1型糖尿病:原因は?症状は?検査は?インスリンは必要?完治できる?
更新日:2020/11/11
- 糖尿病専門医の綿田 裕孝、栗田 実佳と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が1型糖尿病になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 1型糖尿病は、インスリンというホルモンをつくっている膵臓の細胞が壊されて、血糖値が高くなる病気です。
- インスリンを補充し続ける必要があります。
1型糖尿病は、どんな病気?
- 1型糖尿病とは、血糖値を下げるインスリンというホルモンをつくる膵臓の細胞が壊され、インスリンがほとんどなくなってしまった結果、血糖値が高い状態が続く病気です。
- 自分ではインスリンをつくることができないので、お薬でインスリンを補う必要があります。
- 膵臓の細胞が壊される原因は、自分の膵臓を攻撃してしまう物質がつくられている場合と、はっきりわからない場合があります。
コラム:1型糖尿病の分類型
- 発症進行の形式で劇症型(数日)、急性発症型(週~3ヵ月)、緩徐進行型(年単位)に分類され、それぞれの診断基準が策定されています。
- 血液検査で自己抗体が証明でき膵β細胞破壊に自己免疫機序が関わっているものは自己免疫性、自己抗体が証明できないままインスリン依存状態に至るものを特発性とします。
1型糖尿病と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 普段よりのどが渇く、たくさん水分をとってしまう、おしっこがたくさん出る、体重が減ってきたなどの症状が突然出た場合、1型糖尿病の可能性があります。早めに病院へ受診してください。
- また、インスリンの作用不足で糖尿病ケトアシドーシスを起こすことがあります。その場合、上記の症状以外に気分が悪い、おう吐した、おなかが痛い、だるいといった症状を伴うことがあります。インスリンの効きが悪く、増えすぎると体に悪い物質がたくさんつくられてしまっていると考えられます。すぐに治療する必要がありますので、これらの症状がある場合はすぐに大きめの病院を受診してください。
1型糖尿病になりやすいのはどんな人?原因は?
- 原因はよくわかっていませんが、自分の膵臓を攻撃する物質がつくられやすい人がいるようです。
- 発症時期は思春期が最も多いとされています。
コラム:1型糖尿病の原因の詳細
- 1型糖尿病の原因はすべてがはっきりとわかってはおりませんが、発症感受性遺伝子を持つ人にウイルス感染等の環境因子が加わると自己免疫異常を生じてβ細胞破壊され発症することが知られています。
- 1型糖尿病の患者数(全年齢)は約 10~14 万人、有病率は約 0.09~0.11% (人口 10 万人あたり約 90~110 人)といわれており、発症時期のピークは思春期にあります。
どんな症状がでるの?
- 普段よりのどが渇く、おしっこがたくさん出る、体重が減ったといった症状で発見されます。
- 糖尿病ケトアシドーシス(糖尿病の管理ができていない場合になる状態)の場合、体がだるい、おなかが痛い、意識が悪くなるなどの症状がでることがあります。
- 長い間高血糖であると、細い血管が傷みます。とくに神経、網膜(目の奥にある)、腎臓が影響をうけやすく、手足がしびれる、感覚がにぶい、物が見にくい、むくみなどの症状がでます。
- 大きな血管も傷んできます。動脈の壁が硬くなり、血流が悪くなって血管がつまりやすくなります。心臓や脳の血管がつまったり、足の血管が細くなって痛みが出たりします。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 血液検査:血糖値、HbA1c(ここ1,2か月の血糖値を反映します。)や、膵臓を攻撃する物質がないか調べます。どれくらいインスリンをつくれるのかを調べます。
- 尿検査:おしっこにどれくらい糖がでているか、腎臓の機能が保たれているかを調べます。
- 画像検査:高血糖状態がほかの臓器に影響していないかなど、全身の状態を調べます。
どんな治療があるの?
- 不足しているインスリンを、注射で補います。やり方は2種類あります。
- 1つ目は、一日に数回、自分でインスリンを注射する方法です。必要なインスリン量は、体格やインスリンの効き方で変わってきます。また、日々の食事量、運動量によって補充するインスリン量を変えます。
- 2つ目は、皮膚に細い管を入れておき、自動的に必要な分だけインスリンを補充する方法です。こちらの方法では、常に血糖値を測っており、インスリン量が細かく調節されます。
- 先進医療として、重症低血糖や著しい高血糖を繰り返すなど、血糖値の管理が難しい場合は膵移植や膵腎同時移植の方法もありますが、まだ国内では症例数が多くなく普及が進められています。
コラム:インスリン注射の詳細
- 頻回注射療法:1 日を通して持続的に分泌されている基礎インスリンを補うために作用時間が長い持効型インスリンを1 日1~2 回皮下注射し、食事毎に分泌される追加インスリンを補うために作用発現が速く持続時間が短い(超)速効型インスリンを食事の直前に皮下注射します。必要なインスリン量は体格やインスリン感受性、食事量や運動量によって異なります。
- SAP(Sensor Augmented Pump)療法:SAP療法とは、パーソナルCGM機能を搭載したインスリンポンプ療法です。インスリンポンプに併用してCGMを装着することで、常時血糖変動を確認することができ、血糖値に応じて細やかにインスリン量を調節できます。また、アラート機能により低血糖や予期せぬ高血糖を予防しやすくなります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?食事や生活で気をつけることは?治療の副作用は?
- ごはん、パン、麺類など、炭水化物は血糖値を上げるため、毎食ごとに炭水化物の量を計算(「カーボカウント」といいます。)して、炭水化物の量に合わせて補充するインスリンの量を調節してください。食事の自由度が広がり、食事制限を頑張りすぎることなく続けることができると思います。
- かかりつけの医師と相談し、食事量、運動量に応じてインスリンの量を調節してください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 1型糖尿病は、現時点では完全に治す方法がありません。一生インスリンを補う必要があります。ただ、インスリンを補えば、普段の生活と変わりなく過ごすことができます。
- 目標とされる血糖値を一定に保ち続けることで、糖尿病の方がなりやすい病気を起こしにくくすることができます。
追加の情報を手に入れるには?
- 認定特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク
- https://japan-iddm.net/
- 糖尿病ネットワーク
- https://dm-net.co.jp/