寝汗:ひどい寝汗の原因は?病院受診のタイミングは?治療法は?
更新日:2020/11/11
- 家庭医療専門医の一瀬 直日と申します。
- とつぜん寝汗をかいたり、ひどい寝汗が何日も続いたりすると、心配になりますよね。何か悪い原因で起こっているのではないか?と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になられたりするかもしれません。
- そこでこのページでは、寝汗の一般的な原因や、ご自身での適切な対処方法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で感じる、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」について記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 寝汗とは、寝室が涼しいにも関わらず就寝中に発汗するために寝衣や寝具を交換しなければならないほど濡れてしまうことを意味します。
- 寝室が暑かったり、寝具をかけすぎれば、正常の大人でも子供でも寝汗はかきます。夏だけでなく、冬場にエアコンをつけて寝る場合や電気毛布を使用して寝る場合にも、暑すぎて寝汗をかくことがあります。
- 何年も続く慢性的な寝汗と異なり、新たに発症した寝汗は鑑別すべき原因が多数あります。中でも内臓の悪性疾患の初期症状の可能性もあるため、温度調節の失敗が原因ではないと考えられる場合は医療機関での相談が必要となります。
どんな症状?
- 寝汗とは、夜寝ている時に全身にひどく汗をかく症状のことです。「寝汗がひどい」というのは、「寝ている時の服がびしょびしょに濡れて着替えなければならないほどひどい」状態を指します。
- 寝汗は、温かい部屋で寝れば、大人も子供も同じく誰でも起こしうる症状です。電気毛布の使用や、重ね着して寝て起こることもよくあります。
「寝汗」に似ている「多汗症」とは?
- 「多汗症」とは、昼夜関係なく、また目覚めていても汗が多い病気です。
- 特に「局所性多汗症」は、わき、手のひら、足の裏に汗が出るので、全身に汗が出る「寝汗」とは区別されます。それぞれ、原因や治療法が異なります。
「寝汗」に似ている「のぼせ」「ほてり」とは?
- 「のぼせ」「ほてり」とは、胸やお腹の違和感に続いて、暑さを感じ、数分すると汗が出てくるという症状です。
- 「のぼせ」や「ほてり」は、およそ50才前後の頃、閉経の近づいた更年期の女性が経験することが多いといわれています。
主な原因とその説明
- 寝汗の原因には、ストレス、アルコール、生理的発汗などが考えられます。何年も続いていて、他の症状や他の病気がない場合は、命に関わることは少ないです。
- しかし、新たに出た場合や他の症状がある場合は、大きな病気の初期の症状ではないか区別する必要があります。区別すべき病気として代表的なものを下記に挙げます。
悪性腫瘍(リンパ腫、固形癌)
- 悪性リンパ腫は、血液やリンパの癌の一種です。寝汗が初期の症状となることがあります。特に、ホジキンリンパ腫という病気では、25%に微熱を伴う寝汗がみられることが知られています。
- 固形癌は、臓器や皮膚にできる癌のことです。特に前立腺癌、腎細胞癌、胚細胞腫瘍、甲状腺髄様癌は寝汗を起こすことがあります。
インスリノーマ
- インスリノーマは、血糖を下げる作用のあるインスリンを分泌する腫瘍です。お腹が空く夜にインスリンが出過ぎてしまい、低血糖を起こし、汗をかきます。
感染症(結核、ブルセラ症、細菌感染症、HIV感染)
- 結核は、結核菌という菌が主に肺などの臓器に感染しておきる病気です。
- ブルセラ症は、動物を飼っている人や、動物の生の乳を飲む人がうつることのある病気です。
- 細菌感染症は、発熱や、体のある部分の痛みなどを伴うことが多く、寝汗だけの症状であることは少ないです。
- 新規のHIV感染には、寝汗の症状がでることが多いといわれています。
薬剤性(抗うつ薬、解熱鎮痛薬など)
- 多くのお薬が寝汗の原因となることが知られているので、飲んでいるお薬を詳しく確認することが必要です。
- 特に、うつ病の治療などに使われる抗うつ薬は、寝汗の原因になることがしられています。飲み始めて数週間で10~15%にみられるという報告があります。
内分泌疾患(褐色細胞腫、カルチノイド症候群、甲状腺機能亢進症)
- 褐色細胞腫は、高血圧の原因になるホルモンを産生する腫瘍です。
- カルチノイド症候群は、カルチノイド腫瘍という、セロトニンなどの物質を出す腫瘍の病気に出る症状のことです。のぼせ、ほてり、下痢を伴うことが知られています。
- 甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンが出過ぎてしまう病気で、汗がだらだらと出ます。他に、頻脈や体重減少などの症状を伴うことが多く、血液検査で判定することができます。
寝汗に対して、よくなるために自分でできることは?
