アレルギー性鼻炎の免疫療法:どんな治療?適応は?
更新日:2020/11/11
- 耳鼻咽喉科医でアレルギー専門医の湯田厚司と申します。
- このページに来ていただいたかたは、花粉症やアレルギー性鼻炎で困っているので、免疫療法はどうか?と、思っているかたが多いかと思います。特に最近話題の舌下免疫療法に興味がある方が多いかと思います。
- アレルギー性鼻炎の免疫療法、特に舌下免疫療法について役立つ情報をまとめてみました。
- 日常の診療で患者さんに説明している情報をまとめています。
目次
まとめ
- 舌下免疫療法とは、アレルギーの原因(アレルゲン)を舌の裏に入れて1〜2分間そっとしておき、その後に飲み込み、体の性質を良くする治療です。
- 少ない量から開始して、安全な量で長く治療します。治療期間は長いですが、自宅で行えるため病院は月に1回程度、また、薬の味は無く、痛みもありません。
- 「スギ花粉症」と「ダニのアレルギー性鼻炎」に使え、保険適用で治療でき、効果も高いです。
- 行える病院が決まっているので、あらかじめ確認してから受診してください。
アレルギーの免疫療法とは?
- アレルギーの免疫療法とは、アレルギーの原因(アレルゲン)を体に入れて、体の性質を良くする治療です。
- いきなり多くのアレルゲンを取り入れると強い症状がでて、アナフィラキシーという症状がでることもあるので、少ない量から開始して、安全な量で長く治療します。
医療従事者向けコラム:別の名前はあるの?
- アレルギー性鼻炎では以前、「減感作療法」や「脱感作療法」と言われていました。
免疫療法の種類は?
- 免疫療法には、注射で体の中に入れる方法と、薬で舌の裏面に置いて(舌下)体の中に入れる方法があります。
- 注射法は1960年代から行われていて、新しい免疫療法として舌下法が2014年に初めて保険適応となりました。
- 注射法と舌下法は、どちらもスギ花粉とダニのアレルギーに使えます。ダニの治療のお薬は、ホコリ(ハウスダスト)の治療と同じです。
注射法と舌下法はどういう治療?
- 注射法は、とても薄い濃度の注射液から開始して、ゆっくりと注射の量や濃度を増やしていきます。週に1回程度の注射を4~6ヵ月程度続けると最大の量と濃度になります。最大の量になったら、次に注射する間隔をあけていき、1ヶ月に1回程度の注射を3年以上続けます。
- 以上のように、注射法は、根気よく計画的に行わないと効果も少なく、安全でありません。注射法では、毎回注射の痛みがあること、治療開始時期は何度も病院に行かなくてはならないことが、デメリットといえます。
- 舌下法は、舌の裏に薬をいれて1〜2分間そっとしておき、その後に飲み込みます。1回目の治療は病院で行いますが、2回目以降は毎日自宅で行います。
- 以上のように、舌下法は、注射法と違い、毎日のお薬は必要ですが、自宅で行えるため病院は月に1回程度、また、薬の味は無く、痛みもありません。
舌下免疫療法に使われる薬は?
- 舌下免疫療法に使われる薬は、「スギ花粉症用」と「ダニによるアレルギー性鼻炎用」があります。
- スギ花粉症には、シダトレン®とシダキュア®という薬があります。シダトレン®は2021年3月に発売が終了するので、シダキュア®が中心に出されます。
- ダニのアレルギーには、アシテア®とミティキュア®という薬があります。2つのお薬は、発売している会社が違うことと、薬の濃度が違います。
舌下免疫療法はどんなアレルギーにも使えるの?
- 舌下免疫療法は、「スギ花粉症」と「ダニのアレルギー性鼻炎」にのみ行います。
- 他のアレルギーには薬がありません。また、気管支喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなども、この方法では治療できません。
舌下免疫療法は保険診療でできるの?費用は高いの?
- 舌下免疫療法は保険診療で行えます。保険での3割負担の場合には、1ヶ月で3000円前後の自己負担となります。
- その他に、治療で必要な検査や、症状が出た時のお薬代などが別にかかります。
舌下免疫療法の副作用は怖くないの?
- 舌下免疫療法の副作用には、アレルギー反応があります。
- 多くの例で、口が痒くなるなどの軽いアレルギー反応があります(副反応)。また、まれに、アナフィラキシーという強いアレルギー反応を起こすことがあります。
- 薬は、自然にある成分から作られているので、薬自体には危険性は少ないですが、アレルギー反応には適切な治療が必要なので、治療開始時にご説明します。
舌下免疫療法はいつから治療するの?
- 舌下免疫療法は、スギ花粉が飛ぶ前から治療を開始し、スギ花粉が飛ぶ時期に備える治療です。この治療は、開始して数ヵ月しないと効果が出ないので、夏~秋に治療を開始します。
- スギ花粉が飛んで症状が出ている時期には治療を開始できません。
舌下免疫療法はどれくらいの期間治療するの?
- 舌下免疫療法は、最低でも数年間の治療が必要です。まずは2年ほど治療して、効果を確認します。効果のある方には合計3~5年間の治療を勧めています。
- 残念ながら、短い期間で終わる治療ではありません。
舌下免疫療法の治療効果は?
- 舌下免疫療法は、今まで全体の80%以上の人に効いたと言われています。これらの方は、全員が完全に治るわけではありませんが、根治に近い方も20%程度います。
- これまでのお薬では、症状が良くなっても根治することはなかったため、この治療はその点でも画期的な治療と言えます。
舌下免疫療法はヒノキ花粉には効果があるの?
- ヒノキ花粉へは、実際、効果のある方とない方がいます。効果の無い方は半数以上なので、他のお薬の治療が必要なこともあります。
- ただ、スギ花粉症の方の約80%がヒノキ花粉症を合併すること、スギ花粉はヒノキ科に属し、スギ花粉とヒノキ花粉は非常に似た花粉であることから、スギ花粉の免疫療法はヒノキ花粉症にも効果が期待できることもあります。
舌下免疫療法をどこで治療が受けられるの?
- どの病院でも舌下免疫療法を行っている訳ではありません。この治療を行うには、医師があらかじめ登録する必要があります。
- お近くでこの治療をうけられる病院をさがす際には、治療できる病院が検索できる下記サイトを参考にしてください。
- https://www.torii-alg.jp/