多発性筋炎/皮膚筋炎:どんな病気? 検査や治療は? 完治できるの?
更新日:2020/11/11
- 膠原病リウマチ専門医の川口 鎮司と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかすると「自分が多発性筋炎/皮膚筋炎になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- 多発性筋炎とは、骨格筋を中心に炎症が生じ、筋肉が壊死を起こす病気です。
- 皮膚筋炎は、多発性筋炎と同様に筋肉の病気で、それだけでなく、皮膚に症状がでる病気です。
- 多発性筋炎も皮膚筋炎も、自分の組織に対して自分の外部から入ってきたもの(異物)であるととらえて排斥しようと攻撃してしまう膠原病と呼ばれる病気のひとつです。
- 治療には、副腎皮質ステロイドというお薬が使われます。
- 多発性筋炎、皮膚筋炎は指定難病であり、自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われることがあります。
筋炎とはどんな病気?
- 筋炎はかなりめずらしい病気で、日本では、多発性筋炎と皮膚筋炎を合わせて、2万5000人程度の患者さんがいらっしゃると推定されています。
- 男女比は、1:3でやや女性に多いとされています。
- いずれも指定難病であり、自己負担分の治療費の一部または全部が国または自治体により賄われることがあります。
多発性筋炎とは
- 多発性筋炎とは、手足などを動かす筋肉である骨格筋を中心に炎症が生じ、筋肉が壊死を起こしてしまう膠原病【こうげんびょう】と呼ばれる病気のひとつです。
- 膠原病とは、自分の組織に対して自分の外部から入ってきたもの(異物)であると感違いして排斥しようと攻撃してしまう病気で、こうした作用を自己免疫反応といいます。
- 多発性筋炎では、ほかの膠原病と同じく、原因は不明ですが、骨格筋に対しての自己免疫反応が起こっているようです。
- 患者さんが気づくきっかけは筋力の低下で、次のようことが起こります。
患者さんが筋力の低下を気づく症状
- 階段の上りがつらくなる
- 起床時にスムーズに起き上がれない
- ふとももの筋肉の痛みが生じる
皮膚筋炎とは
- 皮膚筋炎とは、多発性筋炎と同様に筋肉の病気ですが、それだけでなく、皮膚に症状がでる病気です。
- 手の指や顔、ときには肘や膝に赤い皮疹【ひしん】(皮膚にでる発疹【ほっしん】、ぶつぶつ)がでたり、上まぶたが腫れぼったくなり、紫色っぽい皮疹がでることがあります。
- この病気も膠原病のひとつで、原因は不明ですが、多くは皮膚に症状がでることで気づかれます。関節の痛みで気づかれることもあります。
筋力低下で心配なとき、どの科のお医者さんに行ったらいいの?
- 筋力の低下にはいろいろな原因があり、脳梗塞や神経の病気も含まれますが、皮膚の症状がなければ、内科を受診するとよいと思います。
- 検査を受けて多発性筋炎が疑われたときは、専門医である膠原病内科を受診してください。
- 皮膚の症状がある場合は、湿疹【しっしん】や皮膚の病気ではないかの診断が必要ですので、皮膚科を受診されることが必要です。
- 皮膚科医の診断にて皮膚筋炎が疑われたときはやはり、膠原病内科を受診してください。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- お医者さんでは次のような検査が行われます。
- 筋力の低下があるかどうかを診察します。
- 血液検査で、筋肉が壊れることにより生じるクレアチニンキナーゼ、アルドラーゼなどという筋肉由来の物質が血液の中に含まれていないか調べます。
- 膠原病のひとつですので、血液検査で、自分の細胞や組織に対する抗体(「自己抗体」といいます)が血液中に現れていないか血液検査で調べます。
- 抗体とはもともと、からだの中に入ってきた特定の異物【いぶつ】に、それぞれ反応するようにつくられる物質です。
コラム:現在病院で測定できる抗体
- 抗Jo-1抗体
- 抗ARS抗体
- 抗Mi-2抗体
- 抗MDA5抗体
- 抗TIF-γ抗体
どんな治療があるの?
- 治療には、副腎皮質ステロイドというお薬が使われます。
筋炎にはどんな合併症があるの?
- 筋炎の患者さんでは、肺にも炎症を起こす人がいます。
- 間質性肺炎とよばれ、咳や息切れなどの症状が現れます。
- 間質性肺炎の診断には、胸部レントゲン検査のほか、胸部CT検査が必要です。
- 間質性肺炎がある場合には、副腎皮質ステロイドだけでなく、免疫抑制薬をあわせて使うことが推奨されています。
- 筋炎では、心臓の筋肉にも炎症を起こすことがあります。
- 心筋炎と呼ばれますが、血液検査や心電図、心臓超音波検査で詳しく調べます。