水腎症:どんな病気?起こりやすい人は?痛みはあるの?検査や治療は?
更新日:2020/11/11
- 泌尿器科専門医の新美 文彩と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が水腎症になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
水腎症は、どんな病気?
- 水腎症とは、おしっこの通り道が何らかの原因で狭くなることで、おしっこの流れが悪くなり、うまく流れないおしっこが腎臓にたまってしまう状態です。
- 急に水腎症になると背中や脇腹に強い痛みが生じます。
- 徐々に水腎症になった場合は症状がないことも多く、健康診断やその他の病気の検査で偶然に見つかることも多いです。
水腎症と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 下記のような症状がある場合は、病院にご相談ください。また、健康診断などですでに「水腎症」の疑いがあると言われた場合には、早めに泌尿器科のある病院を受診してください。
かかりつけ医に相談していただきたい場合
- 右か左どちらかに片寄った背中の痛みがある場合
- おしっこが濁っている場合
- おしっこが近い場合
- おしっこがうまく出せずに、お腹の下のあたりが張って辛い感じがある場合
救急外来に相談していただきたい場合
- 背中や脇腹の強い痛みを認める場合
- 38℃以上の熱がある場合
- 鼻水や咳などのかぜの症状がないのに、急にガタガタ震えて寒気がして熱っぽくなった場合
水腎症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 水腎症になる原因はいろいろあるので、どんな人になりやすいかというのは、一言でお答えすることができません。
- 水腎症は、おしっこの通り道が何らかの原因で狭くなり、おしっこの流れが悪くなりことで起こります。おしっこの流れが悪くなる原因として、生まれつき問題がある場合と成長してから起きる場合があります。
生まれつきの問題
- お手数ですが、小児科の項目をご覧ください。
成長してから起きる問題
- 何らかの原因で尿管(にょうかん;おしっこを腎臓から膀胱まで運ぶ管)が狭くなったり、お腹の中の血管が尿管を押しつぶし狭くなってしまうことがあります。
- 尿路結石(おしっこの通り道にできる石)や癌によって、おしっこの通り道が塞がれてしまうことがあります。
- 前立腺肥大症や低活動膀胱などでは、膀胱からおしっこをうまく外に出すことができないため、膀胱の中に大量のおしっこが溜まり、最終的に腎臓まで溜まったしまうことがあります。
- 妊娠するとお腹の中の赤ちゃんがおしっこの通り道を押しつぶし、狭くしてしまうことがありますが、赤ちゃんが生まれると元に戻るので心配する必要はありません。
どんな症状がでるの?
- 急に水腎症になった場合、下記のような症状が出ることがあります。徐々に水腎症になった場合は、全く症状が出ないこともあります。
急に水腎症になった場合
- 急に熱が出た
- 背中が痛い(左右どちらかに片寄っている事が多い)
- 全身がだるい
- 脇腹やお腹の下あたりが痛い
- 吐き気
- おしっこに血が混じっている
- おしっこが近い
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 尿検査でおしっこの中に血、ばい菌、異常な細胞が混じっていないかを確認します。
- 超音波検査、CT検査、MRI検査で画像から腎臓、尿管、膀胱などのおしっこの通り道を邪魔する結石や癌がないか確認します。
- 採血や採尿で、腎臓の機能が落ちていないか、癌があることを意味する物質の量が増えていないかを確認します。
- 水腎症とその原因が明らかになった場合は、水腎症によりどの程度腎臓の機能が落ちているか画像で確認します。
- 膀胱結石や膀胱癌の可能性がある場合は、膀胱鏡検査で尿道や膀胱内に病気がないかどうか確認します。おしっこの出口から細い内視鏡(カメラ)を入れるので、多少の違和感を伴いますが、通常5分程度で終わります。日帰りでできる検査です。
- 逆行性尿路造影といって、膀胱の中に内視鏡を入れ、おしっこの方向と逆向きに細い管を進め、おしっこの通り道の狭い部分の距離や程度を確認することがあります。ここからおしっこを取ったり、造影剤を使って病変を見やすくします。この検査は入院が必要です。
どんな治療があるの?
- 水腎症と診断された場合、その原因によって治療法が大きく変わります。
尿管狭窄や腎盂尿管移行部狭窄症の場合
- 水腎症による症状や腎機能の低下が強い場合は、尿管狭窄拡張術や腎盂形成術などの手術が必要になります。
腎結石・尿管結石の場合
- 結石を砕く手術が必要になります。
尿路の癌(腎癌、尿管癌、膀胱癌)の場合
- 癌の治療を行うことが必要です。手術により癌を取り除くことが必要です。
尿閉(おしっこが全く出なくなってしまう)に伴う両側水腎症の場合
- 膀胱からうまくおしっこを体外に出せないことを「尿閉」といいますが、この状態が非常に悪化し、膀胱の中に尿が大量に溜まると、尿管や腎臓の近くまで尿があふれかえり、水腎症となります。この場合はすぐに尿道カテーテルという管をおしっこの穴から入れて、尿を体の外に出す必要があります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 水腎症の検査や治療を受けたあと、おしっこに血が混じったり、おしっこを出すときに違和感があるなどの症状が、1週間から長いと数か月程度続くことがあります。
予防のためにできることは?
- 水腎症は他の人にうつる病気ではありません。また、予防のためにできることは残念ながらありません。
- 水腎症は早いうちに見つけて原因を突き止め、適切な治療をなるべく早く始めることが重要です。健康診断や人間ドックで定期的に腎臓の超音波検査を受けていただくことで、早期発見、早期治療につながります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 水腎症の原因は様々ですが、多くの場合は手術により原因を取り除くことで治ります。
もっと知りたい! 水腎症
日常活動への影響
- 水腎症による背中の痛みは鈍くて弱い痛みであることがほとんどですが、結石による急激に尿管が塞がってしまい、いっきに水腎症となった場合は、強い痛みを感じることも少なくありません。強い痛みがある場合は、すぐに救急病院にご相談ください。
- また、腎盂腎炎などの感染症も一緒にかかってしまうことがあります。38℃以上の熱が出た場合は、腎盂腎炎を引き起こしている可能性が高いので、仕事などは休んで病院になるべく早くご相談ください。