前立腺がん:原因は?症状は?腫瘍マーカーで診断できるの?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 泌尿器科専門医の神谷 直人、鈴木 啓悦と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分が前立腺がんになってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 前立腺は骨盤の一番奥にある男性固有の臓器であり、精液の一部に含まれる前立腺液を作っています。
- 前立腺がんの癌細胞は男性ホルモンにより増殖します。
- 前立腺がんは50歳以上の高齢男性に多いです。
- 早期の前立腺がんでは自覚症状はありませんが、前立腺肥大症も合併してしまうと、おしっこに関する症状が出てきます。
前立腺がんは、どんな病気?
- 前立腺がんの多くは、前立腺の外側にある辺縁域と呼ばれる部分でがん細胞が男性ホルモンにより増殖します。
- 前立腺は骨盤の一番奥にある男性固有の臓器であり、精液の一部に含まれる前立腺液を作っています。正常の前立腺はクルミのような形をしています。
- 前立腺がんは日本人男性癌患者数で胃癌・肺癌に次いで3番目に多く、今後も増加すると予測されています。
- 前立腺がんの5年生存率はリンパ節や他の臓器への転移がなければ95%以上で予後は良好です。転移を伴うと5年生存率は約70%であるため、早期発見・早期治療に努めることが重要です。
前立腺がんと思ったら、どんなときに病院・クリニックへ受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- おしっこに関する症状が出たり、精液やおしっこに血が混じっている場合は、泌尿器科のある病院にご相談ください。
- 自覚症状がなくても健診で前立腺がんの可能性を指摘された場合も、泌尿器科のある病院にご相談ください。
前立腺がんになりやすいのはどんな人?原因は?
- 50歳以上の男性の方は前立腺がんになりやすいです。
- 前立腺がんは精巣や副腎で作られる男性ホルモンにより増殖します。
どんな症状がでるの?
- 早期の前立腺がんでは自覚症状はありません。
- 前立腺がんは前立腺肥大症と合併することが多いため、前立腺肥大症に見られる排尿症状(おしっこが出にくい、残尿感がある、トイレが近い)が出てきます。
- 進行した前立腺がんでは精液やおしっこに血が混じることがあります。
- その他にも、転移がある場合、転移した部位に伴う症状が出てきます。例えば、骨に転移した場合は痛みや足のしびれ、麻痺を、リンパ節に転移した場合は足のむくみを感じることがあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 血液検査でPSAと呼ばれる前立腺がんや前立腺肥大症で上昇する腫瘍マーカーを測定します。しかし前立腺に問題がなくてもPSAが上昇することがあります。
- 直腸診で前立腺の硬さや表面のゴツゴツを確認します。お尻の穴に医師が指を入れて前立腺を触るので、患者様には気持ちの悪い検査となりますが、前立腺がんを診断する上で重要な検査になります。
- 超音波検査で前立腺の大きさや異常な部分を確認します。
- MRI検査は超音波検査よりも時間がかかりますが、前立腺がんの病変を最も正確に観察することができます。
- 前立腺生検で前立腺の組織を針で取り、組織の細胞ががん細胞でないか顕微鏡で確認し、確定診断をします。
- CT・骨シンチで全身の転移の有無を確認します。
どんな治療があるの?
- 前立腺がんの治療は病期やリスク分類や年齢や全身状態を考慮して行われます。患者さん個々の状態に最善な治療が選択されるべきです。転移がなく悪性度が低い場合は、治療をせず経過観察になることもあります。
- 手術療法には、開腹手術(お腹を開いて行う手術)、腹腔鏡手術(お腹に小さい穴をいくつか開けて、その穴から器具を入れて行う手術)、ロボット支援手術(お腹に小さい穴をいくつか開けて、その穴からロボットの腕を入れて行う手術)があります。がんを取り切れれば完全に治すことのできる治療です。
- 放射線療法は、前立腺がんの部分に対して、放射線を当てる治療です。放射線療法はホルモン療法と一緒に行うことで、治療効果が得られます。
- ホルモン療法はがん細胞を増殖させている男性ホルモンを抑える治療です。
- 化学療法は、ホルモン療法が効かなくなった前立腺がんに選択されます。タキサン系抗がん剤が使用されます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- ホルモン療法を受けている患者さんではメタボリック症候群や筋力低下を伴いやすいため、適度な運動を含めた適切な食生活が必要です。
- 骨転移を伴う患者さんでは骨折するリスクがあるため、過度な運動や転倒に注意する必要があります。
予防のためにできることは?
- 残念ながら、前立腺がんを予防するための明確な方法はありません。
- 大豆に含まれるイソフラボンやトマトに含まれるリコピンや緑茶に含まれるカテキンは前立腺がんの発症を抑える効果が期待されています。
- メタボリック症候群と前立腺がんの関係も指摘されており、食生活の改善が前立腺がんの予防に有効である可能性が示唆されています。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 前立腺がんの5年生存率は転移がなければ95%以上と予後は良好です。転移を伴うと5年生存率は約70%であるため、早期発見・早期治療に努めることが重要です。