うつ病:原因は?症状は?どんな顔つきなの?診断は?治療は?仕事はどうするの?
更新日:2020/11/11
- 気分障害専門の竹林 実と申します。気分障害とはうつ病と双極性障害(躁うつ病)を合わせた病名です。ここではうつ病について主に取り上げます。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分がうつ病になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- うつ病とは、気分の落ち込み、興味や喜びを感じなくなり、さまざまな身体の症状も出る脳の病気です。
- うつ病になったと思ったら、ストレスや負担を感じることからいったん離れることが大切です。
- 眠れなかったり、ご飯が食べられない場合は、お薬を飲むことが必要です。
- うつ病の多くは回復しますが、時間がかかることも多いので、焦らず長い目で見ていくようにしてください。必ず良くなる日が来ます。
うつ病/大うつ病性障害は、どんな病気?
- うつ病とは、こころと脳の病気です。
- もともとの遺伝的な原因とまわりの環境が複雑に絡みあってストレスに対して敏感な体質が作り出され、そこにこころと身体のストレスが加わることで生じる病気です。
- 気分の落ち込み、興味や喜びを感じなくなり、さまざまな身体の症状も出ます。
- 次のうち5つ以上の症状が、ほぼ毎日2週間以上続いている状態(抑うつ状態【よくうつじょうたい】といいます)になります。
抑うつ状態の症状
- 眠れない
- ご飯を食べたくない
- 何もする気が起きない
- 不安になる
- いらいらする
- 自分を責める気持ちになる
- 死にたい
- 体重が減った
- また、脳や身体の病気、お薬によってにうつ病になることもあります。
- その時は、脳や身体の病気の治療や薬を調整すれば、うつ病も改善する場合があります。
- 脳の画像検査や血液検査を受けられたことがない場合は、一度受けることをおすすめします。
コラム:2次的にうつ病を起こす病気
- 脳のできもの(腫瘍)、脳血管のつまり(血管障害)、ある種の脳炎、ホルモン異常(甲状腺機能の異常など)、他の病気の治療薬などが原因となります。
どんな症状がでるの?
- 次のうち5つ以上の症状が、ほぼ毎日2週間以上続いている状態(抑うつ状態【よくうつじょうたい】といいます)になります。また、★がついているものがどちらか当てはまることが条件になります。
抑うつ状態の症状
- 気分が落ち込む★
- 興味や喜びを感じない★
- 眠れなかったり、寝過ぎたりする
- ご飯を食べたくない、体重が減った
- ご飯を食べ過ぎる、体重が増えた
- 何もする気が起きない
- いつも疲れた気分になる
- 不安になる
- いらいらする
- 考え込んでしまう
- 物ごとを決めるのが遅くなる
- 自分を必要以上に責める気持ちになる
- 死にたいと何度も考える
- 生活に影響がある
うつ病/大うつ病性障害と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
精神科・心療内科【しんりょうないか】クリニックへの受診がおすすめな場合
- 気分の落ち込みがひどくて仕事・学校・家事などに影響が出始めたとき
- 眠れないとき
- 死にたいと思ったとき
- 抑うつ状態が2週間以上続くとき
精神科がある総合病院へ受診したほうがいい場合(場合によっては救急車を呼んでください)
- 実際、自殺をしようとしたとき
- 抑うつ状態のため身体が弱って動けなくなったとき
- 他の身体の病気と一緒に抑うつ状態になったとき
- 妊娠中に抑うつ状態になったとき
受診前によくなるために自分でできることは?
- 仕事・学校・家事などを早く切り上げたり、休みを取るようにしてみてください。
- 周りの人や家族に助けを求め、相談してください。
- 軽い散歩にでかけたり、音楽を聞いたり自分がリラックスできる短時間の気分転換をしてみてください。
- 旅行、過度な運動など、無理な長時間の気分転換はひかえてください。
- ごはんや水分はもし欲しくなくても規則正しくこまめに取ってください。
- 眠れなくても、お酒の飲みすぎ、スマートフォンの使いすぎ、ゲームのやりすぎには注意してください。
- それでも眠れない場合は、睡眠を改善してくれる薬であるジフェンヒドラミン(ドリエル)などの薬剤がドラッグストアで売っているので試してみてください。
うつ病/大うつ病性障害になりやすいのはどんな人?原因は?
- 最近大きなストレスを感じるできごとを経験した方
- ストレスを一人で抱え込みすぎたり、発散するのが苦手な方
- 他の人に相談するのが苦手な方
- 生活リズムや習慣が不規則な方
- 生活習慣病【せいかつしゅうかんびょう】や大きな身体の病気を持っている方
- むかし虐待【ぎゃくたい】を受けたことがあったり、なにかトラウマがあったりするなど、育った環境があまりよくなかった方
- 血のつながったひとでこころの病気の方がいる方
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 問診をとったり、うつ病評価尺度【ひょうかしゃくど】などといった心理検査を行います。
- 主に総合病院の精神科や精神科の専門病院では、血液検査や頭のCTやMRIなどといった脳の画像検査、 脳波検査を行います。
どんな治療があるの?
