ジフテリア:どんな病気?どうやって感染するの?予防接種の効果は?
更新日:2020/11/11
- こんにちは、日本感染症学会専門医、国際渡航医学会認定医の武藤 義和と申します。
- このページに来ていただいたかたは、ジフテリアってなんだろう?今の症状は自分が、家族が、周りの人がジフテリアになってしまったのかも?と思って不安になられているのかもしれません。
- 現在日本ではジフテリアの患者さんが発生することはほとんどないがゆえに情報が少ない中で、最新の海外の文献などからジフテリアの情報を可能な限りまとめております。
- ジフテリアに対してご心配をされていたり、病気のことを知りたいと思っている方に少しでもお役に立てればと思っております。
目次
まとめ
- ジフテリアは喉が腫れて呼吸ができなくなったり、不整脈を起こすことがある病気です。
- 主に5歳以下の子供によく報告されます。
- 症状は強い咳や発熱、のどの痛みのような症状に加えて皮膚のただれが出ることもあります。
- 日本ではワクチンのおかげで極めて稀な病気ですが、正しい治療をしないと命にかかわることもあります。
- ワクチンを打っていない小さい子に疑われる症状があれば、すぐに病院を受診して相談しましょう。
ジフテリアは、どんな病気?
- ジフテリアとはジフテリア菌(corynebacterium diphtheriae)による感染症で、喉が腫れて呼吸ができなくなったり、不整脈を起こすことがある病気です。
- 主に5歳以下の子供が発症することが多く、感染すると風邪の症状のように発熱、喉の痛み、咳などが出ます。
- 重症例では嚥下困難や呼吸困難となり、場合によっては命に関わります。
- 適切な診断と治療が重要になります。
コラム:ワクチンが導入される前のジフテリアの発生状況
- 日本ではワクチンが導入されてからはほとんど見ることがなくなりましたが、導入されるまでは年間に10,000人以上の発生がありました。
ジフテリアと思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 下記のような場合は医療機関の受診を検討してください。
医療機関の受診がおすすめな場合
- 急な発熱、喉の痛み、咳、唾が飲み込みにくいなどの風邪に似た症状に加え、扁桃腺にびっしりと白い苔のようなものがある場合
- ワクチンを打っていないような小さな子どもが症状を発症した場合
ジフテリアになりやすいのはどんな人?原因は?
- ジフテリアになりやすい人は下記のような人です。
ジフテリアになりやすい人
- 免疫が弱い人
- 土いじりをする人
- ジフテリア菌は環境中に存在しており、菌を吸入して感染します。
- ほとんどは5歳以下の子供が感染します。
- ワクチンを接種していない場合、無症状でも菌を持っている人もいるため、海外ではそうした人の咳やくしゃみからうつるという報告もあります。
コラム:ジフテリアワクチンの効果
- ワクチンのない時代は年間に10,000人以上の発生があり、死亡のトップ3に入っていました。
- ワクチンが導入されてから、国内では年間20件くらいの報告があるのみです。
- 基本的にワクチンを接種している人が発症することはありませんが、世界ではワクチンのない国も多く、年間7000人くらいの患者さんの発生があります。
どんな症状がでるの?
- ジフテリアにかかった場合、感染から発症まで3-5日間程度の潜伏期間をおいて、下記のような症状が出ます。
ジフテリアの症状
- 倦怠感
- 発熱
- 咳
- 喉の痛み
- 頭痛
- 飲み込みにくさ
- 扁桃腺が腫れる
- 呼吸困難
- 喉の奥に白いもの(白苔)が付着する。
- 声が枯れる
- 呼吸音が詰まったようになる。
- 頻脈
- 不整脈
- 皮膚潰瘍
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- ジフテリアを疑った場合、患者さんの喉の奥を綿棒でこすって、喉に菌がいないかを調べます(検査培養検査といいます)。
どんな治療があるの?
- ジフテリアと診断された場合、喉が腫れて呼吸ができなくなったり、不整脈を起こすことがあるため、入院することになります。
- 治療は薬物治療となります。抗毒素という薬と抗生物質の点滴や内服を行います。
- 重症化して呼吸ができなくなったり、不整脈になってしまうようなことがあれば、集中治療室での人工呼吸器による治療が必要となることもあります。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- ジフテリアの治療の要である抗毒素はウマの血液から作っているため、アレルギーが出てしまうことがあります。
- アレルギーの症状は様々で、軽い皮膚の赤みのようなものから肝臓の障害、腎臓の障害など、また極めて稀ですが呼吸ができなくなってしまうようなものもあります。
- 治療終了後はまだ菌が残っていることがあるので、喉の培養の検査で菌が消失したと言われるまでは可能な限り他の人との接触、特にワクチンを打っていない小さな子との接触は避けましょう。
- 患者さんの家族などのように濃厚な接触がある方は、早期に予防的に抗生物質やワクチンを使用することで発症を予防できると言われています。
うつるの?自分の予防のためにできることは?
- 感染後数週間は感染した人の咳や痰から他の人にうつるとされています。
- 皮膚に感染の症状があれば、そこを触れたときにもうつることがあるとされています。
- 感染している方は出来るだけ他人との接触を避けて、マスクをしっかりして菌を撒き散らさないようにする必要があります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 適切な治療を行えば後遺症もなく完治する病気です。
- 治療期間はおよそ14日間程度と言われています。
- ただし、抗毒素はどの病院にもあるわけではなく、日本ではジフテリアはもうほとんど見ることのない病気のため、経験のある医師がほぼいない状況です。
追加の情報を手に入れるには?
- ジフテリアの病気に関しては下記のページに詳細が記載してあります。
- https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/411-diphteria-intro.html
- また、ジフテリアは日本ではほとんど見ることがないですが、世界では時々集団発生するようなことがあります。下記のページでは世界の感染症の集団発生について情報提供をしておりますのでご参照ください。
- https://www.forth.go.jp/index.html
もっと知りたい! ジフテリア
ジフテリアワクチンについて
- ジフテリアは3種混合ワクチンの導入により日本ではまず見ることがなくなりました。世界でもワクチンが登場してからはどんどん患者数も減ってきております。
- ただしアフリカや東南アジアなどの国々では、ワクチンを打てない子供たちがいるため、発生の報告が認められます。もしワクチンを打っておらずそのような国々へ行く機会があれば事前の積極的な接種が推奨されます。