骨密度検査:どんな検査? 検査を受けるべき人は? 検査内容や代替手段、リスク、合併症は?
更新日:2020/11/11
- 整形外科専門医の志賀 康浩と申します。
- このページに来ていただいた方は、骨粗鬆症【こつそしょうしょう】の疑いまたはその心配があり、どのような検査があるのか知りたいと考えておられるかもしれません。
- 骨粗鬆症の代表的な検査方法である骨密度【こつみつど】検査について理解するうえで役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察のなかで、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 骨密度検査は、骨がもろくなって、骨折しやすくなる病気である骨粗鬆症【こつそしょうしょう】の代表的な検査です。
- 骨密度検査法には、DEXA(デキサ)法、超音波検査法、MD法などがあります。
- 骨粗鬆症は、「原発性【げんぱつせい】」と「続発性【ぞくはつせい】」の2つに大きく分けられます。
- 原発性骨粗鬆症は中高年女性の閉経後骨粗鬆症が多く、そのほか男性骨粗鬆症、特発性【とくはつせい】骨粗鬆症(若年性骨粗鬆症や妊娠後骨粗鬆症など)があります。
- 続発性骨粗鬆症は原因やもとにある病気が明らかなものをいいます。
- 骨の組織を壊す骨吸収を活発にする原因としては、副甲状腺や甲状腺の病気、関節リウマチ、多発性骨髄腫【こつずいしゅ】などの血液の病気、お薬としてステロイドを多くからだの中に取り込むこと、糖尿病などがあります。
骨密度検査ってどんな検査?
- 骨密度検査は、骨がもろくなって、骨折しやすくなる病気である骨粗鬆症の代表的な検査です。骨の強さ(骨強度)に大きくかかわる成分の量を測る検査で、特に腰椎(腰の背骨)や大腿骨頸部などの質と強度を調べます。
- 骨粗鬆症の初期には、ほとんど自覚症状がありません。そのため、定期的に骨密度検査を受けていただくことで、骨粗鬆症の早期発見につながります。また、自分自身の骨の健康状態を知り、食事・運動など生活改善をすることで、骨粗鬆症の予防にもなります。
コラム:骨強度
- 骨の強さ(骨強度)は、「骨密度」7割と、「骨質」3割で決定されます。
- 骨密度とは、「骨に含まれるカルシウムやリン酸塩などの骨塩」=「ミネラル成分の全体の量」で表されます。
- 骨質とは、骨の微細構造や骨代謝状態のことです。
骨粗鬆症ってどんな病気?
- 骨粗鬆症とは、骨の強度が低下して、骨折しやすくなる病気です。
- ご高齢の方の骨粗鬆症は大きな社会問題となっています。その理由は、転んだときに足の付け根や背骨などの大きな骨が骨折しやすくなり、寝たきり生活につながりやすいからです。
骨粗鬆症の種類
- 骨粗鬆症は、「原発性【げんぱつせい】」と「続発性【ぞくはつせい】」の2つに大きく分けられます。
- 原発性骨粗鬆症:大部分は中高齢の女性の閉経後骨粗鬆症です。そのほか、男性骨粗鬆症と特発性【とくはつせい】骨粗鬆症(若年性骨粗鬆症や妊娠後骨粗鬆症など)があります。
- 続発性骨粗鬆症:骨粗鬆症になる原因やもとにある病気が明らかなものです。もとの原因を取り除き病気を治療する、あるいは軽くすることが、骨粗鬆症やそれによって起こる骨折の危険性を少なくすることにつながります。
骨粗鬆症の症状
- 骨粗鬆症になると骨折するリスクが高まります。ですが、骨粗鬆症の初期には、ほとんど自覚症状がありません。
- 骨粗鬆症の影響で骨折してしまうと、移動などの基本的な日常生活動作が不自由となり、生活の質が低下します。
- そのため、定期的に骨密度検査を受けていただき、早目に診断を受け、食事や運動療法に加え、場合によっては骨を強くするお薬などによる治療を早く始めることが重要です。
骨粗鬆症になるリスクが高い方
- 女性は骨粗鬆症になるリスクが高いとされています。気になる症状がなくても50歳以上になったら定期的に骨密度を測っていただくことをおすすめします。
- また、次のような方も骨粗鬆症になるリスクが高いとされています。
骨粗鬆症のリスクが高い方
- 閉経後、または治療により生理を止めている女性
- 若いときに生理不順があった女性
- 運動不足、若いときに過度の運動をしていた
- タバコを吸う、多量にお酒を飲む
- 甲状腺機能亢進症と診断されたことがある
どういう人がこの検査を受けるの?
