骨髄炎:原因は?症状は?起こりやすい場所は?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が骨髄炎(化膿性骨髄炎)になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 骨髄炎とは骨の感染症です。細菌が骨で繁殖してしまい、自分の力(免疫力)では治せなくなった状態です。
- 原因は肺炎などで血液の中で増えた細菌が骨に入り込んで繁殖するパターン(血行性感染)と、骨折や手術など皮膚が破れてしまった状態が骨のそばで起こり、直接細菌が入り込むパターン(直接感染)があります。虫歯も原因の一つとなり得ます。
- 血行性におこる骨髄炎は15歳以下に多いです。大人は皮膚の障害を伴う骨折(開放骨折)などの直接感染が多いです。
- 原因菌は皮膚の表在菌が多いです。
- 治療は基本的に点滴による抗生物質の投与、治りにくい時には手術で病巣部を取り除くこともあります。
- 歯科領域の骨髄炎は歯科、口腔外科へ受診してください。
骨髄炎は、どんな病気?
- 骨髄炎とは細菌が骨で繁殖してしまい、自分の力(免疫力)では治せなくなってしまう病気です。
- 主な症状は痛みです。
- 骨で細菌が繁殖しすぐに症状が出現する場合(急性骨髄炎)と、一時的に免疫力で細菌の繁殖を抑えられてもその後症状が出現してくる場合(慢性骨髄炎)があります。
骨髄炎と思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?
- 以下のような場合は、病院へ受診してください。
病院への受診が必要な場合
- 熱や怪我の後、皮膚の傷は治っているのに腕や足が痛い
- 虫歯の周囲がズキズキ痛い
- 痛みに伴い、腫れや発赤、熱感がある
- 腫れて、皮膚から膿が出ている
- また、骨髄炎で救急車が必要となることはほとんどありませんが、高熱が出る、血圧が下がるなど全身が緊急な状態になる前に病院に行きましょう。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 残念ながら受診前によくなる方法はありません。症状が出始める前に風邪をひいて熱を出した、転んで怪我をしているなど無かったか思い出しておいてください。
- 例えば慢性骨髄炎の場合、同じ場所に数年前しばらく痛みがあったが自然に治ったことを経験していることが多いですが、体調を崩した時など体力が下がった時に症状を再発させます。
骨髄炎になりやすいのはどんな人?原因は?
- 骨髄炎には起こり方の違いで、急性と慢性に分けられます。
- 急性骨髄炎:小児、特に男児に多いです。起こりやすい年齢は15歳未満ですが、2歳未満と8〜12歳と2つの時期にピークがあります。原因は肺炎などで血液の中で増えた細菌が骨に入り込んで繁殖するパターンが多いです。
- 慢性骨髄炎:皮膚が裂けた傷口を放置している人、虫歯を放置している人に多いです。特に、糖尿病など細菌に対する抵抗力が弱い人に起こりやすいです。 そのため糖尿病患者さんは足など傷口が治りにくい場所の小さな傷には十分に気をつけてください。
どんな症状がでるの?
- 骨髄炎の症状として、以下のようなものがあります。
骨髄炎の症状
- 痛み、押すと痛い
- 腫れている、発赤、熱感
- 2歳未満のお子さんにも多いです。その場合骨髄炎のある手足を動かしたがらない、動かすと痛がるなど他の手足とよりも使いたがらなくなります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- まず、レントゲン撮影と採血を行います。
- 腫れている、熱感があるなど感染症を強く疑う場合はMRIやCTなどの画像検査を追加で行います。
- 骨髄炎が明らかになった場合、もう一度採血をして血液の中の細菌の種類を調べる検査(細菌培養検査)を追加します。傷口などがあった場合そちらから膿をとってやはり細菌培養検査を行います。
どんな治療があるの?
急性骨髄炎の治療
- 発症早期の抗菌薬の静脈内投与が重要です。その為通常は入院での治療となります。
- 発症早期(数日以内)の急性骨髄炎では抗菌薬投与による治癒も可能ですが、膿瘍や骨破壊、腐骨の存在、抗菌薬投与による症状の改善が得られない場合には手術で膿瘍部の除去が必要です。
- MRSAのような抗生物質の効きにくい症例に関しては治療が難渋します。
慢性骨髄炎の治療
- 慢性骨髄炎では膿瘍や腐骨の存在が明らかであり、手術適応となる症例がほとんどです。
- 治療の基本は、膿瘍、腐骨(細菌がたまり壊死をおこした骨)、感染した軟部組織の可能な限りの切除(四肢の切断が必要な場合もあります。)
- 適切な抗菌薬の投与であり、病巣部(膿瘍のたまった骨)を除去してから4〜6週の抗菌薬の点滴による投与が必要と考えられています。
- また、状態が落ち着いてからしばらく飲み薬の抗生物質を継続する場合がほとんどです。
- MRSAのような抗生物質の効きにくい症例に関しては治療が難渋します。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 骨髄炎は症状が落ち着いても抗生物質を終了してから再発する可能性が高いです。数年経ってから再発することも稀ではありません。そのため、定期的な通院が終わっても、原因となった菌や治療に使った抗生物質の情報は覚えておく事をおすすめします。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 骨髄炎はうつりません。
- 予防のためにはまず傷口が汚い状態で放置をすることをしないことです。糖尿病の方は傷口の痛みを感じにくい場合がある為、痛みが無くても重症になっていることがあります。傷口周囲の腫脹や発赤、熱感は危険なサインです。
- 歯磨きをする、虫歯を放置しないなど細菌が入りやすい環境を作らないことが大切です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 骨髄炎は完治するまで時間がかかります。また残念ながら、治ったと思っても症状が再発することが多いです。
追加の情報を手に入れるには?
- 歯科領域の骨髄炎は歯科、口腔外科への受診が必要です。
- http://www.chemotherapy.or.jp/guideline/jaidjsc-kansenshochiryo_shisei.pdf
さいごに
- 薬のアレルギーや、今までかかった病気などは治療上、大切な情報です。