- カウンセリング(精神療法)、薬物療法、身体療法の3種類があります。
- 症状の重さやご本人・家族の希望に沿って、これらを組み合わせて治療を行います。
- 休養や環境の調整が多くの場合必要です。
- ストレス環境から離れられないときや自宅で休めないとき、中等症~重症のときは入院して治療が必要になります。
カウンセリング(精神療法)
- 可能な範囲で困りごとの相談にのります。
- ストレスについてやどんな症状がでているのか、どういった状況からうつ病になったのか、周りの環境やサポート体制、小さい時のご様子などをお聞きしたりもします。
- うつ病について、治療の仕方や休みかたなどをお教えします。
- うつ病になりやすい考え方や行動のパターンを話し合って、生活するうえでの工夫を一緒に考えます。(認知行動療法【にんちこうどうりょうほう】といいます)
薬物療法
- 眠れなかったり、気持ちの落ち込みがひどくて社会生活や日常生活に影響が出ている場合などに必要です。
- 抗うつ薬をご本人の症状や副作用を考えながらお出します。
- 効果が出るまでには2~3週間かかります。
- 効果がない場合は、他の種類の薬へ変更し、ご本人にあう薬剤を探します。
- 睡眠の問題がある場合は、睡眠薬を使います。最近は今までのものよりも依存しにくかったり副作用が少ないより安全な睡眠薬が出てきています。
身体療法
- 治すのが難しい場合に選ばれます。
- 軽い場合は反復性経頭蓋磁気刺激療法【はんぷくせいけいとうがいじきしげきりょうほう】(略してrTMSといいます)を行います。
- 重症の場合は修正型電気けいれん療法(ECTといいます)を行います。これは治療がなかなか効かなかったり、ご飯が食べられない、自殺したい気持ちが強い場合などに行います。この場合、効く確率は約90%です。
- いずれも入院して治療します。
- 少なくとも4~6週間の治療期間が必要です。
お医者さんでの治療で注意をすることは?治療の副作用は?
- うつ病の治療は最低でも3~6か月はかかるので焦らないでください。
- 治りきていないのに前と同じようなストレスがかかると、簡単にに再発します。
- お医者さんの意見を聞きながら、復帰する時期や環境の調整には十分気をつけてください。復帰した後の生活習慣を見直すことも再発を防ぐ大事なポイントです。
カウンセリングの場合
- 主治医や病院との相性が合わなければ、あまり効果がありません。自分にあったものをさがし、それを続けてください。
薬物療法の場合
- お薬をはじめてすぐは、吐き気、眠気などの副作用が出やすいです。
- いらいら感、眠れない、おこりっぽくなる、自殺しようとするなどの副作用(アクチベーション症候群といいます)がでることもあります。薬の量を減らしたり、やめたりすることができるので、症状に気づいたら早めにお医者さんに相談して下さい。
身体療法の場合
- rTMSやECTで症状が改善したのちに、気を付ける点は再発です。薬物療法とカウンセリングによる治療を続けたほうが再発の確率は低くなります。
- rTMSの副作用は、頭痛や刺激したところの周りの皮膚の痛みなどがあります。
- ECTは、手術ほどではないですが全身に麻酔をかけるのでリスクがあります。副作用としては、頭が痛くなったり、吐き気がしたり、筋肉痛や一時的な忘れっぽさなどがあります。
予防のためにできることは?
- 日頃からストレスをため込まないようにしてください。ストレス発散方法を持っておくことをおすすめします。
- 大きなストレスがあった場合は、そのストレスから一時的に離れたり、日頃から相談できる相手を作っておいてください。
- 早寝早起きをしたり軽い運動をするなど、規則正しい生活習慣を心がけてください。
- タンパク質やビタミンを取るようにしたり、糖分をとりすぎないようにするなど食生活を見直してください。とくに女性は鉄分を取ると良いです。肥満ぎみの方はダイエットをおすすめします。
- 生活習慣病や病気をお持ちの方、血のつながった家族にこころの病気の方がいる方は、リスクが高いので、積極的に治療を行うことや、上に書いた予防法をやってみてください。
- むかし虐待を受けていたり、大きなトラウマがあり、今もそのことでこころが苦しい方は、カウンセリングをうけることをおすすめします。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 多くの場合、比較的短い治療期間で回復します。しかし、20%くらいの方は、1年以上うつ状態が続くとも言われています。
- 再発の確率は、うつ病を繰り返すたびに高くなります。そのため再発の予防がとても重要です。