- 骨密度検査は主に、骨がもろく弱くなる骨粗鬆症という病気の可能性のある方が対象です。次のような方はこの検査を受けてください。
骨密度検査を受けたほうがよい方
- 身長がちぢんだり、背骨に胸の高さで後ろに飛び出す後弯【こうわん】や、丸まっている円背【えんぱい】がある人。
- 背骨の圧迫骨折、大腿骨頸部骨折、転んで手をついたときの橈骨遠位端骨折などを起こしたことがある人。
- 骨密度が低下している可能性が高いご高齢の方、特にホルモンの影響がある閉経後の女性。
定期的な検査のおすすめ
- 骨量の変化が少ない20~40代のうちに一度測定をしておくとよいでしょう。50代以降の測定時、比較するのに役立ちます。
- 骨密度の値は年々変化していきます。経時的な変化をみるためにも、できれば同じ施設で検査を受けるようにしてください。
- 特に女性は男性と比べて骨量が少ないうえに、閉経後にはホルモンバランスが変わって骨密度が低下します。積極的に定期検査を受けるようにしてください。
- 男性は、糖尿病や慢性腎臓病といった骨粗鬆症の原因となる障害がなければ、70代後半までは測定の必要はありません。
検査ができない方
- 骨密度検査は一定の放射線被ばくがある検査なので、妊娠中の女性や妊娠の可能性がある女性は検査ができない場合があります。
骨密度検査にはどんな種類があるの?
- 骨密度検査法には、DEXA(デキサ)法、超音波検査法、MD法、QCT法などがあります。 以下、簡単にご説明します。
DEXA(デキサ)法
- DEXA法は骨密度測定の標準的な方法であり、現時点では骨密度を評価をするうえで最も信頼できる検査です。全身の骨ミネラルバランスを調べ、体組成(筋肉量、脂肪量)の確認ができます。骨粗鬆症の精密検査や、骨粗鬆症の治療効果の経過観察、また骨折の危険性予測にも役立ちます。
- 方法:エネルギーの強さの異なる2種類のレントゲン(エックス線)を検査部位に当て、通り抜ける量の違いから骨密度を測定する方法です。
- 測定部位:腰椎、大腿骨頸部、橈骨遠位部、全身骨などです。特に骨折するリスクの高い腰椎や大腿骨頸部が基本的な測定部位となります。
- メリット:誤差が少なく、測定時間が短く、エックス線の被ばく量も少ないという利点があります。
- 検査時間:撮影自体は5~10分程度で終わります。検査部位や装置の種類にもよりますが、全体で約15分程度で終了します。通常、外来でできる検査です。
- 測定結果:あなた自身の骨密度が、同年代および若い成人の平均値とを比較して何%にあたるかということを示します。
- 結果の解釈:若年成人の平均値との比較により、次のように骨粗鬆症の診断がなされます。
DEXA法の検査結果による骨粗鬆症の診断
- 若年成人の平均値の80%以上:正常
- 70~80%:骨量減少
- 70%未満:骨粗鬆症
定量的超音波測定法
- 方法:かかとの骨に超音波を当てて測定します。DEXA法より簡易的な方法になります。
- 測定部位:かかとを用います。かかとは代謝速度の速い海綿骨【かいめんこつ】の割合が90%以上をしめ、骨量の減少が現れやすい場所です。
- メリット:超音波を用いる方法は放射線の被ばくがないというメリットがあります。また、妊娠されている方でも検査ができます。
- 検査時間:5分ほどで、痛みはまったくありません。
MD法(RA法)
- 精度はやや低いものの、診療所などでかんたんに計測できる検査です。
- エックス線を使って、手の骨と、厚さの異なるアルミニウム板とを同時に撮影し、骨とアルミニウムの濃度を比べることによって測定します。
定量的CT測定法(QCT法)
- エックス線CT装置を使った測定法です。
- 海綿骨と皮質骨という骨の構造に分けて、骨を構成する成分の量を測定します。
実際にはどんなことをするの?
