EBウイルス:どんな病気を引き起こすの?感染経路は?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 感染症専門医の藤田 崇宏と申します。
- このページを閲覧される方は、「EBウイルス感染症」と言う聞き慣れない病名を告げられて不安になって調べているところでしょうか。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方のために情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- EBウイルスは、ほとんどの人が感染するごくありふれたウイルスです。多くの人は子供の頃に感染して、そのとき風邪の症状がでるのみです。しかし治ってもウイルスは体内に残り続けます。
- 子供のころにかからず、思春期以降で初めて感染すると「伝染性単核球症」を起こすことがあります。
- 症状は発熱、のどの腫れ、首の周りのリンパ節の腫れです。
- 原因を確認するには、血液検査が必要です。
- ふつうの風邪より治るのに時間がかかりますが、ほとんどの人は自然に治ります。
- まわりの人もほとんどが子供の頃にかかってウイルスをもっているので、まわりにうつす心配はいりません。
EBウイルス感染症は、どんな病気?
- EBウイルスは、子供の頃に感染することがほとんどで、子供の頃に感染すると、よくある風邪のような症状ですみます。
- 一度感染すると一生その人の身体から消えることはありません。
- 普通はほとんど悪さをしないため、感染したことにすら気づかない方が多いです。
- 思春期以降に感染した人の一部は、伝染性単核球症【でんせんせいたんかくきゅうしょう】と呼ばれる症状を起こします。
どんな症状がでるの?
- EBウイルスによる伝染性単核球症にかかった場合、以下のような症状があらわれます。
伝染性単核球症の症状
- 発熱(数日~2週間くらい続く)
- のどの痛み
- 全身のだるさ
- 首の周りにぐりぐりを触れる
- 頭の痛み
- まぶたの腫れ
- 体のぶつぶつ
※これらの症状は、自然によくなることが一般的です。
EBウイルス感染症と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 食事、水分がとれていれば、少し待ってからの病院の受診でも大丈夫なことがほとんどです。急がず様子を見てください。
- 次のような場合は、受診してください。
かかりつけ医を受診する目安
- 熱が数日経っても下がらない場合
- 食事や水分も十分にとれない場合
- のどが腫れて息が苦しい場合
EBウイルス感染症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 世界中で95%以上の人がEBウイルスに感染しています。ほとんどの人は子供の頃に感染します。ふつうの風邪と区別のつかないような軽い症状がでた後に、体にEBウイルスが残ります。
- ウイルスは、つばを通じて人から人にウイルスがうつります。衛生状態がよいと感染しにくいといわれています。
- 初めて交際した人とのキスで感染することがあります。海外では”Kissing disease(キスの病気)”と呼ばれていたりします。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 伝染性単核球症と診断するには、病院で血液検査をします。
- 血液検査で伝染性単核球症の診断がついたら、それが本当にEBウイルスによるものであるのかを確認するために、追加で検査をすることもあります。
- 具体的にはサイトメガロウイルスやHIV(エイズウイルス)の検査を行うことがあります。
コラム:血液検査で調べること
- 特徴的な白血球の一種である異型リンパ球が増えているのを確認できれば、伝染性単核球症の診断ができます。
- 異型リンパ球の出現以外にも、軽い肝臓のダメージ(肝炎)を示す数値がみられることもあります。
どんな治療があるの?
- 人によって回復までにかかる時間は差がありますが、時間が経てば自然によくなります。
- 特別に効く薬というものはありません。また、EBウイルスはウイルスなので、細菌をやっつけるための抗生物質は効果がありません。
- 水分をしっかりとって、ゆっくり休んでいることが大事です。しかし絶対に動いてはいけないということはありません。
- 痛みや発熱に対しては解熱鎮痛薬が使われます。多くの場合はアセトアミノフェンというものが使われます。これは薬の効果が切れればまた熱や痛みが強くなるのが普通です。
- それでもどうしても症状がおさまらない場合には、ステロイドを使うこともあります。
- 時間が経つと病気の勢いがおさまり、楽になるので、それとともにこれらの薬は必要なくなります。
- 十分に食事がとれない場合や、肝臓のダメージが強い場合には入院して点滴をしながらようすをみることもあります。この場合の点滴は、主に水分の補給と解熱鎮痛薬をいれることが目的なので、点滴によって回復が早まることはほとんどありません。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?
- 病院で治療を受けても、のどの痛みがとても強くなって水分や食事が十分にとれない場合や、のどの腫れで息苦しくなってきた場合は、早めにもう一度受診することをおすすめします。
- また、ラグビー、サッカー、フットボールなどの激しいスポーツはしばらく避けてください。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- ほとんどの人が感染するウイルスなので、ふだんの生活で気にする必要はありません。
- もし伝染性単核球症にかかってしまっても、周りの人にうつす心配をする必要はありません。なぜなら周りの人もほとんどがEBウイルスをもっているからです。
- 学校に通っている方がEBウイルスによる伝染性単核球症にかかった場合は、熱が下がって症状がよくなれば登校して大丈夫です。心配ならば学校に一度確認してください。ただし心配しすぎることはありません。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- EBウイルスによる伝染性単核球症は、普通の風邪よりは症状が長く続くことが多いですが、だいたい1ヶ月以内にはすべての症状がとれて、血液検査も正常に戻ることがほとんどです。
- のどの痛みは3~5日目あたりがピークでその後に少しずつよくなります。
- 発熱は10日~14日程度続くことが多いですが、後半の5~7 日は微熱程度になってくることがほとんどです。
- だるさは発熱などよりも長く続くことがあり、元の生活に完全に戻るのに2~3ヶ月かかることもあります。
追加の情報を手に入れるには?
- EBウイルスについてインターネット上に追加の情報はあまりありません。
- EBウイルスについて検索すると「慢性活動性EBウイルス感染症」について多くヒットしますが、これはめずらしい病気ですのであまり気にしなくてよいです。
もっと知りたい! EBウイルスのこと
どうして激しいスポーツを避けなければいけないの?
- EBウイルス感染症の症状として、脾臓という左の脇腹にある内臓が、腫れることがあります。
- 脾臓は大きなリンパ節のようなものなので、首の周りのリンパ節が腫れたのと同じようにEBウイルスの感染に反応して腫れます。
- 腫れそのものは時間がたてば治まりますが、この腫れた状態で胴体に強い衝撃が加わるスポーツをすると、まれに脾臓が破裂してしまい、お腹の中で大量に出血することがあります。
- 具体的にはラグビー、サッカー、フットボールなどが危険です。
- 診断されてから最低3週間程度は、このようなスポーツは避けたほうが安全です。また3週間をすぎても、もし身体にだるさが残っていれば、避けたほうがよいです。