カプセル内視鏡検査:どんな治療?どこで受けられるの?苦痛や安全性は?
更新日:2020/11/11
- カプセル内視鏡専門医の岡 志郎と申します。
- このページに来ていただいた方は、小腸または大腸病変の疑いまたはその心配があり、どのような検査があるのかについて知りたいと考えられているかもしれません。
- 代表的な検査方法である小腸と大腸カプセル内視鏡検査について理解する上で役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- カプセル内視鏡検査とは、小さいカメラが入ったカプセルを、お薬のように水と一緒に口から飲みこみ、腸の中を撮影する検査です。小腸カプセルと大腸カプセルがあります。
- 検査は外来で行い、検査時間は約8時間です。
- 小腸カプセル内視鏡検査は、カプセル内視鏡を飲み込んでから1~2時間後には病院を出て、通常の生活に戻ることができます。食事は4時間後から摂ることができます。
- 一方、大腸カプセル内視鏡検査では、検査前日と当日に下剤が必要です。
どんな検査?
- カプセル内視鏡検査とは、小さいカメラが入ったカプセルを、お薬のように水と一緒に口から飲みこみ、腸の中を撮影する検査です。小腸カプセルと大腸カプセルがあります。
- カプセル内視鏡検査を受けられる施設は限られるので、各病院のホームページや受付に電話をしてご確認下さい。
医療従事者向けコラム:小腸カプセルとは?
- 小腸カプセルとは、大きさ26.2×11.4mmのカプセル内に、カメラが1つ入っています。通常、1秒に2枚で小腸を撮影しながら進んで行きますが、カプセルの移動が早い時は、1秒に6枚撮影します。
医療従事者向けコラム:大腸カプセルとは?
- 大腸カプセルとは、大きさ31.5×11.6mmのカプセル内に、カメラが前後に2つ入っています。通常、1秒に4枚で大腸を撮影しながら進んで行きますが、カプセルの移動が早い時は、1秒に35枚撮影します。
どういう人がこの検査を受けるべき?
小腸カプセル内視鏡検査
- 小腸に病気があることが既に分かっている場合や、病気が疑われる場合に行われます。
- 下血などの消化管出血がある時には、最初に上部消化管内視鏡検査や大腸内視鏡検査を行い、食道、胃、十二指腸、大腸に出血がないことを確認します。明らかな出血の原因がない場合には、小腸の病気が疑われるため、小腸カプセル内視鏡検査を行います。
大腸カプセル内視鏡検査
- 大腸カプセル内視鏡は、通常の大腸内視鏡検査が実施できない場合に行われます。
- 腹部に手術歴があり、癒着が想定されるために大腸内視鏡検査の実施が困難と判断された方や、通常の大腸内視鏡検査で盲腸まで挿入できなかった方などが適応になります。
受診のタイミング
- いきなりカプセル内視鏡検査をすることはほとんどありません。
- 出血の精密検査や大腸内視鏡検査を受ける際に、医師の指示に従ってカプセル内視鏡検査を受けて下さい。
検査ができない場合
- 消化管が狭くなってカプセル内視鏡が通過できないと判断された方、心臓ペースメーカーや他の電気医療機器が埋め込まれている方、カプセル内視鏡を飲み込めない方は、この検査を受けることができません。
実際には、どんなことをするの?
検査前の処置
- 小腸カプセル内視鏡検査では、前日の夜9時以降、食事をしてはいけません。病院によっては、少し下剤(便を出して腸をきれいにするお薬)を飲んでいただくこともあります。
- 大腸カプセル内視鏡検査では、前日に低残渣食(食物繊維が少なく消化の良い食事)と下剤が必要となります。
検査の手順
- センサーを体に貼り、記録用のレコーダーを付け、カプセル内視鏡を飲み込みます。
- 小腸カプセル内視鏡検査は、カプセル内視鏡が大腸まで到着した時点で終了です。
- 大腸カプセル内視鏡検査は、下剤を飲み、便がなくなった後で、カプセル内視鏡を飲み込みます。胃から十二指腸に入った時点で、さらに下剤を飲みます。その後も状況に応じて下剤を飲みます。お尻からカプセル内視鏡が出た時点で終了です。
他にどのような検査法があるの?
小腸X線検査
- 経口法:胃のX線検査と同じように、バリウム(造影剤)を飲んでいただいて撮影します。簡便で、患者さんの負担も少ない方法です。
- 経管的二重造影法:口を通して腸に入れたチューブから造影剤を直接腸に送りこみ、撮影します。造影剤の量を調節できることや、病変の疑いのある場所に確実に造影剤を送り込めることが利点です。
バルーン内視鏡検査
- 先端に風船のように膨らむ器具(バルーン)を装着した内視鏡を用いて行う内視鏡検査です。
- 最大のメリットは小腸や大腸を直接観察し、状況によってはその場で組織の回収や治療ができることです。一方、やや痛みや苦痛を生じることがあります。
CTコロノグラフィー(バーチャルコロノグラフィー)
- CT検査台の上でお尻から大腸内へ空気を注入し、CT撮影を行います。同時に画像処理を行って、実際の内視鏡でのぞいているように画像を再構成します。
- 大腸に空気を入れるため、おなかが張った感じがします。小さい病変をみつける能力は、カプセル内視鏡検査よりやや劣ります。
理解しておきたい リスクと合併症
- 検査に必要な処置によって引き起こされる望ましくないことを偶発症と言います。カプセル内視鏡検査の唯一の偶発症として、滞留があります。
- 滞留とは、カプセル内視鏡が消化管の狭い部分で、少なくとも2週間以上留まる状態のことです。
- 滞留が生じてしまった場合は、バルーン内視鏡検査でカプセル内視鏡を回収します。
医療従事者向けコラム:滞留を予防するには?
- 消化管に狭い部分がある場合には、カプセル内視鏡が通るかどうかを判断するため、ダミーのパテンシーカプセルを使うことがあります。
- パテンシーカプセルは、消化管内に留まると約100〜200時間以内に壊れます。
検査後の注意は?
- 検査後の注意点は、特に日常生活でありません。
- ご自宅でカプセル内視鏡を回収したら、後日病院にお持ち頂きます。
- カプセル内視鏡検査の結果は、検査当日には分かりません。検査を行った病院か、外部に依頼して、結果が分かります。病院によって異なりますが、数日〜2週間後に診察にお越し下さい。
- 病気をあった場合には、バルーン内視鏡による検査が必要となることが多いです。医師の指示に従って下さい。
検査後にこんな症状があったら病院に伝えてください
- カプセル内視鏡が出てこず、お腹の痛み、吐き気、吐くなどの症状がある場合には、スタッフにお知らせください。滞留によるものの可能性があります。
- お腹の痛みや吐くなどの症状がある場合には、スタッフにお知らせください。下剤の副作用の可能性があります。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- より詳しい情報や最新のガイドラインなどについては以下のウェブサイトを参照してください。
- 日本カプセル内視鏡学会 ホームページ
- https://the-jace.org