良性発作性頭位めまい症:症状は?原因は?予防はできるの?治療法は?
更新日:2020/11/11
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- 耳鼻咽喉科専門医の北原 糺と申します。
 - このページに来ていただいたかたは、もしかするとめまいがあり、「良性発作性頭位めまい症」と診断され、不安を感じておられるかもしれません。
 - いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
 - 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
 
目次
まとめ
- 良性発作性頭位めまい症とは、頭を動かして一定の頭の位置をとると、動いているような感覚がする、回転性のめまいが起こる病気です。耳鳴り、耳が聞こえにくいなどの症状はありません。
 - めまいが何度も発生する場合には、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。
 - 治療では、自然に治るのを待ちつつ、めまい止めをめまいが出たときに飲みます。
 
良性発作性頭位めまい症は、どんな病気?

- 良性発作性頭位めまい症とは、頭を動かして一定の頭の位置をとると、動いているような感覚がする、回転性のめまいが起こる病気です。
 - 頭の位置が変化することで、耳の奥(内耳)にある三半規管が刺激されると起こります。三半規管は、外側半規管、前半規管、後半規管の3つあり、どこにでも起こります。
 - しかし、一番多いのは後半規管で、2/3を占めます。立っているとき、座っているときに、最も低い位置にある半規管だからです。残りの1/3は外側半規管です。
 
コラム:良性発作性頭位めまい症の種類は?
- 良性発作性頭位めまい症は、2種類に分けられます。
 - クプラ結石症:耳石が剥がれ、三半規管に入り込み、平衡感覚を感じる細胞(クプラ)にくっついてしまい、めまいが発生します。
 - 半規管結石症:耳石が剥がれ、三半規管の中を移動し、めまいが発生します。
 
良性発作性頭位めまい症と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?

- めまいが何度も発生する場合には、耳鼻咽喉科を受診してください。
 - 自然に治ることも多い病気ですが、治ったと思っても再びめまいが出てしまうこともあります。きちんと治療するためにも、病院を受診することをお勧めします。
 
良性発作性頭位めまい症になりやすいのはどんな人?原因は?

- 良性発作性頭位めまい症が起こりやすい方は以下の通りです。
 
良性発作性頭位めまい症が起こりやすい方
- お年寄りの方
 - 内耳の病気がある方
 - 頭を打った方
 

- このような方は、耳石という耳の中に固定されているものが剥がれやすく、良性発作性頭位めまい症になりやすいといえます。
 
コラム:良性発作性頭位めまい症が起こる原理は?
- 良性発作性頭位めまい症は、内耳(耳を3つに分けたときの一番奥側)の奥にある卵形嚢という水平なお皿の上に固定されているはずの耳石が剥がれ、平衡感覚を感じている三半規管の中に入り込み、中で耳石が転がり、めまいが起こります。
 - 耳石が転がると、体を動かしていないにもかかわらず、「動いている」という信号を脳に送ってしまいます。すると、内耳の信号と、目や筋肉での信号が一致せず、めまいが発生します。
 
どんな症状がでるの?

- 良性発作性頭位めまい症の症状は、長くても数分間、一定の頭の位置をとったときにでる、動いているような感覚がする回転性のめまいです。耳鳴り、耳が聞こえにくい、脳の神経の障害は起こりません。
 - くり返し同じ頭の位置を取ると、めまいは出にくくなります。
 - また、半規管の種類によって、めまいが出る頭の位置は異なります。首を前後に動かすと、後半規管で起こるめまい(後半規管型)が起こりやすく、首を左右に動かすと、外側半規管で起こるめまい(外側半規管型)が起こりやすくなります。
 
後半規管型めまいが出るとき
- 起き上がる
 - 寝転ぶ
 - 美容院や歯医者でベッドを倒される
 - 目薬をさす
 - 高い所のものを取る
 - 靴紐を結ぶ
 - うなずく
 
外側半規管型めまいが出るとき
- 寝返りをうつ
 - 振り向く
 
どんな治療があるの?

- 治療では、自然に治るのを待ちつつ、めまい止めをめまいが出たときに飲むことが一般的です。
 - 他には、耳石を元の位置に戻す頭位治療があります。耳鼻咽喉科で眼振検査をし、剥がれた耳石が入り込んだ半規管がどれか確認し、その半規管に合った頭位治療を行います。後半規管型にはエプリー法、外側半規管型にはレンパート法などがあります。
 - また、治りにくい場合は、剥がれた耳石が半規管に入り込まないよう、骨をかためたもので半規管を詰める手術を行うこともあります。このように治りにくい場合は、約0.5%とまれです。
 
治りにくい場合に自分でできることは?

