腹部超音波:どんな検査? 何がわかるの? どんなことをするの? リスクはあるの?
更新日:2020/11/11
- 超音波、肝臓、消化器を専門としている西村 貴士、飯島 尋子と申します。
- このページに来ていただいた方は、おなかの超音波検査について、どのような検査なのか知りたいと考えられているかもしれません。
- 超音波検査はどのような検査か、何がわかるのか、どのようなことをするのかなどを理解するうえで役に立つ情報をまとめました。
目次
まとめ
- 超音波検査は、からだに発射した超音波が、臓器に当たって反射する性質を利用して画像にしています。
- 超音波検査は、からだに負担を与えない検査です。
- 通常は前もって予約して検査を行いますが、必要なときは当日緊急でも検査できます。
- 1回の検査時間は15~20分程度です。
- おなかのなかにある臓器に異常がないか調べることができます。
超音波検査ってどんな検査?
- 超音波とは、人間の耳では聞くことができない高い音(空気のふるえ)で、医療では20,000 Hz(ヘルツ)以上の音をいいます。
- レントゲンと違い、放射線を浴びる心配がなく、からだに負担を与えない検査です。
- 超音波検査はからだに発射した超音波が、臓器に当たって跳ね返ってくる(反射する)性質を利用して、その返ってきた音(音波)を画像にしています。
- 臓器からの音の反射が弱いと暗く(黒く)、強いと明るく(白く)写ります。
腹部超音波検査で何がわかるの?
- おなかのなかにある臓器(肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓、脾臓、胃や大腸などの消化管、血管やリンパ節など)に異常がないか調べることができます。
- それぞれの臓器の炎症や腫瘍(できもの)の有無が診断できます。
腹部超音波検査はすぐに受けられるの?
- 通常は前もって予約して検査を行いますが、必要なときは当日緊急でも検査できます。
- 精密検査は空腹時に行います。
- 食事をすると胆嚢が縮んだり、消化管のガスが影響してみえにくくなるからですが、水やお茶ぐらいなら飲んでも問題ありません。
腹部超音波検査はだれがどうやって検査するの?
- 超音波検査は、医師、診療放射線技師、臨床検査技師、看護師であれば行えます。
- 医師には、日本超音波医学会認定専門医、指導医という超音波専門の特別な資格をもっている人もいます。
- 技師、看護師には超音波検査士といって超音波専門の特別な資格をもった人もいます。
- 実際の検査は患者さんにはあお向けになってもらい、超音波を出すプローブという機器を患者さんのおなかに当てて検査します。
- そのとき、プローブとおなかがぴったりくっつくように超音波用のゼリーをぬります。
- 患者さんには息を吸ったり吐いたり、息止めをしてもらったりしながら検査します。
- 1回の検査時間は15~20分程度です。
おなかの検査にはほかにどのような検査法があるの?
- おなかの臓器をみることができるほかの検査としてはCT検査やMRI検査があります。
- CT検査、MRI検査ともにそれぞれ利点、欠点があります。
- 腹部超音波検査は最も身体への影響が少なく、安全な検査で小児、妊婦さんでも問題ありません。
- あとで述べる超音波造影剤は、卵アレルギーのある患者さん以外はほとんど副作用はありません。
CT検査について
- CT検査はエックス線(発見者の名前をとって「レントゲン線」とも呼ばれます)を使い、そのエックス線がどのくらい通り抜けるか(「透過性」といいます)を画像化しています。
- 大量にエックス線を浴びるとからだに影響がありますが、CT検査で影響がでることはほぼありません。
- 必要なときはCT検査を受けないといけないですが、不必要に受ける必要はないと考えられます。
- おなかのCT検査では、CT用の造影剤という特殊なお薬を使わないと精密検査はできません。
- CT用の造影剤にはごくわずかですが、造影剤アレルギーのある患者さんや腎機能障害がある患者さん、小児や妊婦さんには使えないという欠点があります。
MRI検査について
- MRI検査は大きな磁石による“強い磁場”と“電磁波”を利用した検査で、からだへの影響は超音波同様ありませんが、妊婦さんに対する安全性ははっきりとはわかっていません。
- MRI用の造影剤を使わなくてもある程度の情報は得られますが、やはり精密検査では造影剤を使う必要があり、造影剤アレルギーのある患者さんや腎機能障害がある患者さんには使えません。
- 検査時間は少し長めで、20〜40分程度かかります。
- MRI検査に特徴的な注意事項として、大きな磁石なので装着している金属によっては検査できませんが、医療機器のなかにはMRIに対応したものもありますので、検査時に確認してください。
腹部超音波検査に欠点はあるの?
- 肥満した方では超音波がからだの奥まで届きにくく、見えにくいことがあります。
- 胃や小腸、大腸など消化管ガスの影響で見えにくい場合もあります。
- CT検査やMRI検査は撮影者による画像の違いはなく、誰が撮影しても同じ画像が得られますが、超音波検査は検査者によって得られる画像が多少異なることがあります。
超音波を使ったもっと詳しい検査はないの?
- 腹部超音波検査には超音波用の造影剤をつかった詳しい検査(造影超音波検査)があります。
- 超音波用の造影剤は小さなガス(気体)の泡なので、からだに入っても呼気として排出され、腎機能障害の方にも使えます。
- 主に腹部臓器(とくに肝臓)の腫瘍(できもの)の精密検査をする場合に行います。