膵臓癌:症状は? 痛みはある? 原因は? 検査や治療は? 手術で治るの?
更新日:2020/11/11
- 消化器外科専門医の遠藤 格、土屋 伸広と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分が膵臓癌になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 膵臓癌は膵臓にできる悪性の腫瘍(できもの)、すなわち癌です。
- おなかが痛い、胃のあたりや背中が重苦しい、体重が減ったなどの症状がでますが、はじめは症状がまったくないことが多く、みつけるのが難しい癌です。
- ほかの癌と比べても治りにくく、治療がきわめて難しい癌です。
- 早期発見、早期治療が重要になりますので、以下を読まれて「膵臓癌になりやすいかも」と思われた方はとくに生活習慣に気をつけ、定期的に検査を受けるようにしてください。
膵臓癌は、どんな病気?
- 膵臓癌とは、食べ物の消化と血糖値の調節に大きな役割を果たす膵臓にできる悪性の腫瘍(癌)のことです。
- 膵臓癌の90%以上は、膵臓の中を細長い網の目のように走る膵管【すいかん】とよばれる部分の細胞にできます.
- はじめは症状がなく、みつかったときにはすでに病気が進んだ状態であることが多い、早期発見の難しい癌です。
膵臓癌と思ったら、どんなときに病院へ受診したらよいの? 医療機関の選び方は?
- 次にあげる項目にあてはまるものがあり、何か症状があるときにはくわしい検査を受けられる大きめの病院を受診してください。
膵臓癌になりやすい人
- 親や兄弟をはじめ近親者に膵臓癌の方がいる
- 膵臓の炎症が続いている
- 糖尿病がある
- たばこを吸っている
- 太っている
- 健診などで膵臓にのう胞(丸い袋状のできもの)があるといわれた方
膵臓癌になりやすいのはどんな人? 原因は?
- 膵臓癌になりやすい人は、前の項目を参照してください。
- 膵臓癌原因ははっきりとはわかっていませんが、膵臓の炎症をくり返す人は、膵臓癌になりやすくなります。
- 膵臓癌があることで膵臓の炎症をくり返す場合もあります。
どんな症状がでるの?
- 膵臓癌にかかった場合、次のような症状がでます。
膵臓癌の症状
- おなかが痛い
- 胃のあたりや背中が重苦しい
- 食欲がない
- 体重が減る
- からだや白目が黄色くなる
- からだがかゆい
- おしっこの色が濃い
- 糖尿病が悪化する(今までと同じ薬では)
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 血液検査:膵臓でつくられる物質(消化を助ける酵素という物質)や、癌があるとからだの中に増えてくる物質が血液中に増えているか調べます。
- 画像検査:おなかの超音波検査、CT、MRI検査で膵臓やまわりの臓器の状態を調べます。
- 特別な検査:血液検査や画像検査ではわからない場合や、「膵臓癌である」と確実に診断するために、超音波のついた内視鏡や造影剤というお薬を使って膵臓の管やまわりの臓器をくわしく観察したり、PETという特別な装置で膵臓以外に癌がないか全身を調べたりします。
どんな治療があるの?
- 治療方法は、癌の進み具合や、からだの状態に加えて、手術でがんを取り除けるかどうかで決定します。
- 手術:膵臓の全部または一部を切り取ります。
- 化学療法:お薬、いわゆる「抗がん剤」を使った治療で、手術では切り取れない場合や、癌が再発した場合に行います。
- 放射線治療:放射線をあてて癌細胞を死滅させつ方法、抗がん剤と合わせて用いられることが多い治療方法です。
- 膵臓癌は治りにくい病気ですので、手術をする場合でも、化学療法や放射線治療を一緒に行うことが一般的です。
医療従事者向けコラム:膵臓癌の分類
- 切除可能かどうかによって膵臓癌を「切除可能」「切除可能境界」「切除不能」の3つに分類します。
- 切除不能膵臓癌はさらに、遠隔転移の有無によって「局所進行膵臓癌」と「転移性膵臓癌」に分類します。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは? 治療の副作用は?
- 膵臓癌は仮に手術で癌を切り取ったとしても、すでにまわりや離れた臓器に癌細胞がとんでいっていることが多く、一度癌が消えても再びでてくることがありますので、治療後も定期的な検査で癌がないか確認していく必要があります。
- 膵臓を切り取ったことで消化吸収がうまくできなくなくなり、栄養状態が悪くなったり、糖尿病が悪化したりすることもあります。
- 抗がん剤や放射線治療によって、貧血、吐き気、下痢、脱毛のような症状や感染症にかかりやすくなるなどの副作用がでることがあります。
予防のためにできることは?
- 明確な予防法はありませんが、次のようなことに気をつけてください。
膵臓癌予防のために気を付けていただきたいこと
- 適度な運動と食生活の改善に努める。
- 脂肪を取りすぎず、お酒やたばこは控えるよう心がける。
- 膵臓癌になりやすい項目にあてはまる場合は、定期的に病院で検査を受け、膵臓癌にかかった場合でも早期に発見できるようにする。
治るの? 治るとしたらどのくらいで治るの?
- 膵臓癌は、進み具合(ステージ)が最も低い場合でも、5年後も生きている確率は40%程度と、治療の難しい癌です。
- 病気が進むと治療はさらに難しくなりますので、早期に発見して治療することが大事です。
追加の情報を手に入れるには?
- 膵臓癌に関してのさらにくわしい情報は、国立がん研究センターのがん情報サービスのページをご覧になってください。
- https://ganjoho.jp/public/cancer/pancreas/index.html