肺炎球菌ワクチン:肺炎球菌感染症って何? どんなワクチン? どんな人が受けたらいいの? 予防効果は? 公費で安く受けられる?
更新日:2020/11/11
- 小児科専門医の田所愛弓と申します。
- 肺炎球菌による感染症とワクチンについてまとめました。
- 肺炎球菌ワクチンは小児と高齢者のそれぞれで定期接種となっていますが、その目的は異なっており、本項では主に高齢者を対象としたワクチン接種について解説いたします。
目次
まとめ
- 肺炎球菌は、65歳以上における肺炎の原因菌の第1位を占めています。
- 2014年度より、肺炎球菌ワクチンは65歳で定期接種となりました。
- 65歳以上の高齢者を対象とした暫定措置は2023年度まで延長され、当該年度内に65歳、および70、75、80、85、90、95、100歳になる人が定期接種の対象となります。
- 肺炎球菌ワクチンを接種することで、肺炎球菌による肺炎の罹患率や死亡率を低下させます。
- 定期接種に際し、公費助成を受けられる場合がありますが、自己負担額については市町村によって異なります。
肺炎球菌感染症ってどんな病気?
- 細菌やウイルス、カビなどが人のからだの中に入ることで引き起こされる病気を感染症といいます。
- 肺炎球菌感染症は、肺炎球菌という細菌が入って起こる病気です。
- 肺炎球菌感染症は高齢者にはしばしば起こる病気で、ときに重症化することがあり、細菌が死んでも炎症が長引くこともあります。
- 肺炎球菌は、肺炎や中耳炎、髄膜炎などの病気の原因になる細菌としてよくみられます。
- 60歳以上の高齢者の肺炎の原因としてはいちばん多い細菌で、2014年度より肺炎球菌ワクチンは65歳で定期接種することとなりました。
肺炎球菌ワクチンにはどんなものがあるの?
- 日本で国が使用をみとめ、使われている肺炎球菌ワクチンは、乳幼児用と高齢者用の2種類あります。
コラム:肺炎球菌ワクチンの種類
- 「13価肺炎球菌結合型ワクチン」:主に髄膜炎などの侵襲性肺炎球菌感染症を防ぐ目的で行われる乳幼児の定期接種に用いられています。
- 「23価肺炎球菌莢膜多糖体ワクチン(成人用肺炎球菌ワクチン)」: 2019年7月現在、65歳以上の高齢者の定期接種に用いられています。
どんな効果があるの?
- 専門家の研究によって、次のような肺炎球菌ワクチンの効果が確かめられています。
肺炎球菌ワクチンの効果
- 肺炎球菌ワクチンを接種した人は接種しなかった人に比べて、肺炎球菌による肺炎も、それ以外の細菌が原因となって起こる肺炎も少ない。
- 肺炎球菌ワクチンを接種した人は接種しなかった人に比べて、肺炎球菌による肺炎で亡くなる人が少ない。
- ワクチンの予防効果は5年以上続くとされていますが、からだに入ってきた肺炎球菌をやっつける抗体は接種により増えるものの、時間がたつとともに少なくなってしまいます。
- 予防効果を保つためには、前回の接種から5年以上たったときにまた接種することがすすめられています。
成人用肺炎球菌ワクチンの定期接種制度の対象者
- 成人用肺炎球菌ワクチンは、法律によって市区町村が「定期接種」を実施することとされ、その対象者は次ような人です。
肺炎球菌ワクチン定期接種の対象者
- その年度に65歳になる人
- その年度のうちに70、75、80、85、90、95、100歳になる人(当初2014年度から5年間の予定でしたが、2023年度まで延長されました)
- ヒト免疫不全ウイルスにより免疫の機能に日常生活がほとんど不可能な程度の障害を有する人
- 60歳以上65歳未満で、心臓、腎臓、もしくは呼吸機能に自己の身辺の日常生活活動が極度に制限される程度の障害を有する人
- 上記のうち、今までに成人用肺炎球菌ワクチンを接種したことがない人(再接種を希望される場合は、2019年7月現在、任意接種の扱いとなります)
ワクチン接種による副反応にはどんなものがあるの?
- 重い副反応はほとんどありません。
- しばしば起こる副反応としては、接種したところが赤くなる(発赤)、痛みがでる、熱がでるなどがありますが、多くは数日以内に回復します。
- 以前は、2回目の接種をすると副反応が強く出ることが心配されていましたが、5年以上あいだを空けて接種する場合は心配ないことが確認されています。
肺炎球菌ワクチン接種は公費で安く受けられるの?
- 定期接種の対象となる年度であれば公費助成が受けられますが、自己負担額は約3,000〜6,000円程度と市区町村によって異なります。
- 具体的な実施期間や方法、費用などはそれぞれの市区町村によって異なりますので、お住いの市区町村にご確認ください。
追加の情報を手に入れるには?
- 各自治体のホームページなどで、定期接種の情報を公開しているものがあります。