骨髄穿刺、骨髄生検:何がわかるの? どんなときに必要? 痛みは? 安全性は?
更新日:2020/11/11
- 血液専門医の薬師神 公和と申します。
- 聞き慣れない、何かこわそうな「骨髄【こつずい】検査(骨髄穿刺【せんし】・骨髄生検)」について、どういうものかを知りたいという思いで、このページに来られたことと思います。
- 骨髄検査について役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察のなかで、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしいこと」について記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 骨髄検査は、骨の中にある骨髄を調べる検査です。
- 血液の病気を疑った場合、腫瘍【しゅよう】(悪性のできもの、がん)がどれくらい広がっているかを調べる場合、がんを治療するお薬の抗がん剤がどれくらいの効果を挙げたかを確認する場合などに行います。
- 通常は外来でも行える検査です。
どんな検査なの?
- 骨髄とは骨の中にあるスポンジ状の組織で、血液の成分である白血球【はっけっきゅう】、赤血球【せっけっきゅう】、血小板【けっしょうばん】など血球をつくる工場です。
- その工場を調べるのが骨髄検査で、骨髄を満たしている液(骨髄液)を調べる「骨髄穿刺」と、骨髄そのものをくり抜き、取り出して調べる「骨髄生検」があります。
どんなときこの検査を受けるの?
- 骨髄検査は、次のような場合に行います。
骨髄検査を行うとき
- 血液検査で白血球数、赤血球数、血小板の数が多い、あるいは少ない、または通常ではみられないような細胞が血液に存在する場合など血液の病気が疑われた場合
- 骨髄に腫瘍細胞が入り込んでいるかなど、腫瘍がからだの中でどれくらい広がっているかを調べる場合
- 抗がん剤がどれくらい治療効果を挙げたかを確認する場合
- ただし、鉄分、ビタミンB12、葉酸【ようさん】などの栄養素の不足によって貧血を起こしている場合には、骨髄検査はしないことがあります。
実際には、どんなことをするの
骨髄穿刺
- 腰の部分でからだを支えている骨盤を構成する骨の一つ、腸骨【ちょうこつ】で検査をすることが一般的ですが、胸の真ん中にある胸骨【きょうこつ】で検査することもあります。
- 腸骨で検査をするときは腹ばいあるいは横になった状態で、胸骨で検査をする場合にはあお向けの状態で、次のように行います。
骨髄穿刺の手順
- アルコール、ポピドンヨード、クロルヘキシジンなどを用いて針を刺す部位の皮膚を消毒する。
- 消毒した皮膚の一部に局所麻酔をして、さらに針を進めて骨の表面も十分に麻酔する。
- 次に局所麻酔した部位から骨髄穿刺針を用いて骨に穴をあけ、中の骨髄液を注射器で吸引する。
- このとき一般的には、何回かに分けて吸引する。
- 骨髄穿刺針を抜いて、傷口を圧迫して止血する。
骨髄生検
- 局所麻酔の効いている同じ場所から、骨髄穿刺で用いた針よりも少し太い針(骨髄生検針)を用いて骨髄を採取します。
- 骨髄生検は骨が薄い胸骨ではなく、腸骨でのみ行います。
- 骨髄生検針を抜いて、傷口を圧迫して止血します。
検査にかかる時間は? 痛みはあるの?
- 検査は通常15〜30分ぐらいで終わります。
- 局所麻酔の針を皮膚に刺したときにチクッとした痛みがあります。
- 骨の表面も針を刺したときに痛むことがあります。
- 局所麻酔薬が効けば、痛みを感じなくなりますが、骨髄穿刺針や骨髄生検針で骨に穴をあけるときに、痛くないのにゴリゴリと骨を削ってくる感じがすることがあります。
- 骨髄液を吸引するときに、「痛い」「痛いというよりは何ともいえない感じ」、「気持ちが悪い」「足やからだが吸い上げられる感じ」など人によって違った表現をされる、短い時間の違和感があります。
ほかにどのような検査法があるの?
- 背骨や腰の骨のMRIで骨髄の評価をすることがありますが、基本的には情報量が少なく、骨髄検査にとってかわるものではありません。
- 造血を調べる放射線を発するお薬を用いた「骨髄シンチ」という核医学検査もありますが、これも同様、骨髄検査にとってかわるものではありません。
どんなリスクや合併症があるの?
- 痛み:検査の際には局所麻酔薬を使用して、可能なかぎり痛みが少なくなるようにしますが、局所麻酔の針を刺したときや骨髄液を吸引あるいは骨髄を生検した際に痛むことがあります。
- 出血:皮膚に針を刺すため出血が起こり、ときとして血管を傷つけて止血に時間がかかることがあります。
- 局所麻酔薬のアレルギー:痛み止めの局所麻酔薬に対するアレルギーで気分が悪くなったり、血圧が下がったりすることがありますので、お薬にアレルギーのある方は担当医に伝えてください。
- 非常にまれですが、穿刺部の感染や、穿刺針が折れてしまうことなどがあります。
- 胸骨を穿刺する場合には、気胸【ききょう】(肺に穴があいて、肺がしぼんでしまう)、心臓や大血管を傷つけてしまうなどが起こることもあります。
検査の後に注意することは?
- 出血や痛みがひどくなる可能性があるため、入浴や激しい運動はひかえてください。
- 血液をさらさらにする薬を飲んでいる場合は、いったん血が止まっていても再度出血することがあります。
- 検査の翌日、特に問題なければ、入浴も含め、通常どおりの生活をしていただいてかまいません。
検査後にこんな症状があったらスタッフに伝えてください
- 絆創膏に血が少しにじむ程度の出血なら、様子をみてもよいことが多いのですが、帰宅後も血が止まらない場合には、検査を行った病院に連絡をとって傷口をみてもらってください。
- 胸骨で検査を行った場合に動悸【どうき】、息切れなどがあるときにはスタッフに伝えてください。
- めったにありませんが、検査後にはげしい痛みが現れたらスタッフに伝えてください。