- 頭を動かしたときのめまいがなかなか消えない、治ったと思ったのにすぐ再びめまいが出る、といった患者さんは、次の3つのことを順番に行ってください。
 
めまいが消えないときに自分でできること
- 耳石が剥がれないように、水分とカルシウムをよくとってください。
 - それでも耳石が剥がれるようなら、剥がれた耳石が三半規管に入り込まないよう、約45度頭を上げて寝てください。
 - それでも剥がれた耳石が三半規管に入り込むようなら、入り込んだ耳石をなるべく暴れさせないよう、頭をゆっくり動かすようにしてください。
 
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?

- 良性発作性頭位めまい症は、後半規管型は約40日、外側半規管型は約15日で、自然に治ります。
 - しかし、良性発作性頭位めまい症の1/4~1/3は再びめまいが起こります。特に、けがや内耳の病気がある場合は、再び起こりやすいです。
 
もっと知りたい! 良性発作性頭位めまい症のこと
良性発作性頭位めまい症は、よくある病気なの?

- めまいの病気全体のうち、内耳によるめまいは約70%、さらに内耳によるめまいのうち、良性発作性頭位めまい症は約70%と一番多い病気です。つまり、めまいの病気全体の中で、2人に1人が良性発作性頭位めまい症ということです。
 - さらに、60歳以上のめまい患者のうち、3人に2人が良性発作性頭位めまい症です。超高齢社会の日本において、ますます増える病気です。
 
「新型・良性発作性頭位めまい症」はなぜ検査で診断しにくいの?

- 超高齢化社会なので、気づかない間にほんの少しの耳石が剥がれ、寝ている間に三半規管に入ってしまう新型・良性発作性頭位めまい症の患者さんが増えます。入り込んだ耳石はほんの少しなので、お医者さんに行っても検査の異常が出にくく、診断が難しい病気です。
 - それでも患者さんがめまいを訴え続けると、お医者さんに心の病気だと決めつけられ、精神科に行くように言われてしまうことがあります。
 
検査で診断しにくい「新型・良性発作性頭位めまい症」を見抜くためには?

- 新型・良性発作性頭位めまい症を見抜くポイントとして、以下のエピソードがある場合は、良性発作性頭位めまい症を疑うことです。
 
お年寄り

- 年齢とともに耳石は剥がれやすくなります。
 
女性

- 耳石の剥がれやすさは、女性ホルモンの低下、骨粗鬆症と関係しています。
 
10年くらいふわふわ感が続いている

- 良性発作性頭位めまい症は平均1ヶ月で自然に治ると言われていますが、毎日少しずつ耳石が剥がれ、寝ている時に三半規管に入り込み続ければ、めまい症状は長く続きます。
 
どこの病院に行っても検査の結果は正常、原因不明と言われ続けている

- カロリック検査の結果が正常ということは、内耳の病気がないということではありません。逆に、剥がれた耳石が三半規管に入りこみ、めまいを起こしている可能性があるという検査の結果です。
 
ふわふわ感は動くと悪くなり、じっとしていると良くなる

- 三半規管内の中に剥がれた耳石があることを表しています。
 
ふわふわ感は午前中にひどく午後はましで、日によって強い弱いがある

- これも三半規管の中に剥がれた耳石があることを表しています。剥がれた耳石は夜~朝、午前中にかけて暴れやすく、自然になくなれば良くなり、耳石が再び剥がれれば悪くなります。
 
首や肩がガチガチに凝っている

- 頭を動かすと、三半規管の中の剥がれた耳石が転がり、めまいが生じます。患者さんの首や肩は、頭が動かないように、ガチガチに凝ります。
 
歩くときより自転車に乗っているときの方がましである

- 歩いている時は、頭は上下に大きく動きます。自転車に乗っているときは、頭はあまり動きません。
 
今までの人生で頭を強く打ったことがある

- 頭を強く打つと、耳石が付いている卵形嚢に傷がつき、そのときは耳石が剥がれなくても、何年、何十年も経ってから剥がれることがあります。
 
骨粗鬆症で治療している、ステロイド治療を受けている、子宮卵巣摘出術を受けている、乳癌の治療を受けている

- これらは、女性ホルモンが低下または抑えられている、骨の代謝を抑えるので、耳石が剥がれやすくなります。
 
数年前に一度、朝起きるときに数分だけ回転性のめまいがあった

- 良性発作性頭位めまい症の症状が以前にあったということは、これまでに耳石が剥がれたことがあることを意味します。
 
日常生活に支障は出るの?

- 後半規管で起こるめまいは、目覚めたときにはめまいは無く、起き上がったときにめまいが出ます。起き上がってしまえば、耳石は後半規管の底に沈むので位置が安定し、出勤できる場合が多いようです。
 - 外側半規管で起こるめまいは、めまいとともに目覚めます。外側半規管は日常的によく使うので、仕事にならず仕事を休む場合が多いようです。
 
								