- DEXA法と定量的超音波測定法について、簡単にご説明します。
DEXA法_検査前の注意点
- 検査前の食事制限などはありませんが、検査に際しては次のようなことに注意してください。
検査の注意点
- 測定部位に金属やプラスチック類がある場合、測定の妨げとなるため、検査着に着替えていただきます。
- ブラジャー、ボタン、湿布、カイロ、エレキバンなど、計測に影響を与えるものは外してください。
- ペースメーカーを挿入している方は、測定部位を変更することがあります。
- 腰椎や股関節(大腿骨頸部)に人工骨頭などの金属がある場合には、測定部位を変更したり、計測が行えないことがあります。
- 胃の検査でバリウムを飲んだ場合は、バリウムを骨と認識してしまって結果に影響がでるため、検査できないことがあります。
DEXA法_検査時の注意点
- 測定部位が腕の場合は座った状態、それ以外の場合はあおむけに寝た状態で検査します。
- 検査中にからだが動いてしまうと、検査結果の精度に影響がでますので、測定中はなるべく動かないようにしてください。
DEXA法_検査の流れ
- 検査は一般に次のように行われます。
DEXA法による検査の流れ
- 更衣室にて下着や貴金属類をはずし、場合によっては検査着に着替える。
- 骨密度装置のベッドに寝て、検査を開始。
- 検査中は、息止めなどの必要はないが、からだを動かさないようする。
- 機械が動いて撮影を実施。
- 検査終了。
定量的超音波測定法_検査前の注意点
- 検査時にアルコールを使用しますので、アルコールにアレルギーがある方は事前に伝えてください。
定量的超音波測定法_検査の流れ
- 一般的な検査の流れは次のとおりです。
定量的超音波測定法による検査の流れ
- 靴下を脱ぐ。
- 装置に足をのせる。
- かかとの両側の風船がふくらみ、そこから超音波が出る。
- かかとに約10秒間、超音波を当てて検査終了。
ほかにどんな検査法があるの?
- 骨粗鬆症の指標となる検査には、骨密度検査以外に次のような方法があります。
レントゲン(エックス線)検査
- 主に背骨(胸椎や腰椎)のエックス線写真を撮り、骨折や骨の変形がないか、骨粗鬆症化のサインがみられないか、またほかの病気ではないのかを確認します。
身長測定
- 25歳のときの身長と比べてどのくらいちぢんでいるか調べ、骨粗鬆症の診断をする指標とします。
血液・尿検査
- 血液や尿中の骨代謝マーカーという物質の量を調べます。骨の新陳代謝の速度を示します。
- 骨代謝マーカーの値が高い人は骨密度の低下速度が速いことから、骨折の危険性が高くなっているということができ、また骨粗鬆症をほかの病気と区別することもできます。
どんなリスクや合併症があるの?
- 検査に必要な処置によって引き起こされる望ましくないことを合併症といいますが、骨密度検査では、検査による合併症はほとんどありません。
- DXA法、RA法、QCT法ではわずかな放射線被ばくがありますが、 一般的なエックス線撮影とくらべても被ばくは多くありません。
検査が終わった後に注意することは?
- からだに影響を与えることはほとんどない検査ですので、特に注意すべきことはありません。
- 検査後すぐに、食事や運動をしてもまったく問題ありません。
追加の情報を手に入れるには?
- より詳しい情報や最新のガイドラインなどについては以下のウェブサイトを参照してください。
- 骨粗鬆症予防と治療のガイドライン2015 (http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf)