咳:原因は?喘息ででる咳は?病院受診のタイミングは?咳止めの効果は?
更新日:2020/11/11
- 呼吸器内科を専門としている金子 猛と申します。
- とつぜん咳が出たり、ひどい咳が何日も続いたりすると、心配になりますよね。何か悪い病気ではないか?と心配されたり、「病院に行ったほうが良いかな?」と不安になったことはありませんか。
- そこでこのページでは、咳の原因や、対処法、医療機関を受診する際の目安などについて役に立つ情報をまとめました。
- 「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「正しく理解してほしいこと」について記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 咳は、もともと身体を守るための自然な反応です。空気の通り道である気道から、吸い込んでしまった小さなゴミや病原体などを分泌物と一緒に痰として外に吐き出す働きがあります。
- また、かぜなどの呼吸器感染症のほか、気道や肺の病気、耳鼻科、消化器、循環器の病気でも、咳が出ることもあります。
- 黄色や緑の痰がでる、熱が下がらない、2~3週間以上咳が長引いている場合は、医療機関を受診してください。
- 咳が出るときは咳エチケットを守りましょう。
咳はなぜ出るの?
- 咳はもともと身体を守るための自然な反応です。空気の通り道である気道から、吸い込んでしまった小さなゴミや病原体などを分泌物と一緒に痰として外に吐き出す働きがあります。
- しかしかぜをひいたりすると、気道に炎症が起きます。そうすると、普段は平気な少しの刺激でも、咳が出やすくなってしまいます。
咳にはどんな種類があるの?
- 咳には、痰がでる咳と、痰がでない咳があります。また、咳が続いている期間の長さで分類することもあります。
3週間くらいでおさまる咳
- かぜや気管支炎などのウイルス感染症が原因の咳が多いです。さらに長く咳が続く場合、感染症が原因の咳は少なくなります。
8週間以上治まらない咳
- 肺や気道の病気が原因のことが多いです。長期間の治療が必要になることもあります。
どんなときに病院やクリニックに行けばよいの?
- 次のようなときは医療機関を受診してください。
咳で病院を受診するタイミング
- 咳が2~3週間以上続いている:かぜや気管支炎などのウイルス感染症以外が原因の場合が増えてきます。
- 痰の色が白から黄色や緑に変化した、熱が下がらない:細菌感染をおこしている可能性があります。咳の期間が2~3週間以内でも受診してください。
- 息苦しさを感じる場合や、熱でもうろうとする場合、喉の近くで呼吸の音がする場合なども受診してください。
どんな病院やクリニックに行けばいいの?
- まずはかかりつけ医か内科を受診してください。
- 痰に血が混じるなど肺や気道の病気が疑われる場合は、呼吸器内科での治療が必要になることがあります。
- その他、鼻水や鼻づまりなどがあり原因として鼻炎・副鼻腔炎が疑われる場合は耳鼻科、胸やけや酸っぱい液体が上がってくる感じがあり原因として胃食道逆流症が疑われる場合は消化器科、心臓の病気の既往があり心不全が疑われる場合は、循環器科での治療が必要となることがあります。
咳の治療法は?
- 咳の治療の基本は、咳を生じる原因になっている病気を探し、その病気に対する治療を行うことです。原因となる病気がよくなれば、咳止め薬を使わなくても、咳もよくなります。
- 次のような場合で、ひどい咳のとき(食べた物を吐いてしまう、夜間目が覚める、会話が困難など)は咳の症状を軽くするために、咳止め薬を使うことがあります。
咳止め薬を使う場合
- かぜや気管支炎など、原因であるウイルスに対する治療法がない感染症の場合
- 肺や気道の病気で、その病気に対する治療法がない場合や治療の効果が不十分な場合
- なお、痰がでる咳の場合は、原則咳止め薬は使いません。咳が止まることにより、結果として痰のもとになる分泌物が気道にたまり、呼吸がうまくできなくなったり、息が苦しくなったりする可能性があるためです。この場合は、痰を出しやすくする薬(去痰剤または喀痰調整薬といいます)を使うことがあります。
咳止め薬ってどんな薬?
- 咳止め薬は、脳から出る「咳を出させる命令」を止める働きをもっているお薬です。咳の原因となっている病気を治すものではありません。麻薬が入ったもの(麻薬性)と入っていないもの(非麻薬性)があります。
- 麻薬性の咳止め薬のほうが、咳を止める効果は強いですが、そのぶん副作用も強くなります。麻薬性の咳止め薬の主な副作用には、便秘、眠くなる、吐き気がする、などがあります。
- なお、非麻薬性の咳止め薬のうち、最も使われているメジコン®では眠くなることがあり、「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること」が必要ですので、使用されるときにはご注意ください。
長引く咳の原因は?
- 8週間以上長引く咳は、次のような病気が原因になっていることが多いです。治療も長期間必要になります。長引く咳がある場合は、医療機関を受診して詳しく調べてもらってください。
長引く咳の原因として考えられる主な病気
- 肺や気道の病気:気管支喘息、咳喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎など
- 診断や治療が急がれる病気:肺癌、肺結核など
- その他の病気:耳鼻科(鼻炎・副鼻腔炎など)、消化器(胃食道逆流症など)、循環器(心不全など)の病気でも咳がでる可能性があります。
咳の状態で原因がわかりますか?
- 咳の仕方や咳の状態の違いで原因となる病気を診断することは、基本的にはできません。
- ただし、乳幼児の百日咳には特徴的な咳の発作があります。短い咳が連続的に起こり、続いて、息を吸う時に笛の音のような「ヒュー」という音が出ます。2~3週間の間、このような咳の発作をくり返します。
- 咳の状態に加えて、次のような情報があると参考になります。病院を受診される際には情報をまとめておかれるとよいです。
咳の診断の参考になる情報
- 咳が続いている期間はどのくらいですか?
- 痰は出ますか?痰の切れは良いですか?
- 痰の色や粘り気はどのようですか?
- 咳がよく出る時間帯はありますか?
- 咳が出るきっかけになることや、咳を軽くする方法はありますか?
- 熱はありますか?
- 咳のほかに症状はありますか?とくに、「息苦しさ」や「喉の近くで呼吸の音がする」「喉がかゆい」「鼻水や鼻づまり」「鼻汁が喉に落ちる」「胸やけやげっぷ」といったことはありませんか?
咳エチケットとは?
- かぜ、インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳などの感染症は、咳やくしゃみをすると原因のウイルスや細菌が飛び散り、それを吸い込んだ人に病気がうつってしまいます。
- 咳エチケットとは、これらの感染症を他の人にうつさないようにするための方法です。咳が出るときは、次のことを守っていただくことが大切です。
咳エチケット
- マスクをつけること
- 咳やくしゃみをするときにハンカチやティッシュペーパーで口と鼻を押さえること
- 咳やくしゃみをするときに何も持っていなければ、上着の内側や袖などを使って、口と鼻を押さえること
咳を他の人にうつさないために
- 肺や気道の感染症にかかった場合は、マスクの着用を心がけてください。電車や職場、学校など人が集まるところでは特に重要です。
- 家庭内では、看病する方や、同じ部屋で一緒に過ごしている方は感染しやすいのでマスク着用して下さい。なお、患者さんもマスクをつけて、できるだけ個室で過ごしていただくのが安全です。マスクをつけると息苦しいときは、はずして下さい。その場合は、家族との接触をできる限り少なくして下さい。
- 感染力の強いインフルエンザや百日咳と診断された場合、他の人にうつす可能性がある期間は外出や登校・出勤を控え、ご自宅で休んでいただくことが重要です。
コラム:インフルエンザ・百日咳の学校出席停止の期間
- 学校保健安全法による出席停止は、インフルエンザでは「発症した後五日を経過し、かつ、解熱した後二日を経過するまで」です。
- 百日咳では、「特有の咳が消失するまで、または、五日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで」とされています。
追加の情報を手に入れるには?
- 日本呼吸器学会発行の「咳嗽・喀痰の診療ガイドライン2019」に咳と痰の原因や治療に関する最新の情報が詳しく記載されています(医療従事者向け)。
さいごに
- 国民健康基礎調査調査(2019年)では、男性では、腰痛、肩こり、鼻がつまる・鼻汁が出るに次いで、「咳や痰が出る」と答えた人が多く、その割合は男性国民の約5%(20人に1人)でした。特に高齢者の男性では咳や痰の症状がある人の割合がより高くなっています。
- これら咳や痰を常に自覚している高齢者の多くは、喫煙習慣と関連した症状と考えられます。
- しかし、この中には、肺癌、肺結核等の重大な病気や長期間治療が必要となる病気が隠れており、長引く咳がある場合は、医療機関を受診して詳しく調べてもらってください。