意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症:どんな病気?治療は必要?
更新日:2020/11/11
- 血液内科専門医の得平 道英と申します。
- このページに来ていただいた方は、もしかするとご自身やご家族などが「意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症」と診断されたり、あるいは周りにそのような方がいて自分もなってしまうのでは、と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症とは、形質細胞という免疫に働く細胞が異常をきたし、主に一つの免疫グロブリンという免疫に働くタンパク質を作りだしてしまう病気です。
- ゆっくりと進行して、1年に1%くらいの割合で多発性骨髄腫という病気になります。
- 治療は必要ありませんが、血液の専門の医師に数ヶ月に一度診察を受けていただくことをおすすめします。
意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症は、どんな病気?
- 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症とは、骨の中の骨髄にある形質細胞という免疫に働く細胞に異常が起きて、ゆっくりと悪くなり、1年に1%くらいの割合で多発性骨髄腫という病気になってしまう病気です。
- 基本的に症状はありません。
- 血液検査や尿検査で、一つの免疫グロブリンという免疫に働く物質が高い値になります。
- 貧血や骨、腎臓に異常が出てくると多発性骨髄腫という病気の診断になります。(多発性骨髄腫のページを確認してください)
どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?
- 基本的に症状はないので、血液検査や尿検査の異常で疑うことになります。
受診することになるケース
- 健康診断や血液検査で総タンパクやガンマーグロブリンが高いと言われた場合
- 健康診断や尿検査で尿タンパクが陽性と言われた場合
意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症は40歳以下ではまれであり、年をとるとともに増加します。
- 70歳以上では人口の5%以上が発症していると言われています。
- 男性に多い傾向にあります。
どんな症状がでるの?
- 基本的に症状はありません。
- 進行して多発性骨髄腫という病気になると、だるさや息切れなどの症状が出るようになります。多発性骨髄腫のページも参照してください。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 診断としては異常免疫グロブリンがあるかどうかの検査と、多発性骨髄腫になっていないかどうかの検査が重要になります。
- 異常免疫グロブリンの検査:血液と尿を採って、免疫電気泳動で確認を行います。フリーライトチェーンという検査でも異常を確認します。
- 多発性骨髄腫の検査:骨髄の検査をして、異常形質細胞の増加が一定数以上あると多発性骨髄腫が考えられます。
- また、貧血、骨、腎臓などの臓器に問題があると多発性骨髄腫となるので、採血、レントゲン、PET検査(全身の写真を取る検査)などで確認を行います。
どんな治療があるの?
- 基本的に治療は不要です。
- 多発性骨髄腫に進行すると治療が始まります。
コラム:抗がん剤治療について
- 最近になって、多発性骨髄腫になる前に抗がん剤治療を始める試みが行われています。ただし、副作用のこともあり、これからの課題となっています。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 非常にゆっくりと進行する病気ですので、定期的に医師に診察してもらうことが大切です。
予防のためにできることは?
- なぜ意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症になるのかはよくわかっておりません。そのため、残念ながら予防方法はまだありません。
- 健康診断を定期的に受けていただき、総タンパクが増えていた場合や尿タンパクが出ていた場合などに医療機関を受診することが大切です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症はゆっくりと進行するため、残念ながら、現時点では治ることはないと考えられています。
- 抗がん剤を早期に行うことで治療する試みもあるので、今後その結果によっては、変わる可能性もあります。
追加の情報を手に入れるには?
- 下記のサイトから情報を得ることができます。
- 日本血液学会造血器腫瘍ガイドライン2018年度版
- http://www.jshem.or.jp/gui-hemali/3_1.html
- 日本の学会としては日本骨髄腫学会があります。
- http://www.jsm.gr.jp
- 多発性骨髄腫の患者さんの会もあります
- 日本骨髄腫患者の会
- http://myeloma.gr.jp/index.html
さいごに
- 免疫グロブリンがゆっくりと増えても、すぐに多発性骨髄腫となるわけではありません。多少の数値の変動にとらわれず、長い目で病気と向き合ってください。