治療は?後遺症は残らない?
更新日:2020/11/11
- 日本脳神経外科学会専門医の髙木康志、鹿草 宏と申します。
- このページに来て戴いた方は、「慢性硬膜下血腫になってしまった?」と不安を感じておられるかもしれません。
- 今,不安を抱えている方や、まさに辛い症状を抱えている方に役立つ情報をまとめました。
- 日々の診療の中で「特に注意してほしい事」、「よく質問を受ける事」などについてまとめました。
目次
まとめ
- 慢性硬膜下血腫は、頭を打った後しばらく経ってから見つかる病気です。頭の中に血がたまって脳を圧迫し、急に症状が出てきます。
- 特にご高齢の方に多い病気です。
- 頭を打った後は、1か月くらいは何か症状が出ないか注意して過ごしてください。
慢性硬膜下血腫は、どんな病気?
- 慢性硬膜下血腫とは、頭を打ったことで頭の骨の内側で出血が起こり、徐々に血がたまる病気です。
- 通常、頭を打ってから1か月以上経って発見されます。
- 症状が出ても、本人よりも周りの方が先に気づきやすく、歳のせいにされてしまうことも少なくありません。
慢性硬膜下血腫と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 下記のような症状があれば、医療機関の受診を検討してください。
- なお、本疾患はご本人よりも、ご家族など周囲の方が異常に気付きやすい疾患です。少しでも本疾患を疑ったら、医療機関を受診させてあげて下さい。
病院を受診してほしい場合
- ご高齢の方で、急に活気がなくなったり、動作がゆっくりになったりしている
- 急にもの忘れをするようになった
- 歩行がおぼつかなくなった
- 突然、トイレに間に合わないことをくり返すようになった
救急車を呼ぶ場合
- 意識がもうろうとして反応が鈍い
- 急に手足が動かしにくくなった
慢性硬膜下血腫になりやすいのはどんな人?原因は?
- 基本的には頭をぶつけた方に起こります。とくに、以下のような方は注意が必要です。
注意が必要な方
- 50歳以上の方
- 血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方:バイアスピリン、プラビックス、プレタール、ワーファリン、イグザレルト、エリキュース、リクシアナなど。脳梗塞、心筋梗塞、心房細動などになったことがあると処方されるお薬です。
- お酒をよく飲む方:酔っていると知らない間に頭をぶつけていたということがあります。
どんな症状がでるの?
- 慢性硬膜下血腫になった場合、下記のような症状がでます。
慢性硬膜下血腫の症状
- 元気がなくなる
- 頭が痛くなる
- もの忘れがひどくなった
- トイレに間に合わない
- 歩きにくい
- 反応が鈍い
- 手足が動かしにくい
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 慢性硬膜下血腫の疑いがあると医師が判断した場合は、頭部CT検査を行います。脳梗塞などではないことを確認するために、頭部MRI/MRAを行うこともあります。
- なお、頭を打った直後の検査で異常がなくても、慢性硬膜下血腫は徐々に時間をかけて出血がたまることが多いため、油断はできません。注意してほしい症状があらわれた場合は、再度の画像検査が必要となります。
どんな治療があるの?
- 慢性硬膜下血腫の治療には、お薬による治療と手術による治療があります。
お薬による治療
- 血の量が少なく症状がない場合には、お薬を飲んでもらい、血のかたまりを小さくします。五苓散などのお薬が処方されます。
- 出血がおさまらず、気になる症状があらわれた場合は、手術が必要となります。お薬の治療を飛ばして、手術から始めることもあります。
手術による治療
- 出血が溜まっている側の頭の皮を約5cm切り、頭の骨に孔を開け、チューブを挿入して血のかたまりを吸い出します(穿頭血腫除去術【せんとうけっしゅじょきょじゅつ】といいます)。
- 場合によっては生理食塩水などで出血が溜まっているスペースを洗浄することもあります。
- 局所麻酔で行うことが多いですが、状況に応じて全身麻酔でも行います。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 手術で血のかたまりを取っても、再び同じような症状が出ることがあります。退院して日常生活に戻ったあと、同じような症状が出る場合は再発の可能性があるため、再度画像検査を受けてください。
- また、病気になる前と比べると、手足の筋力が落ちていたり、動かしにくさが残っていたりする場合もあります。そのため、リハビリをしたり、もう一度頭を打たないようにさらに気をつける必要があります。
予防のためにできることは?
- 頭を打たないことが最も重要です。
- とくにご高齢の方では、弱い衝撃でもなることがあります。ご自宅の家具やコードの位置を変えたりすることで、転びにくい環境を整えることが大切です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 慢性硬膜下血腫による認知症や手足の動かしにくさは、適切な時期に治療をすればよくなる場合が多いです。
- 認知症が急に現れた場合、この病気が隠れている可能性があることを心に留めておいてください。「歳のせい」「認知症が始まったかな」などと決めつけず、早めに医療機関を受診していただくことをおすすめします。
追加の情報を手に入れるには?
- 慢性硬膜下血腫に関しては下記のページを参考にしてください。
- 脳神経外科疾患情報ページ(日本脳神経外科学会・日本脳神経外科コングレス)
- https://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/307.html
さいごに
- 慢性硬膜下血腫とよく似た症状がでる病気に、脳卒中(脳梗塞や脳出血、くも膜下出血)や脳腫瘍、水頭症などがあります。これらはすぐに治療をはじめないと命に危険が及ぶ可能性があります。
- いずれも頭部CT/MRIを受けていただくと診断できることが多いです。
- そのため、意識障害や突然の麻痺などがあった場合は、ただちに医療機関を受診して下さい。