結核:原因は?症状は?どうやって感染するの?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 呼吸器専門医の佐々木 結花と申します.
- このページに来ていただいたかたは,もしかすると「自分が肺結核になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません.
- いま不安を抱えている方や,まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました.
- 日々の診察の中で,「特に気を付けてほしいこと」,「よく質問を受けること」,「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました.
目次
まとめ
- 結核とは,結核菌が原因でかかる感染症です.結核菌は全身の臓器に感染しますが,肺の結核が最も多いです.
- 肺結核になると,かぜのような症状が引き起こされます.症状ではかぜと区別できないことがあるので,咳やたんが2週間以上続くときは,早めに病院を受診してください.
- 現在,日本では患者さんが徐々に減っていますが,世界ではまだ患者さんの多い疾患です.
- 感染予防の正しい知識をもっていただき,正しい対策を行えば,決して怖くない病気です.
結核は,どんな病気?
- 結核とは,結核菌が原因の感染症です.肺に定着することが多く,肺結核という病気をおこします.
- 結核は,空気中に漂っている結核菌を吸い込むと感染します(空気感染といいます).感染しても症状が出ないことも多いのですが,10人に1人から2人の割合で発病してしまいます.
- 結核は日本では感染症法のもと、2類感染症に分類されています.患者さんは保健所によって全員登録されます.
- 周囲の人に結核をうつす可能性がある場合は入院しなくてはなりませんが,うつす可能性がない場合は,外来で治療することも可能です.
結核と思ったら,どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 下記のような場合は,結核だけでなく,何か別の病気にかかっているかもしれません.必ず医療機関を受診してください.
かかりつけ医への受診をおすすめする場合
- 原因不明の咳や痰,熱が2週間以上続く場合
- 咳や痰があって,体重が減ってきた場合
- 血の混じる痰や,血を吐くことがあった場合
受診前によくなるために自分でできることは?
- ご自分の力だけではよくならない病気です.なるべく早く受診してください.
- 咳がある場合は咳エチケットを守り,マスクをしてください.
結核になりやすいのはどんな人?原因は?
- 結核は,以前に結核に感染したことのある方が,免疫が低下したときに発病する場合と,結核に感染して2年以内に発病する場合があります.
- 日本では過去,結核の患者さんが非常に多く,80歳以上の方は60%以上が結核菌に感染しています.ご高齢になられたため,また,他の病気のために免疫の力が落ちたため,結核が発病することがあります.
- 結核の症状があらわれる危険性が高いのは次のような方です.
結核を発病する危険率が高くなる疾患や状況
- 後天性免疫不全ウイルスの感染あるいは発病した人
- じん肺の人
- 慢性腎不全で血液透析を行っている人
- 臓器移植を行った人
- 糖尿病(コントロール不良)の人
- 副腎皮質ステロイド薬の内服や高容量の吸入ステロイド薬を普段から使用している人
- 免疫抑制剤を内服している人
どんな症状がでるの?
- 症状は結核が生じる臓器によって異なりますが,肺結核になると,主に下記のような症状が現れます.
肺結核による症状
- せきが出る
- 血の混じった痰がでる
- せきと一緒に血を吐いてしまう
- 熱が出る
- 食欲が落ちる
- 体重が減る
※ほかの呼吸器疾患と同じ症状が多いため,区別は難しいです.2週間以上症状が続いた場合は,受診をお勧めします.
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 肺結核を疑われた場合には,下記のような検査を行います.
検査の種類
- 胸部エックス線検査:肺の炎症や,結核に特異的な所見がないかを見ます.
- 喀痰検査:痰に結核菌が含まれていないかを,3回,日を変えて検査します.痰が取れない場合,胃液をとって検査を行う場合があります.
- 気管支鏡検査:喀痰検査で判明しない場合に行います.
どんな治療があるの?
- 肺結核の治療は全世界共通で,お薬による治療です.
- 最初の2か月は,ヒドラジド(イスコチン),リファンピシン,ピラマイド,エサンブトールないしはストレプトマイシンの4剤を飲んでいただきます.その後,ヒドラジド(イスコチン),リファンピシンの2剤に減らして,さらに4か月飲んでいただきます.
- これらのお薬が効かない結核菌だった場合は,効くお薬に変更して内服していただきます.
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 治療にあたって注意いただきたいことと,副作用を下記にまとめました.
注意いただきたいこと
- 医師の指示に従って,決められた量の薬剤を,不規則にならないよう一定期間,内服し続けてください.
- 結核を治療している間,お酒は禁止です.悪酔いする作用のある薬剤が含まれることと,肝臓に負担がかかるためです.
- タバコを吸う方は,禁煙したほうが良いです.喫煙は免疫を低下させます.
薬の副作用
- 薬の副作用には,患者さんご自身しかわからない副作用と,採血検査で判断できる副作用とがあります.
- 下記のような異常を感じたら,薬を処方をした主治医に相談してください.
結核の治療薬による主な副作用
- 肝臓の機能の低下
- 腎臓の機能の低下
- 手や足のしびれ
- かゆみ,発疹(薬剤アレルギーによる)
- 目が見えづらくなる(エサンブトールによる)
- お腹が痛い,便秘,下痢など
- 貧血(骨髄抑制による)
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 結核菌は人から人にうつります.
- 肺結核だと知らない患者さんが無防備に咳やくしゃみをすると,結核菌を含んだ飛沫が飛び散ります.結核菌は飛沫の水分が蒸発した後も空中を漂い,別の場所の人に吸い込まれて,感染が拡大していきます(空気感染といいます).
- 結核菌は目に見えないため,漂っているかどうかを知ることはできません.そのため,感染を予防することは非常に難しいことですが,日ごろから年齢にあった健康管理を行って,健康な身体を保つことは大切です.
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 結核菌にお薬が効き,患者さんご自身がある程度の健康を保っておいでになる方であれば,治ります.ただし,最低でも6か月の治療が必要です.
- 決められた通りにお薬を飲まず,飲んだり飲まなかったりしていると,結核菌にお薬が効かなくなってしまい(薬剤耐性といいます),完治が難しくなります.
- なお,肺結核の場合,ご高齢の患者さんでは全身の体力が低下しているため,残念ながら死亡される可能性もあります.特に合併症がある患者さんや,もともと身体の自由が利きにくい患者さんの場合,死亡される率が高くなります.
追加の情報を手に入れるには?
- ご住所を管轄している保健所に相談するのが最も早いですが,病気自体を知りたい方には以下のサイトをお勧めします.
- 財団法人結核予防会 結核Q&A(http://www.jatahq.org/about_tb/index3.html)
- 一般の皆様へ(http://www.jatahq.org/about_tb/index1.html)
- 東京都感染情報センター(http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/tb/)