血管性認知症:どんな病気?特徴的な症状は?進行を予防するには?
更新日:2020/11/11
- 脳卒中専門医、認知症専門医の猪原 匡史と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が血管性認知症になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 血管性認知症とは、脳梗塞や脳出血などの脳卒中が原因となる認知症です。
- アルツハイマー病とは異なり、「物忘れ」は必発ではなく、段取りが立てられない、ぼんやりとして集中力がないなどといった症状で始まることが多いです。
- 脳卒中による症状(手足のまひ、飲み込みずらさ、しゃべりにくさ、歩きにくさ、トイレが近い、怒りっぽいなど)を伴うことが多いのが特徴です。
- 高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病を管理し、脳卒中を起こしにくくすることが、血管性認知症の予防につながります。
血管性認知症は、どんな病気?
- 血管性認知症とは、脳の血管が詰まる脳梗塞、出血する脳出血によって、脳の一部に血液が行きわたらない状態になる脳卒中が原因となっておこる認知症です。
- 認知症全体の約3割を占める認知症で、65歳未満では最も多い認知症です。
血管性認知症と思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 下記のような場合は、病院への受診を検討してください。
かかりつけ医への受診がおすすめの場合
- もの忘れ、段取りが立てられない、ぼーっとすることが多くなったなどの、認知症とみられる症状がある場合
- 以前は一人で出来ていたことが出来なくなってきた場合
- 飲み込みにくさ、しゃべりにくさ、歩きにくさ、トイレが近い、怒りっぽいなど、脳卒中とみられる症状が進んできた場合
- 脳神経内科や脳神経外科の、脳卒中に関する専門医がいる病院に受診をするのが望ましいと思われます。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 脳卒中の予防が、血管性認知症の一番の予防といえます。
- すなわち、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症などの生活習慣病の予防をすることと、禁煙などです。
血管性認知症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 血管性認知症になりやすい人は、脳卒中になりやすい人です。
- つまり、脳卒中になりやすくする生活習慣病(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症)や喫煙がそのまま血管性認知症の原因であると言えます。
- 脳卒中を何回も起こすほど血管性認知症になりやすくなり、1回の脳卒中でおよそ5人に1人、2回以上繰り返せばおよそ3人に1人が血管性認知症をおこすとされています。
どんな症状がでるの?
- 血管性認知症は下記のような症状がでます。
血管性認知症であらわれる症状
- 認知症の症状:もの忘れ、段取りが立てられない、ぼーっとすることが多い
- 脳卒中の症状:手足が動かせない、飲み込みにくい、しゃべりにくい、歩きにくい、トイレが近い、怒りっぽい・涙もろい
- 血管性認知症では、物忘れなどの認知症の症状がみられても、知識や判断力が保たれていることが比較的多いため、「まだら認知症」と言われます。
- 進行すると、怒りっぽくなったり、興奮した状態が続いたりするなどの精神症状が表にあらわれることもあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- まずは、問診によって、認知症の特徴的な症状がみられるか、その症状の内容についてお伺いします。次に下記のような検査を行います。
検査の種類
- MRI検査:脳のどこに異常があるのかを確認します。
- 脳の血流検査(核医学検査)
- 首の血管エコー検査
どんな治療があるの?
- 血管性認知症の治療で最も大事なことは、生活習慣病の管理です。血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)、頭の血の巡りをよくする薬(脳循環・代謝改善薬)などを飲みます。
- 認知症の症状や精神症状が強くみられる場合には、抗認知症薬や抗精神病薬が出されます。
- 適度な運動やリハビリも行われることがあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 血管性認知症の治療後は、処方された薬の副作用に気を付ける必要があります。
薬の副作用
- 降圧薬(高血圧に対する薬):これは血圧を下げる薬です。血圧を下げすぎることによって、頭の血の巡りが悪くなる場合がありますので、ふらつきなどがみられたら医師に相談して下さい。
- 糖尿病の薬:体の血糖を下げる薬です。しかし低血糖になりすぎることは認知症を悪化させることがありますので、注意が必要です。
- 抗精神病薬:過度な落ち着きや誤嚥性肺炎の危険を増すこともありますから、慎重な使用が望まれます。
予防のためにできることは?
- 生活習慣病をお持ちの方は、脳卒中の予防を行うことが重要です。
- 一度脳卒中を起こしてしまった方でも、2度目の脳卒中を予防することで、認知症を防ぐことは可能です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 残念ながら治る病気ではありません。
- しかし、薬を使った治療やリハビリテーションなどで症状が改善することは期待できます。
追加の情報を手に入れるには?
- 国立循環器病研究センターの循環器病情報サービスに循環器病と認知症との関係についての一般向けの資料が掲載されていますので参考にしてください(下記)。
- 循環器病あれこれNo。122「認知症と循環器病の深い関係」
- http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph122.html
- 循環器病あれこれNo。107「認知症とたたかう」
- http://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/brain/pamph107.html
もっと知りたい! 血管性認知症のこと
血管性認知症って遺伝するの?
- 稀な病気ではありますが、遺伝性の血管性認知症として、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、 禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症 (CARASIL)という指定難病があり、治療費の一部に公費の補助を受けることができます。
- もしご家族に脳卒中の方や認知症の方が多い場合は、脳神経内科にご相談ください。
- CADASILについての詳しい情報は、以下のCADASIL班ホームページをご参照ください。
- http://square.umin.ac.jp/cadasil/