血液ガス検査:何がわかるの?どんな時に必要?異常があると言われたら?
更新日:2020/11/11
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- 呼吸器内科専門医の星野友昭と申します。
 - このページに来ていただいた方は、呼吸不全の疑いまたはその心配があり、どのような検査があるのかについて知りたいと考えられているかもしれません。
 - 血液ガス検査について理解する上で役に立つ情報をまとめました。
 - 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
 
目次
まとめ
- 血液ガス検査は、動脈を流れる血液に含まれる酸素と二酸化炭素の量、酸塩基平衡を測定して、肺、心臓、腎臓などの機能を調べる検査です。
 - 血液をとるのに使う動脈は、手首の橈骨動脈【とうこつどうみゃく】か、足の付け根にある大腿動脈【だいたいどうみゃく】が多いです。
 - 普通の採血検査よりも難しく、出血などのリスクが高いことをご理解ください。
 
血液ガス検査ってどんな検査?

- 血液ガス検査とは、動脈を流れる血液に含まれる酸素(酸素分圧、PaO2といいます)、二酸化炭素(二酸化炭素分圧、PaCO2といいます)、酸性とアルカリ性のバランス(酸塩基平衡、pHといいます)を測定する検査です。
 - 「P」はPressureつまり圧、「a」はarterial 動脈、「O2」は酸素、「CO2」は二酸化炭素に由来します。
 - 健康な人の場合、正常値は下記の通りです。
 
血液ガス検査の正常値
- 酸素分圧(PaO2):100-年齢×0.4Torr【トール】 ※例えば50歳の方ならば80Torr
 - 二酸化炭素分圧(PaCO2):45 Torr未満
 - 酸塩基平衡(pH):7.35~7.45以内
 
結果について

- 酸素分圧(PaO2)が正常値を下回る場合、体に酸素が足りないと考えられます。
 - 二酸化炭素分圧(PaCO2)が正常値より多い場合、二酸化炭素が体に異常にたまっていると考えられます。
 - 酸塩基平衡(pH)が正常値の範囲に含まれない場合、血液の酸性とアルカリ性のバランスがおかしくなっていると考えられます。
 
どういう人がこの検査を受けるべき?

- 次のような方には血液ガス検査を受けていただきます。
 
血液ガス検査を受けていただく方
- 肺での呼吸がうまくいっていないことが疑われる方
 - 緊急で酸素を投与することが必要な方
 - 在宅で酸素療法が必要な方
 - 重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、間質性肺炎(肺線維症)、肺水腫、重度の肺炎、無気肺など、肺に重大な病気のある方。
 - うまれつき心臓に病気がある方
 - 神経や筋肉の病気が疑われる方
 - 呼吸を命令している脳の中枢に異常が疑われる方
 - その他、医師が血液ガス検査が必要と考える方
 
実際にはどんなことをするの?

- 血液検査をするときは通常、静脈から血液をとっています。一方、血液ガス検査では、動脈から血液をとる必要があります。動脈は皮膚の深いところにあるために確認が難しく、上からおさえたときにドキドキという脈の動きをよく感じる部位を探します。
 - 血液ガス検査に使う動脈は、利き手でない手首の親指側にある動脈(橈骨動脈【とうこつどうみゃく】)か、足の付け根にある動脈(大腿動脈【だいたいどうみゃく】)が多いです。
 - 採血キットも、血液ガス検査専用のものを使います。
 
実際の流れ

- 血液をとる動脈を探します。
 - 採血する場所を消毒します。
 - 針を皮膚から動脈に刺します。
 - 動脈に針が入ると、動脈を流れる血液が採血管(シリンジ)を上っていきます。
 - 空気中の酸素や二酸化炭素が入らないよう、採血管がいっぱいになるまで採血します。約1.6ccです。
 
検査にかかる時間は?痛みはある?

- 血液をとるのに必要な時間は、5分程度です。
 - ただ、動脈から血液をとるのは難しいので、1度で成功することは難しいかもしれません。また、ご高齢の方は動脈が硬くなっていることが多いため、さらに難易度が上がります。
 - また、通常の採血よりも痛いと感じられる方が多いです。大事な検査なので、どうかご協力ください。
 
他にどのような検査法があるの?

- パルスオキシメーターという装置で、動脈を流れる血液の酸素の量(酸素飽和度、SpO2【えすぴーおーつー】)を推定することができます。パルスオキシメーターは指先に装置を付ければ測定ができ、血液をとるために針を刺す必要がありません。
 - ただ、パルスオキシメーターでは、酸素分圧(PaO2)、二酸化炭素分圧(PaCO2)と酸塩基平衡(pH)は測定できません。
 
理解しておきたい リスクと合併症

- 動脈を使うために、ふつうの採血よりリスクが高くなります。
 
出血のリスク

- ふつうの血液検査よりも、出血するリスクが高いです。一番多い合併症も出血です。
 - とりわけ、血をさらさらにするお薬(抗凝固薬、抗血小板薬)を飲んでいる方は、出血しやすくなります。
 - 手首の橈骨動脈を使う場合、この動脈は細いので針を刺すのが難しいことが多いのですが、大量に出血することは少ないと考えられます。
 - 太い動脈を使えば採血は簡単なのですが、出血のリスクが大きくなります。大量に出血すると命に危険が及ぶこともあります。
 
その他のリスクと合併症

- 血液をとっている最中や直後に、一時的に血圧が低下して、気分が悪くなる、冷や汗がでる、気を失うといった症状がでることがあります。
 - 針を刺すときに神経を傷つけてしまい、痛み、しびれ、まれですが麻痺がおこることもあります。
 
検査後の注意は?

- 採血した後は、針を刺した部位を清潔なガーゼなどで強く圧迫してください。5分間圧迫すれば、普通は血が止まります。
 - 止血がうまくいかないと、出血で衣服を汚したり、内出血してしまいます。
 
検査後にこんな症状があったら病院に伝えてください

- 次のような場合は、すぐ病院にお知らせください。
 
お知らせいただきたい症状
- 血が止まらない場合
 - 採血した場所が大きく腫れてきた場合
 - 気分が悪くなったり、冷や汗が出たり、 気を失ったりした場合
 - 採血した手や足に、痛み、しびれや麻痺があらわれた場合
 
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?

- 血液ガス検査の詳しい情報や最新のガイドラインなどについては以下を参照してください。
 - 日本呼吸器学会「呼吸機能検査ガイドラインII ―血液ガス、パルスオキシメータ―」
 - 日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドラインJSLM 2018-検査値アプローチ/症候/疾患」
 
								


