低血圧:どんな病気? 原因は? 症状は? 血圧が低すぎると危険なの? 治療はあるの?
更新日:2020/11/11
- 総合内科専門医(循環器・腎・呼吸器・神経内科)の長谷部 直幸と申します。
- このページに来ていただいた方は、ご自身が低血圧であるということで、「何か よくない原因があるのかもしれない」と不安を感じておられるのかもしれません。
- 過去に一度でも低血圧を心配された方は、ぜひこのページをご覧いただきたいと 思います。
- 低血圧について「よく質問を受けること」「知っておいてほしいこと」をまとめました。
まとめ
- もともと「低血圧はうらやましい体質」で、過剰に不安になる必要はありません。
- 血圧が低いだけでは病気ではなく、同時になんらかの困った症状があるときが問題です。
- 低血圧には、原因のないものと、ほかの病気などによって起こるものがあります。
- 低血圧の症状には、めまい、立ちくらみ、頭が重く感じる、倦怠感などがあります。
- 寝ている、あるいは座っている状態から急に立ち上がったときに一時的に血圧が低下する、 起立性低血圧というものもあります。
低血圧とはどんな状態なの?
- 低血圧とは文字どおり血圧が低い状態を指しますが、はっきりした基準はありません。
- 一般的には収縮期血圧(俗にいう「上の血圧」)が100 mmHgを下回る状態で なんらかの困った症状がある場合を指し、拡張期血圧(「下の血圧」)は通常問題に しません。
- 体位によって一時的に血圧が低下するものとして起立性低血圧があり、寝ている、 あるいは座っている状態から急に立ち上がったときに起こります。
血圧が低いのは病気ですか?
- 血圧の数値が低い、というだけでは病気ではありません。
- 多くは「血圧が低めの体質である」というだけで、数値をみて病気だと悩んだり不安に なる必要はありません。
- 血圧が低いことはむしろうらやましい体質なのです。あくまでも同時になんらかの 困った症状がある場合が問題となります。
高血圧と低血圧ではどちらが悪い?
- 高血圧のほうが圧倒的に問題です。血圧が高いとそのまま心臓や血管の負担になり、 脳や心臓や腎臓の障害をもたらします。
- 低い血圧では、心臓や血管の負担は少なく、長持ちする可能性が高いです。 そのため、基本的にはよい体質といえます。
低血圧にはどんな原因があるの?
- 低血圧には、次の2つがあります。
2つの低血圧
- 本態性低血圧:原因のない低血圧です。
- 二次性低血圧:原因が明らかな低血圧で、血液を全身に送りだす量が少なくなる 心臓の病気、循環する血液の量が少なくなるようなからだの状態、血圧を低下させる 薬物の影響などで起こります。
低血圧だとどんな症状があるの?
- 低血圧では次のような症状が現れます。
低血圧の症状
- めまい
- 立ちくらみ
- 頭が重く感じる
- 倦怠感
- ひどい立ちくらみによる失神(※立ち上がった時に血圧が低下する起立性低血圧)
起立性低血圧って何?
起立性低血圧はなぜ起こるの?
- 立ち上がると血液は重力で下半身に移動します。すると、心臓に戻る血液の量が少なく なるため、心臓から送り出される量が減って血圧が下がります。
- 健常人では、急に血圧が下がっても、自律神経(無意識にからだの働きなどを調節 する仕組み)のはたらきで反射的に血圧を戻します。
- この調節がうまくいかない場合、血圧は下がったままになり起立性低血圧を生じます。
どれくらい下がると起立性低血圧になるの?
- あお向けに寝た状態から、立ち上がって3分以内に収縮期血圧が20 mmHg以上 下がる場合を起立性低血圧といいます。
- めまい、立ちくらみ、脱力感、失神などは、主として脳血流の低下によって生じます。
どんなときに起立性低血圧は起こるの?
- 起立性低血圧は、立ったときに血圧を調節する機能がうまく働かないときに起こります。
- 次のような人では、起立性低血圧が起こりやすくなります。
起立性低血圧が起こりやすい人
- ご高齢の方
- 慢性透析を受けている患者さん
- 血圧を下げるお薬を飲んでいる方
- 糖尿病で末梢神経障害のある方
- 血圧調節中枢の脳の病気がある方:高度の起立性低血圧が生じることがあります。
二次性低血圧にはどんなものがあるの?
- 二次性低血圧の原因となる病気には、次のようなものがあります。
二次性低血圧の原因となる病気
- 送り出す血液の量が減少する心臓の病気:大動脈弁狭窄症、収縮性心膜炎など
- 循環する血液の量が少なくなるような状態:副腎機能低下症、甲状腺機能低下症、 出血・熱傷(やけど)・嘔吐・下痢などによる脱水など
- 薬物の影響:血圧を下げるお薬、抗うつ薬、向精神薬など
どんな治療があるの?
- 低血圧をよくするためには生活習慣のリズムを整えることが基本です。
- 弾性ストッキングの着用なども有効です。
- 明らかな原因や誘因がある場合は、それを取り除くことが必要です。
- お薬の影響による場合は、そのお薬をやめる、変えることが必要です。
- これらの対策をしても症状が続いて生活に支障がある場合には、血圧を維持するお薬を 使います。
- 下記のように、低血圧にならない上手な生活習慣を身につけることも有効です。
低血圧に対処する上手な生活習慣
- 十分な睡眠、規則正しい食事・排便の習慣、適度な運動の励行など、生活習慣の リズムを整える。
- 暑いときには、脱水を避ける。
- 食後や入浴、飲酒時など血圧が低下しやすいときは、ゆっくりとあるいは段階を踏んで 体位変換する習慣を身につける。