重度の頭部外傷: 対処方法は?検査や治療は?後遺症は残らない?
更新日:2020/11/11
- 日本脳神経外科学会専門医の周郷 延雄と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかするとご自身が頭を強く打って大丈夫だろうか?と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 重度の頭部外傷は、頭に強い力が加わり、頭の中に出血したり脳が傷ついたりして、意識が悪くなった状態です。
- 頭をぶつけた直後は、頭の中の血のかたまりを取り除く血腫除去術や、脳の圧を下げるための外減圧術を行うことがあります。
- 時間が経ったあとには、意識障害の程度や後遺症に応じて、気管切開や経管栄養などの全身管理を行います。
- 慢性期の治療として、手足のリハビリテーションや、味覚、視覚、嗅覚、皮膚を刺激する五感療法があります。
- 健康保険の適応外として電気刺激療法があります。
重度の頭部外傷は、どんな病気?
- 重度の頭部外傷は、頭を打つようなケガのうち、頭の中で出血したり脳が傷ついたりして意識が悪くなった場合をいいます。
- 転落、交通事故、暴行など強い力が頭に加わったことで起こります。
重度の頭部外傷だと思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 頭を強くぶつけた後、呼びかけても反応がない、動きが鈍いなど、明らかに普段とは違う状態になった場合はすぐに救急車を呼んで病院を受診してください。
- 高齢の方では、頭から転んだだけでも重症になることがあります。すぐに病院を受診してください。
重度の頭部外傷になりやすいのはどんな人?原因は?
- 頭のケガが重症になりやすいのは、若年者と高齢者です。
- 最も多い原因は、交通事故です。近年は、高齢者の転倒・転落も多くなっています。
どんな症状がでるの?
- 意識が悪いことが主な症状です。
- ぶつけた場所にもよりますが、手足が動かしにくい、言葉が出ないといった症状が出ることもあります。
- 脳が傷ついてしまうと、その後も手足の動きが悪いままになってしまったり、飲みこむことが上手にできなくなって誤嚥(ごえん)しやすくなったりします。
- また、けいれんを起こしやすくなります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 検査は以下の通りです。
検査
- 胸のレントゲン:心臓・肺が傷ついていないか見ます。骨折を確認します。
- CT検査:頭の骨が折れていないか、頭の中で出血していないか、脳が傷ついていないか見ます。また、頭以外にも、ケガしているところがないか確認します。
- 血液検査:全身の状態を把握します。
- 心電図:ケガの原因が心臓にないか、もともともっている病気はないかなどを確認します。
どんな治療があるの?
- 治療は以下の通りです。
急性期の治療
- 手術:頭の中の血のかたまりを取り除きます。頭の骨を一部開けて、脳内の圧を下げることがあります。
- お薬:脳圧を下げるお薬や、けいれんを予防するお薬を使います。
- 人工呼吸器による呼吸の調節
- 頭位の挙上
- 頭以外のけがに対する治療
状態が比較的安定する時期の治療
- リハビリテーション:手足の関節が固まってしまうのを防ぐために、症状に応じて運動麻痺や言語の訓練を行います。
- 五感療法:残存している感覚(味覚、視覚、嗅覚、皮膚の感覚)を刺激します。
- 電気刺激療法(脊髄刺激療法、迷走神経刺激療法など):健康保険の適応外です。
- その他、全身状態の維持を目的とした栄養補給のための胃ろう、喀痰吸引や呼吸のための気管切開を行います。
- 自動車事故による遷延性意識障害の患者さんでは、入院の要件が合えば、自動車事故対策機構のNASVA療護センターでの重点的な治療と看護並びにリハビリテーションを行うこともできます。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 数週から数か月で良くなっていく方もいれば、なかなか意識が戻らない方もいます。
追加の情報を手に入れるには?
- さらに情報を手に入れたい方は、下記のページを参考にしてください。
- 日本意識障害学会ホームページ
- http://japan-coma-society.com/
- 日本脳神経外科学会ホームページ 疾患情報ページ
- http://square.umin.ac.jp/neuroinf/medical/index.html
- NASVA療護センター
- http://www.nasva.go.jp/sasaeru/ryougo.html