胆嚢癌・胆管癌:症状は?痛みは?原因は?検査や治療は?完治できる?
更新日:2020/11/11
- 肝胆膵外科専門医の緑川 泰と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が胆嚢癌あるいは胆管癌になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 胆嚢癌とは、体のお腹の中にある胆嚢という袋の形をした臓器に発生する癌のことです。一方、胆管癌は、胆嚢につながる管の胆管という臓器に発生する癌です。
- 右上腹部の痛みを感じたら、エコー・CTが可能な病院で診察してもらいましょう。
- 目・皮膚・尿が黄色くなったり、便が灰白色になった場合はすぐに肝胆膵の専門医がいる病院で診察してもらってください。
- 胆石や胆のうポリープがある場合は無症状でも定期的に検査を受けましょう。
- 胆嚢癌・胆管癌は手術が唯一の根治療法ですが、手術できない場合でも抗癌剤の投与により1~2年くらいの延命効果がある場合もあります。
胆嚢癌・胆管癌は、どんな病気?
- 胆嚢癌とは、体のお腹の中にある胆嚢という袋の形をした臓器に発生する癌のことです。一方、胆管癌は、胆嚢につながる管の胆管という臓器に発生する癌です。
- 肝臓で作った胆汁を十二指腸に輸送する管を胆管、胆汁を一時的に貯留する袋を胆嚢といい、あわせて胆道といいます。
- 胆管癌は肝内胆管癌と肝外胆管癌に分けられ、胆嚢癌と併せて胆道癌と呼ばれます。
- 胆嚢癌・肝内胆管癌は初期では症状が現れません。
- 腹痛・黄疸(皮膚や白目が黄色くなること)・嘔吐などの症状がみられる場合は非常に進行した状態です。
- 早期の胆嚢癌は他の疾患の治療中に、また早期の肝内胆管癌は健康診断などでいずれも偶然に発見されることが多いです。
- 一方で肝外胆管癌は比較的早い時期から黄疸が見られることが多いです。
胆嚢癌・胆管癌と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
- 胆嚢・胆管癌ではないかと心配されるとき、下記のような場合は医療機関の受診を検討してください。
かかりつけ医への受診がおすすめな場合
- お腹の右上部分の鈍い痛みや、背中から右肩にかけて抜けるような痛みがある場合
- 目や皮膚、尿が黄色くなった場合(黄疸)
- 吐気・嘔吐などが認められる場合
無症状でも定期的に医療機関に受診する必要がある場合
- 胆石症・胆嚢ポリープ・胆嚢腺筋腫症を指摘されている場合(胆嚢癌)
- B型肝炎やC型肝炎の場合(肝内胆管癌)
- 肝内結石症を指摘されている場合(肝内胆管癌)
- 胆管膵管合流異常症を指摘されている場合(胆管癌>胆嚢癌)
- 肝機能異常が指摘された場合
胆嚢癌・胆管癌になりやすいのはどんな人?原因は?
- 胆嚢癌と胆管癌は原因が異なります。また、胆管癌も肝内胆管癌と肝外胆管癌で原因が異なります。
- 胆嚢癌になる人の多くは胆石症があると言われています。また、胆嚢の壁が厚くなる胆嚢腺筋腫症や胆嚢ポリープという良性の疾患が、癌化して発生することもあります。
- 肝内胆管癌はB型肝炎やC型肝炎が原因の一つに挙げられています。また、肝内結石症による長期的な炎症により肝内胆管癌の発癌リスクが高くなるため、予防的な手術が進められています。
- 先天性胆管膵管合流異常症の患者さんは、胆管癌や胆嚢癌の発癌リスクが極めて高く、予防的に胆嚢摘出術や肝外胆管切除が薦められます。
どんな症状がでるの?
- 胆嚢癌・肝内胆管癌は初期では症状はほとんどありませんが、進行すると次のような症状が出ることがあります。
- 肝外胆管癌では比較的初期から下記のような症状や肝機能異常で発見されて、進行するにつれて症状が増えていきます。
胆嚢癌・胆管癌の主な症状
- 右上腹部の痛み
- 肌や白目が黄色くなる・灰白色便(黄疸)
- 皮膚のかゆみ
- 全身のだるさ
- 発熱
- 悪心・嘔吐など
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 胆嚢癌・胆管癌を疑って病院へ行ったら、まず血液検査や超音波検査をします。
- 血液検査では肝機能異常や腫瘍マーカーの上昇の有無をみます。
- また超音波検査では胆嚢や肝臓の腫瘍の有無、癌がある場合の胆管の拡張の有無について検査します。
- 上記の結果、胆嚢癌・胆管癌が疑われる場合は専門施設でCTやMRIにより病変の拡がりをみて手術が可能かどうかを判断します。
- 腫瘍が見つかった場合には本当に癌であるかどうかや、他臓器への転移の有無を確認するためにPET-CTを行うこともあります。
どんな治療があるの?
