NSAIDs:どんな薬?薬局で買えるの?副作用や使えない人は?
更新日:2020/11/11
- 家庭医療専門医の一瀬 直日と申します。
- このページに来ていただいた方は、痛み止めについてのお悩みがあり、痛み止めの処方を希望されておられるかもしれません。
- 痛み止めの代表的な一つとしてNSAIDsを飲み始めるにあたり、それがどのような薬であるのかについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしいこと」について記載をさせていただいています。
目次
- どんなくすり?おおよその値段は?
- どんな目的で飲むの?
- どのように飲むの?
- 飲み始めるときの注意点は?いつまで使うの?自分でやめてよい?
- 副作用ってよく聞くけど、どんなことが起こるの?治療中の注意点は
- 食事などとの飲み合わせは?一緒に飲まないほうがいい薬はある?
- NSAIDsには種類がたくさんありますが、どれが自分に合うのですか?
- NSAIDsは飲み薬のほか、座薬や塗り薬、湿布などたくさんの剤形があります。どれが一番効くのですか?
- NSAIDsは出血をおこしやすい副作用があるといわれますが、手術をする前はいつから中止したほうがよいのですか?
- アスピリンはNSAIDs なのに心臓や血管に悪影響はないの?
- 妊娠中はNSAIDsを飲んでもよいの?
- 子どもはNSAIDsを飲んでもよいの?
- アセトアミノフェンというお薬もNSAIDs?
- 薬剤にはどのような種類があるの?それぞれの特徴は?
- NSAIDsの分類
- ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
まとめ
- NSAIDsは、痛みを和らげたり、熱を下げたりし、アセトアミノフェンとともに一般的に使われることの多いお薬です。
- 出血や、胃腸や腎臓の障害などの重大な副作用を起こすことがあります。今までかかった大きな病気、飲んでいるお薬などをお医者さんに伝えるようにしてください。
- 必ず決められた範囲内の用量を飲み、2種類以上のNSAIDsを同時に飲まないようにしてください。
どんなくすり?おおよその値段は?
- NSAIDs(「エヌセイズ」とよみます、Nonsteroidal anti-inflammatory drugsの略称、非ステロイド系消炎鎮痛薬) は、痛みを和らげたり、炎症を抑えたりするために使用されるお薬です。
- プロスタグランジンという炎症を起こす物質の産生を抑えることにより、効果を発揮します。
- 1錠あたりの値段は、2020年6月現在、約40円程度のようです。
炎症とは?
- 炎症とは、腫れて熱をもった感じや、赤みや痛みがある状態のことを指します。
- 風邪をひいたときの喉の症状や、足をくじいたときの症状は、それぞれ炎症によるものです。
どんな目的で飲むの?
- NSAIDsは、痛みをとりたいとき、炎症を抑えたいとき、熱を下げたいときに最も一般的に用いられます。
- 具体的な例として以下のようなときに用いますが、その他にも色々な痛みに対して症状を和らげるために使われています。
NSAIDsを飲むとき
- 頭痛
- 生理痛
- ねんざ
- 風邪:のどの痛み、頭痛、熱いずれの症状にも使われます。
- 関節炎:中年の方やお年寄りの方に多い変形性膝関節炎、痛風、偽痛風などにも使われます。
どのように飲むの?
- NSAIDsを飲むとき、少量の水にするよう指示されていなければ、コップ1杯の水とともに、1回量と1日量を越えない範囲で飲んでください。
- 胃腸の障害を起こしやすいお薬のため、胃腸に何らかの症状がある方や、胃痛を起こしやすい方は、お食事の後に飲んでください。
勧められないNSAIDsの飲み方
- 効果がないからといって、指示された以上の回数や1日量を守らずに飲まないでください。
- 効果がないからといって、別のNSAIDsと一緒に飲まないでください。
- いずれも副作用の危険性が高まります。
飲み始めるときの注意点は?いつまで使うの?自分でやめてよい?
