精巣がん:症状は?ステージとは?検査は?治療は?完治できる?後遺症は?
更新日:2020/11/11
- 泌尿器科専門医の北村 寛と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が精巣がんになってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 精巣(せいそう;精子を作る場所)が硬く大きくなっていたら、泌尿器科のある病院にご相談ください。
- 痛みを伴わないことが多いため、痛みの有無で判断しないようにしてください。
- 短期間で病気が進行する場合があるので、異常に気付いたら、すぐに泌尿器科のある病院にご相談ください。
精巣がんは、どんな病気?
- 精巣がんとは、精巣にがんが発生した状態です。ほとんどの場合は、精巣にある精母細胞という精子の元となる細胞ががん化(細胞が異常に増え続ける)した状態を指します。別名「胚細胞腫瘍」ともいいます。
- がんは精巣の中だけにとどまっている場合もあれば、リンパ節、肺など他の場所にまで転移(がんが離れた臓器に移動して、そこで増えること)していることもあります。
精巣がんと思ったら、どんなときに病院・クリニックへ受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 精巣が以前より大きくなったり、硬くなった場合は泌尿器科のある病院にご相談ください。
精巣がんになりやすいのはどんな人?原因は?
- 精巣腫瘍は10万人に1人くらいの頻度で20歳代から30歳代の男性若年者に多い特徴がありますが、小児や60歳代くらいまでの男性でもなる可能性はあります。
- 停留精巣、精巣発育不全、ウィルス性精巣炎、精巣外傷、胎児期の過剰エストロゲン、性的早熟化、対側精巣がんなどの病気になったことがある方は精巣がんになりやすいと言われています。
どんな症状がでるの?
- 精巣がんになった場合、以下のような症状が現れます。
精巣がんになると現れる症状
- 精巣の腫れ
- 精巣が固くなる
- がんが転移した場合、疲れやすくなったり、体がだるくなったりします。加えて、どこに転移するかで症状は変わってきます。
- お腹のリンパ節に転移した場合はお腹にしこりを感じたり、お腹や腰が痛くなったりします。
- 肺に転移した場合は息が切れやすくなったり、咳や痰、血が混じった痰が出たりします。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- お医者さんが精巣を触って、確認します。
- 超音波(エコー)で精巣の大きさや内部の状態で確認します。
- 血液検査で腫瘍マーカー(がん細胞から作られ、出されている物質)を調べます。精巣がんの腫瘍マーカーには、AFP、HCG、LDHがあります。
- CT検査でがんが他の場所へ転移していないか確認します。
- MRIや骨シンチグラフィーでがんの転移についてより詳しく調べることもあります。
どんな治療があるの?
- 手術でがんになった精巣を取り出します。
- 取り出した精巣を顕微鏡で詳しく調べ(病理検査)、セミノーマというがんのタイプであった場合は、お腹のリンパ節に放射線を当てることがあります。
- がんの転移がみられる場合、抗がん薬を用いた治療(化学療法)を行います。
- 転移がない場合でも、転移や再発の危険が高い場合は、予防的に化学療法を行うことがあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
治療後の注意点
- 治療後は定期的な通院と検査が必要です。指示された時期には必ず病院にいらしてください。
- 治療後の経過が良くても、自己判断で通院をやめることのないようにしてください。
治療の副作用
- 治療後に精子の数が少なくなり、不妊(妊娠しにくくなる)の原因になることがあります。治療前に精子を保存しておくことが可能ですので、担当医にご相談ください。
- 化学療法を受けた場合、一般的な抗がん薬の副作用がみられます。代表的なものには、白血球の減少、食欲低下、吐き気、だるさ、手足のしびれ、聞こえにくくなるなどがあります。
- お腹のリンパ節を取る手術を受けた場合、手術後に射精障害を認めることがあります。
予防のためにできることは?
- 残念ながらこの病気を予防するためにできることはありません。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 病理検査ではセミノーマと非セミノーマに大別されます。それぞれ治療効果や経過が異なります。
- 転移がない場合、セミノーマでも非セミノーマでも、この病気で亡くなることはまれです。経過中に再発を認めても、化学療法により治せることがほとんどです。
- リンパ節や肺などの臓器に転移している場合、化学療法の効果により、病気を治せる確率が変わってきます。基本的に化学療法は3週間を一つの単位(サイクル)として、4サイクル行います。
- セミノーマでは、化学療法後のCTなどで腫瘍がほぼ消えていることを確認できた場合は、病気が治っていることがほとんどです。
- 非セミノーマはセミノーマよりも悪性度が高い傾向があるため、化学療法後に転移している臓器やリンパ節を手術で取り、病理検査でがん細胞が残っているかを調べます。がん細胞が残っていれば、さらに化学療法が必要となり、治療期間が6ヶ月かそれ以上におよぶこともあります。
追加の情報を手に入れるには?
- 精巣がんに関しては下記のページを見るとよいでしょう。
- 国立がん研究センターのサイト(https://ganjoho.jp/public/cancer/testis/index.html)
もっと知りたい! 精巣癌
精巣がんとの区別が必要な病気
- 精巣上体炎:精巣の隣にある精巣上体の炎症で、ほとんどの場合、痛みを伴います。
- 精巣炎:精巣の炎症で、ムンプス(おたふく風邪)ウィルスによる感染が代表的です。
- 陰のう水腫:陰のう(精巣や精巣上体がある皮膚の袋)に水がたまる病気です。一般に柔らかく、光を当てると透ける特徴があります。