PET検査を受けられる皆様に知っていただきたい知識
更新日:2020/11/11
- 放射線診断医の長町茂樹と申します。
- このページに来ていただいた方は、悪性腫瘍と診断された方、またはPET健診を考えられている方が主な対象と考えております。
- 多くの施設で施行されるPET検査はFDGと言う特殊な物質を用いたものであり、がん(悪性腫瘍と言います)のほか、てんかん、心筋虚血、心臓サルコイドーシス、大血管炎のことが良く判ります。ここではこれらを含めて、実際の診療に役立つ情報をまとめました。
目次
まとめ
- PET検査は、FDGという放射線を出す医薬品を用いて、主にがんを検査する目的で用いられます。
- 一度の検査で全身を調べることが可能です。
- 検査時間は20分程度で、準備などを含めて合計で2時間はかかります。
- 痛みはないので苦痛に感じづらく、身体的な負担の少ない検査です。
- がん以外では、てんかん、心筋虚血、心臓サルコイドーシス、大血管炎の診断が保険適応となっています。
どんな検査ですか?
- PET検査とは、Positron emission tomographyの略で、放射線を出す特別な医薬品を血管に注射して行う画像検査のことです。
- ほとんどの場合で、FDGという医薬品が使われます。
- FDGががんのある部位に集まる性質を利用し、FDGが出す放射線を特別なカメラ(PETカメラ)で撮影することで、全身における分布や量を画像化します。
- 通常CT検査と一体になっている装置を用いるので(図表1)、PET画像とCT画像が融合した分かりやすい画像が作成されます。(PET/CT検査と言います)
- また、注射時の痛み以外に苦痛はありません。
図表1 PET
どんなことがわかりますか?
- 肺がん、乳がん、膵がん、子宮がん、大腸がんなど多くの悪性腫瘍を検出します。
- PET/CT検査は全身を一度に検査することができるので、がんが他の臓器や組織に転移しているかどうかの診断に大変役立ちます。
- 一方で、FDGはおしっこの中に排泄されて体外へ出てくるので、腎臓や膀胱などのがんの診断には向きません。
- 肺炎や結核、怪我や骨折部位、筋肉痛などにもFDGが取り込まれることがあるので、専門医による詳細な診断が必要となります。
この検査の目的、検査の適応は?
- この検査の目的は、がんと診断のついた患者様に対し、がんがどの程度進行しているかを診断することです。
- PET検査は全身の精査が可能であるため、新たにがんが転移している場所が発見されることがあります。また、別のがんがみつかる場合もあります。そのため、検査の結果次第では治療方針が変更される場合もあります。
- 造影剤を使用する必要がないので、ヨード系造影剤に対するアレルギーをお持ちの方にも可能です。また喘息や腎機能が低下している方でも問題ありません。
- 放射性の医薬品が使用されるので、妊娠中または妊娠の可能性がある方には適応がありません。
実際にはどんなことをしますか?
- FDG-PET検査は血糖値の影響を受けます。そのため、前処置として検査前に5時間程度の絶食を行う必要があります。午前の検査であれば朝食を絶食とし、午後の検査であれば朝食は軽くし昼食を絶食にします。
- 糖尿病の患者様は、インスリン使用の有無などにより異なりますので、検査前に先生から詳細な指示を受けられることをお勧めします。
- FDGを血管に注射した後、1時間ほど待機室で安静待機します。その後PET検査室で、検査台の上にあおむけになり、ドーナツ状の装置の中を通過しながら全身の断面を撮影します。所要時間は20分程度です。画像が鮮明に撮れていなかった場合、時間を調整して追加撮影することもあります。
代替検査として他にどのような検査法がありますか?
- ガリウムシンチ検査があります。ガリウムという物質を血管に注射し、48時間以上たった後に全身を撮影する検査法です。
- FDG-PET検査と比べて画像が鮮明ではなく、また時間もかかります。しかしFDG-PETでは保険適応の無い疾患についても幅広く用いることが出来るので、実際の診療の現場ではよく行われる検査法です。
放射線被曝【ひばく】について
- 被曝量は、PET検査では約3.5mSv、CT検査では数mSv~十数mSvなので、合計すると15mSv程度になります。
- 普通に生活していても1年間に受ける被曝量は2.4mSvですので、その約6倍の量です。ですが、この量では急な健康障害が起こることはありません。
検査後の注意
- 検査された患者様の身体に影響はありませんが、わずかに放射線が体の外に放出されますので、検査後、数十分は待機室で待つ必要があります。
- 帰宅後は食事やお風呂などは通常通りで構いません。24時間経つとほとんど放射線が出なくなります。
- 念のため検査後4時間以内は、赤ちゃんとの接触は避けてください。授乳中であれば、検査前におっぱいを保存していたものを、赤ちゃんに与えるのが望ましいと思われます。帰宅してから2時間後に一回おっぱいを搾って処分すれば、その次からは授乳可能です。
費用は?
- 保険診療では自己負担割合が1割負担の場合は1万円程度、3割負担の場合は3万円程度です。
- 自由診療や健診では施設毎に負担金額が異なりますので、あらかじめ検査施設に問い合わせる必要があります。
もっと知りたい!悪性腫瘍以外のFDG-PET検査の適応は?
- 以下の病気の方において保険適応となります。
保険適用となる方
- 難治性部分てんかんで外科的切除が必要とされる方
- 虚血性心疾患における心筋組織のバイアビリティ診断が必要な方
- 心サルコイドーシスにおける炎症部位や活動性の診断が必要とされる方
- 高安動脈炎などの大型血管炎において、病変の局在又は活動性の判断がつかない方
ガイドラインなどの追加の情報を手に入れるには?
- PET検査のより詳しい情報については、以下のウェブサイトを参照してください。
- http://jsnm.org/useful/guidelines/