B-2
電子問診票と個人健康情報(PHR)を用いた
受診支援・電子カルテ補助システムの開発
受診前の情報取得から診療支援、継続支援までをつなぐ、統合型の医療DX基盤を開発しています
医療現場では、患者情報の入力・整理・活用が分断されており、医療従事者の業務負担の増加や、必要な情報の把握に時間を要することが課題となっています。
本研究では、電子問診票、個人健康情報(PHR)、電子カルテテンプレート、知識支援、遠隔診療支援を連携させ、受診から診療、継続支援までを支える新しい医療DX基盤の構築を目指します。
Purpose 研究の目的
本研究の目的は、これまで個別に発展してきた医療DXの仕組みを有機的に連携させることで、医療従事者の業務負担の軽減、医療の質の向上、医療アクセスの改善につなげることです。
主要電子カルテベンダーとの連携も視野に入れながら、医療現場で実際に活用される仕組みとして社会実装を進めていきます。
特に、以下のような課題の解決を目指しています。
- 診療前後の情報が十分に整理されず、把握や活用に時間がかかる
- 電子カルテへの入力や確認にかかる負担が大きい
- 受診支援、診療支援、遠隔支援が分断されている
- 医療データが十分に連携されず、継続的な活用につながりにくい
Image 研究全体のイメージ
図:B-2研究全体像
本研究では、電子問診票、PHR、電子カルテ連携、知識支援、遠隔診療支援を一体的に連携し、患者情報を診療現場で活用しやすい形へ整理・構造化する仕組みを構築します。これにより、受診前の情報取得から診療時の支援、継続的な健康管理までを一連の流れとして支えることを目指します。
Overview 研究開発の概要
本研究の特長は、医療DXの代表的な仕組みを個別に扱うのではなく、ひとつの流れとして統合する点にあります。
統合の対象となる主な要素は、以下の3つの支援領域です。
記録を支援
電子問診票・音声認識・電子カルテテンプレート
知識を支援
診療支援システム・症例報告・電子教科書
遠隔診療を支援
PHR連携・遠隔診療支援アプリ
これらを連携させることで、受診前の情報取得、診療時の記録・判断支援、再診や地域連携まで、一貫した支援の仕組みを構築します。
Development 研究開発の5つの柱
電子問診票を用いた受診支援・診療連携システムの開発
患者さんが受診前に入力した情報を整理し、診療時に活用しやすい形で医療従事者へ届ける仕組みを開発します。
PHRを用いた受診支援・診療連携システムの開発
日常の健康情報や検査データを活用し、継続的な健康管理や再診支援につながる仕組みを構築します。
電子カルテ補助システムの開発
診療時に必要な情報を見やすく整理し、入力や確認を支援することで、電子カルテ業務の効率化を図ります。
症例報告と電子教科書を融合した知識支援・遠隔診療支援アプリの開発
症例報告や医学知識を活用し、診療判断や遠隔での専門的な支援を後押しする仕組みを開発します。
大規模言語モデルを用いた用語表現自動正規化AIの開発
医療情報に含まれる表現のゆれをAIで整え、情報の再利用、分析、連携をしやすくします。
Value 本研究が目指す価値
図:AI音声認識による記録支援
本研究では、単なる業務効率化にとどまらず、医療現場全体の質向上に貢献することを目指しています。
具体的には、以下のような価値の創出を想定しています。
- 医療従事者の記録・入力負担の軽減
- 患者情報の把握の迅速化と診療の質向上
- 受診支援から再診支援までの連続的な支援
- 地域医療や遠隔診療との連携強化
- 医療データの活用促進による新たな知識発見
また、研究全体としては、医療現場の生産性を3%以上向上させることを目標に掲げています。
Achievement 現在の到達点
本研究では、研究開発と並行して、医療現場での実装・検証も進めています。
生成AI型の医療向け音声認識を
販売開始後1か月で導入
関連技術について
特許出願
AI音声認識ツールの
年度内導入拡大を推進
加えて、症例報告検索は 25,653例、利用医師は 約4,000名 に達しており、知識支援の基盤整備も進んでいます。
Activities 最近の主な取り組み
- 生成AI型の医療向け音声認識を販売開始し、導入医療機関の拡大を進めています。
- 富士通と共同で、電子カルテ機能補助システムの設計・開発・継続改善を進めています。
- PHRと電子問診票、地域医療連携システムの接続を進め、1地域での社会実装に向けた展開を進めています。
- 症例報告検索エンジンや知識支援システムの継続改善を進め、医師による利用拡大につなげています。
- 社会実装基盤の整備とあわせて、human in the loop の構築や医療DX・AI勉強会の継続にも取り組んでいます。
Implementation 社会実装に向けた展開
図:再診時電子問診票
本研究は、研究開発にとどまらず、実際の医療現場で活用されることを前提に進めています。
電子問診票・知識支援・電子カルテ補助システム
- 既存顧客を含む 50の中核病院 での社会実装を目指します
- 1,000医療機関 で知識支援システムの活用を目指します
- 協力医療機関や連携先とともに実装拡大を進めます
PHRを用いた受診支援・遠隔診療支援システム
- 700万人規模のPHR と電子問診票を連携し、健康管理と再診支援に活用します
- 2,000薬局 の検体測定データとの連携を進めます
- 3,000介護施設 への遠隔診療支援・知識支援の展開を目指します
また、再診時問診票のデータ転送は HL7 FHIR、AI音声認識は SMART on FHIR に基づく電子カルテ連携を進めています。
Outreach 対外発信・連携
本研究では、研究開発と社会実装を進めるとともに、対外発信や関係機関との連携にも取り組んでいます。
- NHKクローズアップ現代での紹介
- 読売新聞の医療記者部会での講演
- 医療情報学会、日本病院会、全日本病院会などでのセミナー実施
- 国際学会EMNLPでの採択
- PCT国際出願および米国特許出願
- SIPメディア勉強会、COIネクスト連携セミナーへの登壇
こうした発信・連携を通じて、医療DXの社会受容性を高めながら、研究成果の普及と標準化を推進しています。
Future 今後に向けて
本研究では、患者さんと医療従事者の双方にとって使いやすい仕組みを実現するため、大学、医療機関、自治体、企業と連携しながら研究開発と社会実装を進めています。
受診前の情報取得から診療支援、継続支援までをつなぐことで、より質が高く、持続可能な医療の実現に貢献していきます。