- NSAIDsを飲み始めるときの注意点は以下の通りです。しっかりご確認ください。
NSAIDsを飲み始めるときの注意点
- 現在飲んでいるお薬をすべて医師や薬剤師に見せてから、お薬をもらってください:NSAIDsは多くの種類があるため、知らずに2種類以上のNSAIDsを一緒に飲んでしまうと、副作用を起こす危険性が高まります。
- 初めてかかる病院では、今までにかかった大きな病気やお薬を飲んで出た副作用、アレルギーを必ず申し出てください:NSAIDsは、心、腎、脳、肝、胃腸に病気があると副作用を起こしやすいお薬なので、避けてもらえるでしょう。
- 女性の方は、妊娠中や授乳中の場合、必ず申し出てください:赤ちゃんに影響が出るリスクがあります。
- むやみに長い期間飲まないでください:長く飲み続けると、副作用を起こしやすくなります。症状が良くなったら中止できることが多いので、病院にご相談ください。
- 特にご高齢の方の場合、使用期間は最小限にとどめてください:副作用を起こしやすいので、注意が必要です。
副作用ってよく聞くけど、どんなことが起こるの?治療中の注意点は
NSAIDsの副作用
- NSAIDsはプロスタグランジンの産生を抑制することで効力を発揮する一方、このために様々な副作用を起こすことが知られています。副作用として、以下のようなものがあります。
- 血圧の変動:高血圧の方でなくても、痛みや炎症を抑えられる量を使うことで、血圧が上昇します。
- 胃腸の障害:使用期間が短いと胃の痛み、長いと胃潰瘍や胃の出血をおこすことがあります。ただし、必要な方には、予防としてプロトンポンプ阻害薬やH2ブロッカーといった胃薬を一緒に飲んでいただきます。
- 腎臓の障害:短期間の使用であっても、腎臓の病気が元々ある場合は、特に腎臓の機能を悪化させます。また、利尿薬やアンジオテンシン変換酵素阻害薬、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬といった血圧を下げるお薬を一緒に飲むと、腎臓の障害を起こしやすくなることが知られています。
- 出血:胃潰瘍をはじめ、胃・食道・小腸からの出血を起こすことがあります。血液を固める働きのある血小板の病気を持つ方は、NSAIDs を飲むと、血小板の機能がさらに悪化し、出血しやすくなる危険性があります。
NSAIDsを飲むのに特に注意する方は?
- 以下のような病気、状態の方はNSAIDs を飲む前に、病院へご相談ください。
NSAIDsを飲むのに特に注意が必要な方
- 狭心症の原因となる冠動脈が狭くなっている方
- 脳梗塞になったことがある方
- 腎臓の病気、心臓の機能が良くない心不全、肝臓の機能が良くない肝硬変、尿を出しやすくする利尿薬を飲んでいる方
- 血液を固める働きのある血小板の病気を持つ方
- アスピリンにアレルギーがある方:アスピリンと同じ系統である非選択的NSAIDsの使用は避けたほうがよいです。選択的NSAIDs のCOX-2阻害薬であれば内服できる場合もありますが、それでもアレルギーを起こす可能性はゼロではありません。かかりつけ医とよく相談してから決めてください。
よくある質問
食事などとの飲み合わせは?一緒に飲まないほうがいい薬はある?
- NSAIDsと一緒に飲まないほうがいいお薬は以下の通りです。
- また、NSAIDsが効かないときは、量を変更するか他の種類に変更する必要があります。決して、2種類以上のNSAIDsを同時に飲まないでください。
NSAIDsと一緒に飲まないほうがいいお薬
- 血液をさらさらにする薬:ワルファリン、ヘパリン、抗凝固薬、抗血小板薬など。出血のリスクが高まります。
- フェニトイン:抗てんかん薬の一つです。血中のお薬の濃度が上昇するので注意を要します。
- シクロスポリン:免疫抑制剤の一つです。腎臓に悪影響を及ぼし、注意を要します。
- 利尿薬:心不全・腎不全・肝硬変の治療に用いられています。腎臓の機能が落ちることがあり、注意を要します。
NSAIDsには種類がたくさんありますが、どれが自分に合うのですか?
- 人によって効き方が異なることが多く、どの人にどの薬剤が最も効くのか前もってわかる方法はないのが現状です。
- だからといって、他人の薬をもらって飲むのは危険です。必ずかかりつけ医にご相談ください。
NSAIDsは飲み薬のほか、座薬や塗り薬、湿布などたくさんの剤形があります。どれが一番効くのですか?
- 関節炎などに対しては、塗り薬や湿布にも効果が期待できます。
- 症状や用途によっても異なります。かかりつけ医にご相談ください。
NSAIDsは出血をおこしやすい副作用があるといわれますが、手術をする前はいつから中止したほうがよいのですか?
- 出血を減らす必要がある手術の場合は、すべてのNSAIDsを手術1週間前から中止することが勧められます。
アスピリンはNSAIDs なのに心臓や血管に悪影響はないの?