- 胆嚢癌・胆管癌に対する治療は大きく分けて手術と抗癌剤治療があります。手術が根治治療となります。
- 手術の場合、術式は癌の部位や進み具合により異なります。早期では胆嚢を摘出したり胆管を切除するだけのこともありますが、進行すると肝臓を2/3以上切除したり、膵臓の一部や十二指腸を同時に切除する場合もあります。
- 手術できない場合は抗癌剤治療を行います。ジェムザール、TS-1、シスプラチンなどを単剤、または組み合わせます。
- 黄疸がある場合には内視鏡を用いたり(ERCP)、皮膚から胆管内に針を刺して(PTCD)、胆管内にチューブを留置し胆汁を体の外や十二指腸に排出して黄疸を抑える治療を行います。ただしこれは、癌に対する治療ではなく、黄疸を抑える治療です。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 手術をした場合は、術式により術後の体への負担や合併症が異なります。また、根治手術ができたとしても癌は再発する可能性があるので主治医の指示に従って定期的に検査を受けてください。
- 下記にそれぞれの治療に対する注意点・副作用をまとめました。
胆嚢摘出、あるいは胆嚢と周囲の肝臓の一部のみを切除した場合
- 退院後の注意点は特にありません
胆管切除をした場合
- 術後、胆管炎を起こすことがあります。胆管炎を起こすと高熱が出ますので、術後に発熱した場合はすぐに入院のできる病院で診察を受けてください。
- 完全には予防できませんが、暴飲暴食により腸内の圧が上昇し、胆管内に腸液が逆流する可能性が高くなるので、食事量に気を付けてください。
胆管と膵臓の一部、十二指腸を切除(膵頭十二指腸切除術)した場合
- 上記の胆管炎に加えて以下の症状が起こり得るので医師の指示に従って薬の内服や食事に気を付けましょう。
膵頭十二指腸切除術後に起こり得る症状
- 膵切除による脂肪吸収の低下による低栄養
- 膵切除によるインスリン分泌低下による糖尿病の発症
- 胃や十二指腸切除による食事摂取量の低下による体重減少
大量の肝切除を行った場合
- 肝臓は切除後再生するため、退院できれば肝不全の心配はありません。胆管を併せて切除した場合は上記の胆管炎に注意してください
抗癌剤治療を行った場合
- 抗癌剤の主な副作用の一つとして免疫力低下があります。感染し、重篤な状態に陥りやすくなります。外出時にはマスクをしたり、人混みの多い場所は避けるようにしましょう。また、帰宅時には手洗いやうがいを励行してください。
- その他の抗がん剤投与による症状は薬剤により異なりますが、医師の他、看護師や薬剤師からなる化学療法チームに相談して適切な処置を受けるようにしてください。
予防のためにできることは?
- 胆嚢癌・胆管癌を予防はできませんが、肥満や糖尿病のある人はそうでない人に比べて発癌リスクが高いので注意しましょう。
- また、下記の基礎疾患がある場合は専門医と相談して定期的なチェックや予防的手術について相談してください。
注意すべき基礎疾患
- 胆石症・胆嚢腺筋腫症・胆嚢ポリープ(胆嚢癌)
- B型肝炎・C型肝炎(肝内胆管癌)
- 肝内結石症(肝内胆管癌)
- 胆管膵管合流異常症(胆管癌・胆嚢癌)
術後の補助化学療法
- 進行がんの場合(臨床病期に依ります)は予防的に抗癌剤の投与が推奨されますので、抗癌剤治療をした場合の再発する可能性を下げる効果や副作用について十分な説明を受けた上で補助化学療法を受けるかどうか決めてください。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 胆嚢癌・胆管癌は根治手術ができた場合のみ治る可能性があります。また、癌の進行度(ステージ)により5年生存率が異なります。
- 胆嚢癌では癌が胆嚢の壁を越えず、リンパ節転移を伴わない場合はかなり高い確率で治りますが、肝臓や隣接する臓器に浸潤したり、リンパ節転移がある場合は再発のリスクが急に上がります。
- 一方で胆管癌はステージIでも再発する可能性があります。
手術できなかった場合
- 残念ながら抗癌剤の治療のみでは胆嚢癌・胆管癌は治りません。抗癌剤の効果があるのは患者さんの30-40%程度ですが、その場合でもやがて抗癌剤に体が耐え切れなくなったり、副作用により中止せざるを得ないため、1-2年程度で亡くなる患者さんがほとんどです。効果がない場合はさらに余命が短くなります。
追加の情報を手に入れるには?
- 胆嚢癌・胆管癌に関しては下記のページを見るとよいでしょう。
- 胆嚢がん治療の選択:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
- https://ganjoho.jp/public/cancer/gallbladder/treatment_option.html)
- 胆管がん治療の選択:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
- https://ganjoho.jp/public/cancer/bile_duct/treatment_option.html
緩和ケアについて
- 胆嚢癌・胆管癌は初期症状が気付きにくかったり、大事な血管に早期に浸潤するため、診断時には切除不能であったり、切除後も再発する場合が多い癌です。
- 緩和ケアでは癌の進行に伴って生じる身体の痛みや精神的なつらさ、黄疸や通過障害などを早期に発見し、的確な治療・処置を行うことによって、患者さん及びご家族の苦しみを予防し、和らげることでクオリティー・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を改善することが可能です。