社交不安症/社交不安障害:どういう状況で疑う?原因は?診断や治療は?
更新日:2020/11/11
- 精神科専門医の清水 栄司、高橋 純平と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分は社交不安症(社会不安障害、社交不安障害、対人恐怖症、赤面恐怖症、視線恐怖症など)なのではないか?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 社交不安症(社交不安障害)とは、人前や注目を浴びる状況で強い不安を感じてとても緊張してしまい、そういった状況を避けてしまうため、日常生活に大きな支障をきたしてしまう病気です。
- 認知行動療法とよばれるカウンセリング(心理療法)やお薬で治療することができます。
社交不安症/社交不安障害は、どんな病気?
- 社交不安症/社交不安障害とは、他人から注目を浴びる状況で強い不安(社交不安)を感じてとても緊張してしまい、出来るだけ注目を浴びないように、そういった状況を避けてしまう病気です。
- 人前で何かをする状況を避けて生活しなければならなくなり、学校や仕事などの日常生活に大きな支障が出てしまいます。
社交不安症/社交不安障害と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 以下のようなときは、精神科への受診をおすすめします。
精神科への受診するのがよいとき
- 他人から注目を浴びる状況で強い不安(社交不安)を感じてとても緊張してしまい
- 学校に通えない
- 友人や知人と会えない
- 職場で業務をこなせない
- など、人前で何かをしたり、他人と付き合ったりすることがとても苦しい場合、またはそういった場面を避けてしまっている場合。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 病院へ行く前に、自分で以下のことをやると良いです。
- 規則正しい生活リズムの確保:人前で緊張するからと言って、家に引きこもり、昼夜逆転にならないよう、早寝早起きをしましょう。
- アルコールやネット、ゲームに頼りすぎない:人前での緊張をやわらげようと、お酒やネット、ゲームにはまりすぎて、依存症にならないようにしましょう。
- 一人の時間を大切にする:不安を感じずに、趣味など自分の好きなことに没頭できる時間を、定期的に作るようにすると良いです。
社交不安症/社交不安障害になりやすいのはどんな人?原因は?
- 他の精神科の病気と同じように、明らかな原因は分かっていません。
- 不安を感じやすい性質(遺伝的な要素)と、人前でとても恥ずかしい思いをしたなどといった辛い体験(環境的な要素)が合わさって病気になる場合もあります。しかし、それらがなくても病気になる場合もあります。
どんな症状がでるの?
- 社交不安症では、下記のような症状がでます。
社交不安症の症状
- 他人の視線に恐怖を感じる。
- 人前でスピーチをする、授業で発表するなどの場面で、強い緊張を感じ、スムーズに話せなくなる。
- 他人に見られている状態で、文字を書こうとすると震えてしまうため、文字を書くことができない。
- 他人に聞かれている状態で、電話に出ようとするとスムーズに話すことができない。
- 人の集まりが苦手で、何を話したらいいか分からず、会話の輪に入ることができない。
- 上記のような緊張する場面で身体の震えが止まらなくなる、汗が止まらなくなる、顔がとても赤くなる。
- 上記のような場面で、自分が「他の人に変に思われているのではないか」と思って恐怖を感じ、そういった場面を避けるようになる。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 病院に行ったら、社交不安症かどうか診断するためのM.I.N.I.という15分程度の質問に答える検査や、不安症状の程度を評価するLSASという24項目の質問に答える検査などを行うことがあります。
- また、身体の震え、発汗、赤面などについては、まれに、甲状腺ホルモンの異常や動悸などがする不整脈など、社交不安症以外の体の病気が疑われる場合は、血液検査や心臓の電気活動を見る心電図検査を行うことがあります。
どんな治療があるの?
- 社交不安症の治療では、認知行動療法とよばれるカウンセリング(心理療法)が最も勧められています。またはお薬を合わせて飲む場合もあります。
- 認知行動療法とは、不安がでる時に頭に浮かんでくる考えと行動のパターンを探し、不安に対処する方法を学び、練習することで、その考えと行動のパターンを変化させていく方法です。具体的には、週1回、約50分程度、治療してくれる人と一対一で、全部で12回〜16回ほど行うことが多いです。
- 商品名で、パキシル、ルボックスまたはデプロメール、レクサプロといったSSRIと呼ばれるうつ病に使う抗うつ薬を使います。不安が強い場合には、ワイパックス、ソラナックスなどの不安を和らげる、抗不安薬を症状が出るときに飲むこともあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- お薬を飲んだ後は、以下のことに注意してください。
- 抗うつ薬を飲むと、24歳以下の患者さんの中には、イライラして落ち着かなくなったり、死んでしまいたいという気持ちが強くなってしまったりする方がいます。周りの人が特に注意して見守るようにしてください。
- また、症状が改善しても、自分の判断でお薬を飲むのをやめないようにしてください。治ったと思ってもまた症状が出ることがあるので、しばらくはお薬を飲み続けることが必要です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 社交不安症は、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、治っていきます。しばらくは治療をしっかり続けることが必要です。
- お薬を飲み、週1回、全部で16回の認知行動療法を受けた患者さんの場合、約50%の方はほぼ症状がなくなり、約85%の方はある程度症状が改善したというデータがあります。
追加の情報を手に入れるには?
- 厚生労働省の心の健康のホームページに社交不安症の認知行動療法の治療者用マニュアルが掲載されていまして、患者さん用の参考資料ものっておりますので、ご覧ください。
- https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113841.pdf
もっと知りたい! 社交不安症/社交不安障害のこと
社交不安症(社交不安障害)って、病気なの?性格じゃないの?
- 社交不安症は病気です。社交不安症の方は「極端に緊張しやすいのは自分の性格だ」と思って、それが治療できるとは夢にも思ってない、ということがよくあります。
- 性格とは、その人がもともと持っている、行動と考え方のパターンのことで、環境に合わせて常に変化していきます。一方、その行動と考え方のパターンが悪循環にはまってしまい、抜け出せなくなってしまったのが病気の状態です。
- この悪循環のパターンを変化させる方法が、認知行動療法というカウンセリング(心理療法)になります。