歯の外傷:どんな治療があるの?応急処置の方法は?治療の費用は?
更新日:2020/11/11
- 東京医科大学病院 口腔外科専門医の近津 大地と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかするとご自分の歯が折れてしまって、どうしたらよいのかと不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- 歯の外傷には、歯が壊れる破折(歯折)と、歯周の部分のケガである脱臼があります。
- 怪我をして歯が抜けてしまった場合は、抜けてしまった歯をすぐに生理食塩水、牛乳、唾液につけて、歯科医に相談ください。再びくっつけられる可能性があります。
歯を怪我すると何が起こるの?
- 歯の外傷は、大きく歯自体が壊れる破折(歯折)と、歯周の部分のケガである脱臼に分けられます。また、歯を支える骨(歯槽骨)が折れてしまうこともあります。
- 破折(歯折):歯茎から出ている部分(歯冠部といいます)が折れている場合と、歯茎の下に隠れている部分(歯根部といいます)が折れている場合の2つに分けられます。
- 脱臼:歯根部の周りにあり、歯を支えている靭帯が傷ついている状態です。歯がぐらぐらしたり、抜けてしまったりします。
コラム:脱臼の分類
- 歯根膜(歯根周囲の靭帯)の損傷の程度によって、亜脱臼と完全脱臼に分けられます。
- 亜脱臼の歯は動揺して変位していますが、歯槽部には動揺はみられません。
- 完全脱臼の歯は歯槽窩から遊離し、脱落もしくは容易に動かせる状態になっていることが多いですが、陥入した場合には可動性が少ないです。
どんな治療があるの?
破折(歯折)の場合
- 欠けてしまった部分は修復します。歯がぐらぐらして固定できない場合や、破損が大きい場合は抜歯します。
- 歯髄という、神経などが通る場所にまで達する場合、冷たい水がしみたり痛みが出たりします。このときは歯髄を除去する場合があります。
亜脱臼の場合
- 歯の位置のずれがほとんどない場合は、そのまま様子を見ます。
- ずれが大きい場合や、かみ合わせがおかしい場合は、正しい位置に戻し固定します。
永久歯の完全脱臼の場合
- 歯が浮いてしまったり、めり込んだり、位置が横にずれた場合には、正しい位置に戻し、固定します。
- 抜けてしまった歯は、もう一度くっつきそうなら、再植を試みます。順調にいけば、1-2か月でかみ合わせに耐えられるようになります。
再植の成功率が上がる条件
- 歯が抜けてから30分以内に、生理食塩水や牛乳、唾液などにつけて保存している
- 脱落した歯の歯根膜が清潔で、歯周組織の炎症や高度な骨吸収がなく、歯槽骨の損傷が少ない
乳歯の完全脱臼の場合
- 歯が外側に倒れたり、下にある永久歯のじゃまをするようにめり込んでしまった場合は、固定するかあるいは抜歯します。
- 歯がまっすぐ下にもぐりこんだ、あるいは内側に倒れた場合は、多くは自然に出てくるので、何もせず様子を見ます。