- アスピリンはNSAIDsに含まれますが、心臓や血管の病気に用いられる少量アスピリンは、心臓や血管への悪影響をおこしません。
- ただし、少量アスピリンと一緒に別のNSAIDsを飲むと、少量アスピリンの持つ病気の予防効果を失う可能性があるので注意を要します。
妊娠中はNSAIDsを飲んでもよいの?
- 妊娠中は、特に妊娠後期に胎児への合併症の可能性があるためNSAIDsを飲むのは避けたほうがよいです。
- 授乳中に使用できるもの(ロキソプロフェン)もありますが、それもたくさん飲むのは避けたほうがよいでしょう。
子どもはNSAIDsを飲んでもよいの?
- お子さんへの安全性は明らかでないので、子どものNSAIDsの使用は避けたほうがよいです。
アセトアミノフェンというお薬もNSAIDs?
- アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として広く使われますが、NSAIDsではありません。NSAIDsとは異なる方法で同様の効果を発揮します。
- また、NSAIDsにみられるような心臓や血管の病気のリスクを高めることはないといわれています。
もっと知りたい!NSAIDsの基礎知識
薬剤にはどのような種類があるの?それぞれの特徴は?
- NSAIDsの代表例として、以下のようなものがあります。
- アスピリン:熱を下げたり痛みを抑えたりする目的に使われているだけでなく、少量のアスピリンは急性の心筋梗塞や脳梗塞の初めの治療や、これらの病気の再発予防としても広く用いられています。
- イブプロフェン、ロキソプロフェン:他のNSAIDsと同様の作用、副作用があります。市販の熱を下げるお薬、痛みを抑えるお薬にも含まれていることがあります。
- セレコキシブ:選択的に効果を発揮するNSAIDsなので、胃腸の副作用が少ないといわれています。しかし、心臓や血管への副作用は他の非選択的NSAIDsと同様だといわれています。
NSAIDsの分類
- NSAIDsには大きく分けて、非選択的NSAIDs と選択的NSAIDs があります。
非選択的NSAIDs
- 非選択的NSAIDsは、炎症や痛みに関連するCOX-2という物質だけでなく、COX-1という臓器の維持に働く物質も阻害し、プロスタグランジンの産生を抑えます。
- 副作用として、胃潰瘍などの胃腸の障害があります。
- 薬局で購入できる市販薬はここに含まれます。アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンといった薬品などがよく知られています。
選択的NSAIDs:
- 選択的NSAIDsは、COX-2だけを阻害し、プロスタグランジンの産生を抑えます。
- 胃潰瘍などの胃腸の障害の副作用が少ないことが知られています。
- セレコキシブが国内で唯一販売認可されています。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- Ⅱ章 背景知識 2 非オピオイド鎮痛薬 1 非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs) IN がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン 2014年版 (特定非営利活動法人 日本緩和医療学会 緩和医療ガイドライン作成委員会 編集)
- 疼痛の治療 非オピオイド鎮痛薬 MSDマニュアル プロフェッショナル版/07.神経疾患/疼痛
参考文献
- Risser, A., Donovan, D., Heintzman, J., & Page, T. (2009, December 15). NSAID prescribing precautions. American Family Physician, Vol. 80, pp. 1371–1378. Retrieved from https://www.aafp.org/afp/2009/1215/p1371.html
- NSAIDs. Available from https://www.nhs.uk/conditions/NSAIDs/ (Last accessed on 27th, June 2019)
- Patient education: Nonsteroidal antiinflammatory drugs (NSAIDs) (The Basics) IN Uptodate. Available from https://www.uptodate.com/contents/nonsteroidal-antiinflammatory-drugs-NSAIDs-the-basics (Last accessed on 16th, July 2019)
- Raymond R Townsend. NSAIDs and acetaminophen: Effects on blood pressure and hypertension. IN Uptodate. Available from https://www.uptodate.com/contents/NSAIDs-and-acetaminophen-effects-on-blood-pressure-and-hypertension (Last accessed on 18th, July 2019)
- Honvo, G., Leclercq, V., Geerinck, A., Thomas, T., Veronese, N., Charles, A., … Bruyère, O. (2019). Safety of Topical Non-steroidal Anti-Inflammatory Drugs in Osteoarthritis: Outcomes of a Systematic Review and Meta-Analysis. Drugs & Aging, 36(S1), 45–64. https://doi.org/10.1007/s40266-019-00661-0
- 佐田竜一: 3.NSAIDsの使い分け 第8章 アレルギー・膠原病・骨関節疾患の薬の使い分け.「同効薬、納得の使い分け 根拠からわかる!症例でわかる!」(片岡仁美/編), レジデントノート 21(5)926-931,羊土社,2019