遠視:近視や老眼との違いは？原因は？矯正や治療の方法は？

更新日：2020/11/11

著者神谷 和孝 | 北里大学医療衛生学部視覚生理学 教授

監修五味 文 | 兵庫医科大学病院 主任教授/診療部長

  • 眼科専門医の神谷 和孝と申します。
  • とつぜん遠視になったり、ひどい遠視が何日も続いたりすると、心配になりますよね。何か悪い原因で起こっているのではないか？と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな？」と不安になられたりするかもしれません。
  • そこでこのページでは、遠視の一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
  • 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど説明したいこと」について記載をさせていただいています。
まとめ
  • 遠視とは、無調節状態において外からの光が目の奥の膜よりも遠くで像が結んでいる状態です。
  • 眼の奥の膜から離れるほど、遠視が強くなります。
  • 症状が軽ければ遠くが見えやすいですが、近くがやや見えにくいです。中等度以上であれば、遠くも近くもぼやけて見えます。
  • 凸レンズの眼鏡やコンタクトレンズを装用します。
  • 成長ともに、遠視は減る傾向にあります。
  • 視力は良いこともありますが、目が疲れやすいです。
  • 強度の遠視では、調節性内斜視や弱視を生じることがあります。

どんな症状?

  • 人は眼で物をみる時、眼のレンズを通して目の奥にある膜に像を結ぶことで物を認識しています。
  • 遠視とは、無調節状態において外からの光が目の奥の膜よりも遠くで像が結んでいる状態です（図１）。
  • 眼の奥の膜から離れるほど、遠視が強くなります。
  • 症状が軽ければ遠くが見えやすいですが、近くがやや見えにくいです。中等度以上であれば、遠くも近くもぼやけて見えます。
  • 凸レンズの眼鏡やコンタクトレンズを着けると、はっきり見えるようになります。
  • 近視と比較すると眼の調節によって裸眼視力は良い傾向にありますが、眼の疲労を生じやすくなります。（図１）

図表1 遠視のシェーマ

遠方からの光が網膜より中枢側に結像します。

主な原因とその説明

  • 遠視の原因によって屈折性遠視と軸性遠視の2種類に分けられます。
  • 屈折性遠視とは眼のレンズの屈折力が低い遠視を指します。
  • 軸性遠視とは眼球の奥行きが短い遠視のことです。
  • どちらも眼の奥の膜よりも遠くで像を結ぶため、ぼやけて見えることになります。
  • しかし、遠視は無意識に眼のレンズの調節が働いて視力は良いことが多いです。

コラム：遠視の評価

  • 屈曲度はD（ディオプター）という単位で表します。
  • 程度としては、3.0 D未満は軽度遠視、3.０以上6.0 D未満は中等度遠視、6.0 D以上は強度遠視とされています。

遠視に対して、よくなるために自分でできることは？

  • 近くや遠くのものがぼやけて見えたり、目が疲れやすいようであれば、早めに眼鏡やコンタクトレンズを装用すると良いです。（この部分は削除いただいても良いかと思います。）

こんな症状があったらかかりつけ医を受診しましょう

  • 近くや遠くのものがぼやけて見えたり、目が疲れやすいようであれば眼科を受診してください。

お医者さんでおこなわれること

  • 問診で近視を疑われると、下記のような検査をすることになります。

検査の種類

  • 視力検査：視力を測る検査です。文部科学省の判定基準では、A：裸眼視力1.0以上、B：0.7～0.9、C：0.3～0.6、D：0.2以下とし、A以外は要精密検査となります。
  • 自覚屈折検査：最高視力が得られるレンズ度数を求める検査です。調節力の影響を受けやすい小児では、調節麻痺薬を点眼した後に、屈折検査を行います。
  • 他覚屈折検査：オートレフラクトメーターを使って、目の屈折状態を自動計測します。
  • 検影法：眼底反射の動きを中和するレンズ度数を求める方法で、乳幼児の屈折異常のスクリーニングに有用です。

経過観察のポイントは？

  • 経過観察のポイントとして下記のようなものが挙げられます。

経過観察のポイント

  • 眼鏡やコンタクトレンズの度数が合っているか、定期的にチェックする
  • 特に学童期では屈折が変動しやすいため、必要に応じて処方を変更する
  • コンタクトレンズ装用者は、角膜の状態も定期的にチェックする
  • 成長とともに、遠視は減る傾向があります。

どんな治療があるの？

  • 遠視の治療として下記のようなものが挙げられます。

遠視の治療

  • 凸レンズの眼鏡やコンタクトレンズを装用する
  • 凸レンズは光を集める作用があり、網膜から後ろ側に離れてしまった結像点を網膜上に近づけます。度数が不適切であると、眼精疲労を訴えることがあります。
  • 遠視の程度によってはレーシックや有⽔晶体眼内レンズ⼿術が適応となることもあります。

追加の情報を手に入れるには？

もっと知りたい！　遠視のこと

どんな病気のことが考えられる？

  • 眼鏡やコンタクトの装着で治らない遠視として下記のようなものが挙げられます。

遠視が起こる眼の病気

  • 調節性内斜視：調節性内斜視は遠視が強いときにはっきりみようとして過剰なピント合わせを行うことで、目の位置が内向きになる状態です。
  • 弱視：弱視は、目の器質的疾患を有さない視力障害のことです。眼鏡やコンタクトレンズでは矯正できません。片方の目に強い遠視があったり、極端な屈折異常（近視・遠視・乱視など）があると生じることがあります。
  • 老視：老視は加齢に伴い、目の調節力が減弱することです。遠視でははっきり見るためにより多くの調節が必要なため、老視を自覚しやすくなります。ここが遠視と老視が混同されやすいポイントです。