サルコイドーシス:どんな病気?検査や治療は?完治できるの?
更新日:2020/11/11
- 呼吸器内科専門医の山口 哲生と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分や家族がサルコイドーシス(疑い)と診断された」または「サルコイドーシスで病院の先生にみてもらっているけれども、自分の症状をわかってもらえない」ために不安を感じておられるかもしれません。
- そういう方のためにできるだけ役に立つ情報をまとめました。私が日々の診療の中で「とくに気を付けてほしいこと」「よく 質問を受けること」「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- サルコイドーシスとは、からだのあちこちにコブ(肉芽腫【にくげしゅ】といいます)ができてしまう病気です。肉芽腫ができる部位によって、さまざまな症状があらわれます。
- 肉芽腫ができる場所で一番多いのは肺で、まったく無症状のことも、咳や痰、息切れなどの症状があらわれることもあります。
- 自然に治ることもありますが、ステロイドホルモンなどで積極的に治療をすることもあります。
- サルコイドーシスは指定難病であり、自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われることがあります。
サルコイドーシスは、どんな病気?
- サルコイドーシスとは、からだのあちこちにコブ(肉芽腫【にくげしゅ】といいます)ができてしまう病気です。
- 肉芽腫ができる場所で一番多いのは、肺につながるリンパ節(肺門リンパ節といいます)や肺の中です。そのほか、眼、皮膚、身体中のリンパ節や、骨、筋肉、神経、心臓、腎臓、肝臓、脾臓などにもあらわれます。
- 自然に治ることもありますが、何年間も治らないこともあります。強力な治療が必要になることも、積極的な治療はしないで経過観察だけをする場合もあります。
- サルコイドーシスは指定難病であり、自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われることがあります。
サルコイドーシスと思ったら、どんな医療機関にかかればよいの?
- サルコイドーシスかも?と思ったら、下記のサイトで紹介されている専門医療機関を参考に、受診していただくことをお勧めします。これらの医療機関では、サルコイドーシスの診断・治療について適切なアドバイスをいただくことができます。
サルコイドーシスの専門医療機関が探せるサイト
- 日本サルコイドーシス 肉芽種性疾患学会HP「サルコイドーシスの診療を得意とする医師医療機関」
- http://www.jssog.com/public/
- サルコイドーシス友の会のHP
- http://www.ne.jp/asahi/h/sato/
サルコイドーシスになりやすいのはどんな人?
- サルコイドーシスはほとんど成人で発病しますが、より女性に多い疾患です。また、ストレス、睡眠不足、不規則な食事などがあると、サルコイドーシスになりやすくなるといわれています。
原因はなんでしょうか?
- 原因は不明とされており、いくつかの仮説があります。
- 現在、アクネ菌という皮膚に普通に存在していて、ニキビを悪化させることもある菌が原因になって、サルコイドーシスの肉芽腫をつくっているという説が最も有力です。この菌は肉芽腫の中では姿をかえているので、抗菌薬の効果は不確かです。
どんな症状がでるの?
- 肉芽腫のできた場所や肉芽腫の大きさによって、症状はさまざまです。
- 肺や肺門リンパ節に肉芽腫ができても、まったく症状がなく、検診で異常な影がみつかるだけのこともありますし、咳・痰・息切れがあらわれることもあります。
- わが国では、眼の症状(目がかすむ、黒い虫のようなものが飛んでいるように見える、眼圧があがるなど)で発見されることが多いです。皮膚にあらわれる発疹、神経の症状、心臓の不整脈や心不全、骨の痛み、筋肉の腫瘤、腎臓の障害などもあります。
- 発熱、疲れ、痛みなどの全身症状がでることもあります。全身症状だけがあらわれ、なかなかサルコイドーシスと診断がつかないこともあります。臓器に特徴的な症状よりも、このような疲れや痛みなどの症状のほうがつらく感じる、ということはよくあります。
- 自然によくなったり、なかなか治らなかったりで、経過もきわめてさまざまです。男女ともに若い方で、肉芽腫が出てきた臓器の数が少ないと治りはよいのですが、ご高齢の方で肉芽腫のある臓器の数が多い場合は治りが悪い傾向にあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 肉芽腫ができた臓器によって、検査内容は異なります。
- 病気がどこまでひろがっているかをみるために、ガリウムシンチグラフィー、FDG-PET検査、眼の検査などが行われます。
- 皮膚や皮膚に近いリンパ節の場合は、組織生検をまず行うでしょう。
- 肺の病変があると、気管支鏡検査をおこなって、肺の細胞をみたり肉芽腫組織の証明をしたりします。
- 鑑別が難しい場合には、組織生検で診断をつける必要がありますが、典型的なサルコイドーシスであれば、生検をせずに診断がつく場合もあります。
どんな治療があるの?
- 様子をみてもよさそうな場合には、積極的な治療は行わずに自然によくなることを待つことが多いです。
- しかし、急いでしっかり治療を行わなければいけない部位(眼、顔面、心臓、神経、涙腺、骨など)に症状があらわれた場合には、ステロイドホルモンなどの免疫抑制薬で治療を行います。
- ステロイドホルモンはとても効果がありますが、副作用がでることや、長く使用した後に量を減らした場合、再発することが多いので、できるだけ使わないでみることもあります。
- 作用はステロイドホルモンよりも弱いですが、メトトレキサートやアザチオプリンなどの免疫抑制薬もよく使われます。また、全身症状を抑えるためには漢方薬が効果的なことが多いです。
治療の副作用はあるの?
- ステロイドホルモンの副作用として、顔が満月のようにまるくなる、太る、糖尿病、胃潰瘍、骨粗鬆症などが知られています。
- 他の免疫抑制薬はそれほど強い副作用はありません。
よくなるために自分でできることは?
- サルコイドーシスはストレス、睡眠不足、不規則で不十分な食生活でおこることがあると言われています。
- 規則正しく食べて、よく眠って、気持ちを明るくもつことが大切だといえるでしょう。
追加の情報を手に入れるには?
- 難病情報センター
- http://www.nanbyou.or.jp/entry/110
- 日本サルコイドーシス肉芽種性疾患学会の「サルコイドーシス診療の手引き2018」
- http://www.jssog.com/journal