- 寝汗そのものを治す方法は残念ながらありません。
- 寝汗をよくするために、原因となる生活習慣を正してみてください。
寝汗をよくするためにできること
- パジャマと布団の調節、寝室の温度の調節:ずっと続いていない寝汗の場合は、寝ている環境に問題があることが多いため見直してみてください。
- アルコールの量を減らす、やめる:お酒を飲むと寝汗をかくタイプの方には有効です。
- お薬の必要性をもう一度考える:かかりつけ医師やかかりつけ薬剤師に、今飲んでいるお薬の副作用の可能性がないかご相談ください。
こんな症状があったらかかりつけ医を受診しましょう
- 以下のような症状があるときは、かかりつけ医にご相談ください。
病院に行くべき症状
- 涼しい場所で寝ているはずなのに、パジャマや布団が濡れるくらいの寝汗をかくことが続く場合
- 発熱や、咳、下痢などがある場合
- 原因の思い当たらない体重減少がある場合
お医者さんでおこなわれること
- 病院では、問診と診察、必要に応じて検査(血液検査やレントゲン検査)を行います。
- 問診では、以下のようなことが聞かれるので、準備していくと良いです。
問診での確認事項
- 更年期の症状(のぼせ、ほてり)はないか
- 「不安」などはないか
- お薬をなにか飲んでいないか(抗うつ薬、鎮痛薬など)
- 低血糖はないか
- アルコール摂取量や、違法薬物の使用がないか
- 一日中汗が多いか
もっと知りたい!寝汗のこと
どんな病気のことが考えられる?
- 寝汗の原因には以下のような病気が挙げられます。
- 発熱性の病気、感染症:寝汗の他に、熱、体がだるい、咳、血液検査での白血球が多くなっていることがみられたら、発熱性の病気、HIV感染や敗血症などを含めた感染症を疑います。自然に治ることのない病気が多いため、病院を受診してください。
- ホルモンや代謝の異常がある病気:糖尿病、痛風、甲状腺機能亢進症、末端肥大症などが疑われることがあります。診断のために詳しい血液検査を必要とするので、病院を受診してください。
- 生理的発汗:運動時、衣服の重ね着をしたとき、更年期では、正常の体の反応で汗が出ます。
- 薬剤性:プロプラノロール、フィゾスチグミン、三環系抗うつ薬、ベンラファキシン、制吐薬、麻薬鎮痛薬などのお薬には、副作用として汗をかくことがあります。病院や薬局でご相談ください。
- 悪性腫瘍:胸部や脳の腫瘍、褐色細胞腫、カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫などでも寝汗が出ることがあります。詳しい画像検査を必要とするので、病院を受診してください。
- 味覚性発汗(辛いものや熱いものを食べたときに口の周りにおきる一部分の発汗):Frey症候群(頭と首の手術をしたことがあるかの確認)、糖尿病性の神経障害、顔の帯状疱疹にかかった、耳下腺腫瘍にかかったことが原因になりえます。
- 脊髄の損傷があるときの自律神経過反射:第5、6胸髄より上の脊髄の損傷がある場合に起こりえます。
- 狭心症:心臓の血管が一時的に詰まる狭心症の発作時におきる冷や汗です。速やかに医療機関での診察と治療を受ける必要があります。
- 慢性のアルコール中毒
- 結核:まだ感染力がある結核にかかると、発熱に伴って発汗することがあります。病院での診察と治療を受けましょう。
- 脳卒中による体半分の麻痺
「寝汗」と「一次性多汗症」を見極めるには?
- 「寝汗」と「一次性多汗症」とは簡単には鑑別できないことも多く、以下に挙げるような原因がないかを想定しながら丁寧に問診していく必要があります。
問診のポイント
- 汗が出る期間と頻度
- 汗が出るきっかけとなるもの
- 汗の量(しぼれる位か?)
- 寝ている間に汗をかくか
- どこが汗をかくか
- いつから症状が出るようになったか
- 家族に同じ症状の方はいるか
- お酒はどのぐらい飲むか、違法薬物を使っていないか
- 他の症状はないか(熱、体重減少、動悸、食欲低下、胸の痛み、関節の痛み、咳)
身体診察のポイント
- 表在リンパ節が腫れてないか
- 脈が早いか
- 呼吸が早いか
- 体温が高くなっていないか
- ある部分だけ汗をかいていることはないか
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- Night sweats.(https://www.nhs.uk/conditions/night-sweats/)
- 多汗症(MSDマニュアルプロフェッショナル版)(https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%8A%E3%83%AB/14-%E7%9A%AE%E8%86%9A%E7%96%BE%E6%82%A3/%E7%99%BA%E6%B1%97%E9%9A%9C%E5%AE%B3/%E5%A4%9A%E6%B1%97%E7%97%87#v963349_ja )(最終アクセス 2019年7月16日)
- Approach to the patient with night sweats. IN Uptodate(https://www.uptodate.com/contents/approach-to-the-patient-with-night-sweats) (最終アクセス2019年7月21日)