心エコー:どんな検査?検査を受けるべき人は?検査内容や代替手段、リスク、合併症は?
更新日:2020/11/11
- このページに来ていただいた方は、心臓に異常がある疑いまたはその心配があり、どのような検査があるのかについて知りたいと考えられているかもしれません。
- 代表的な検査方法である心エコー検査について理解する上で役に立つ情報をまとめました。
- 私たちが日々の診療の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- 心エコー検査は超音波を使って、心臓の形や動きを見ることによって、心臓の機能を評価する検査です。
- 血流の評価も行い、心臓内部の弁などの異常が無いかどうかを確認したり、心臓にどれくらい負担がかかっているかを評価することもできます。
- 体の表面に超音波のゼリーをつけて、専用のプローベをあてて検査をします。
- 検査は外来でも行え、検査時間は30分から1時間程度です。
- 運動や薬物投与を行いながら心臓の動きなどに変化が出るかどうかを見る特殊な検査方法もあります。
心エコー検査とはどんな検査?
- 心エコー検査は超音波を用いて、体の表面から心臓の形や動きなどを見る検査です。
- 心臓は4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)に分かれていて、肺で酸素が取り込まれた血液を全身に送り出す働きをしています。
- 体に血液を送りだすポンプの役割をしている左心室の働きに異常がないかどうかや、心臓の病気があるかどうかを見るためには心エコー検査は重要です。
- 左心室の大きさ、壁の厚さ、どれくらい収縮することができるかなどを評価します。
- 心臓の部屋と部屋を区切る扉のような機能をしているのが、弁とよばれる構造です。
- 心エコー検査では、血流の流れを見ることができるため、弁の入口が狭くなったり、上手く閉じなくなって血液が逆流していないかを評価することができます。
コラム:左室駆出率の評価
- 左心室の収縮は左室駆出率(EF)とよばれ、心臓の機能を示す重要な指標の一つです。
- EFの正常値は、55~70%とされています。
検査を受けるべき人は?
- 心エコー検査は患者さんにかかる負担がほとんどない検査です。下記のような人が対象となります。
検査を受ける人
- 心臓の異常が疑われた場合
- 治療効果を評価する場合
- 心臓の病気が指摘されている患者さんの経過をみる場合
- 心臓に影響するような抗がん剤による治療を受けている場合
- 以前の検査と比べることで、心臓の状態が悪くなっていないかや、心臓に負担がかかっているかどうかも分かります。
- 心臓に影響するような抗がん剤による治療を受けている患者さんでは、異常を早期に検出するために心エコー検査を行う必要があります。
コラム:がん治療との関連
- 治療前と治療中にエコー検査を行って、左心室機能の悪化が無いかを観察します。
- 早期に治療を開始するために、定期的に繰り返し検査をする必要があります。
検査の内容は?
- 画像をよく見るため、検査は暗くしたエコー専用の検査室で行います。
- 検査室のベッドに左側を下にして横になってもらい、胸の前側から左側や、みぞおちのあたりにゼリーをつけて検査用のプローベをあてます。
- 画像を見やすくするために、体の向きを変えていただいたり、息を吸ったり・吐いたりしてもらいます。
- 検査中には心電図の情報も必要なため、胸や手・足に心電図の電極もつけて行います。
- 検査時間は30分から60分程度です。
検査当日の注意点
- 検査の際は胸が出るようにしていただくので、脱ぎ着がしやすい服装でお越しください。脱ぎづらい服装や、エコーのゼリーがついて困るような服装は避けていただいた方が無難です。
- 通常の心エコー検査であれば、食事などの制限は特にありません。
特殊な心エコー検査
- 心エコー検査の中には、経食道心エコー検査や負荷心エコー検査と呼ばれる特殊なものもあります。
経食道心エコー検査
- 胃カメラの検査で用いる内視鏡のようなエコーの器具を口から食道のあたりまで入れて、食道から心臓を見るエコーです。
- 鼻から検査を行うことはできず、必ず口から検査を行います。
- 弁膜症の治療前や不整脈の患者さんで心臓の中に血の塊ができていないかを確認するなど、くわしく心臓の中を見る必要があるときに行います。
- 食道は心臓の真後ろにあるため、体の表面からではわからないような詳細な評価が可能となります。
- 胃カメラの時と同様に喉の麻酔を行ってから検査を行います。喉の麻酔だけでは検査が難しい患者さんの場合には、鎮静薬を点滴から投与して眠っていただいた状態で検査を行う場合もあります。
- 検査の際の注意点は、以下の通りです。
検査の際の注意点
- 検査の前6時間は食事をとれません。
- 鎮静薬によって眠った状態で検査を行った場合は、検査の後に目がしっかり覚めるまで休んでいただいてから帰っていただくことになります。
- 事故につながる危険性があるため、検査当日はご自身で車を運転して来院しないでください。
- 喉の麻酔が切れるまで、検査後1時間は飲食を行わないでください。
負荷心エコー検査
- 負荷心エコー検査とは心臓を運動している状態にして、心臓に異常がないかを調べる検査です。
- 安静にしている状態では心臓の異常がはっきりしない場合があります。
- 心臓に血液を送っている冠動脈に異常が生じる虚血性心疾患や特定の弁膜症で行います。
- 負荷をかける方法は、運動(トレッドミルの上を走ってもらったり、自転車をこいでもらったり)により行う場合と、点滴から薬剤を使って行う場合の二通りあります。
リスク、合併症は?
- 超音波を用いる検査のため、体に害は生じない検査です。
- 画像の見え方によっては、エコーのプローベを強くあてる必要がある場合もあり、その場合には痛みを生じる可能性もあります。
- 経食道心エコー検査や負荷心エコー検査などの特殊な心エコー検査では、それぞれ特有の合併症のリスクがあります。
- 経食道心エコー検査では喉や食道などを傷つけて出血してしまったり、検査中に吐いてしまったりした場合には肺に影響が出る可能性もあります。
- 負荷心エコー検査で薬剤を使用する場合はアレルギーや薬剤による副作用の可能性もあります。
検査を行うのはどのような人?
- 医師、臨床検査技師、放射線技師、看護師は心エコーを行うことが法律で認められています。
- 心エコーは心臓病の知識と熟練した技術が必要な専門性の高い検査で、日本超音波医学会は厳しい認定制度によって専門医・技師を選抜しています。
- 女性の患者さんの中には女性検査者を希望されるケースもありますが、性別を問わず熟練者が検査にあたる必要がある場合があります。
- 施設によっては、検査の質を上げるために複数の検査者が検査にあたる場合もあります。