睡眠薬:どのような種類があるの?お酒や薬との飲み合わせは?副作用は?
更新日:2020/11/11
- 睡眠学会専門医の小曽根 基裕と申します。
- このページに来ていただいた方は、睡眠についてのお悩みがあり、睡眠薬の処方を希望されておられるかもしれません。
- 睡眠薬を飲み始めるにあたり、それがどのような薬であるのかについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしい」ことについて記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 睡眠薬は、脳に働きかけることで眠りを助けてくれるお薬です。
- 通常は医師が出すお薬ですが、一部は市販されているお薬もあります。
- 市販薬でも、医師から出されたお薬でも、副作用がでる可能性があります。睡眠薬を使うかどうかはできる限り医師に相談していただくことをおすすめします。
- 主な副作用は、次の日まで眠気が残ってしまう、ふらつき、記憶の障害などがあります。
どんなくすり?おおよその値段は?
- 睡眠薬は、脳に働きかけて眠りを助けてくれるお薬です。
- 医師が出す睡眠薬には、ベンゾジアゼピン系というお薬があり、このお薬の働きはお酒が持つ脳への働きと似ています。最近のお薬(オレキシン受容体阻害薬、メラトニン受容体作動薬)は、今までのお薬よりもより自然な眠りへ導いてくれると言われています。
- 市販されている睡眠薬は、抗ヒスタミン薬と呼ばれるお薬が主流です。その他に、漢方薬が主成分となっているお薬もあります。
- お薬の値段は様々です。ベンゾジアゼピン系のお薬は大体1錠30~60円で、保険で1~2割カバーされた場合3~12円ほどとなります。市販の薬は、1錠2~30円程度のようです。
どんな目的で飲むの?
- 「夜眠れない」と悩んでいる方に対して、睡眠をとりやすくなるようにする目的で飲むお薬です。
- 夜に寝ようとしても眠れず、日中に強い眠気を感じたり、頭がぼーっとして仕事や勉強に集中できないなど、生活に問題が生じている人が飲むべき人になります。一方、不摂生をして眠れないとか、必要以上に眠りたい人は飲むべき人には当たりません。
- 寝付きが悪い、途中で起きる、朝早くに目が覚めてしまうなどのよく眠れない症状を改善します。
どのように飲むの?
- 眠ろうとする時間の30分前に飲んでください。お薬の効果が出るまでに30分~1時間ほどかかります。
- お薬を飲んだらすぐに布団に入るようにしてください。睡眠薬を飲んだ後は、ふらつきがでて転んでしまったり、自分がした行動を忘れてしまうなどの危険性もあります。
- ベッドの中に仕事を持ち込んだり、スマートフォンをいじったり、あれこれと考え事をせずに、静かに目をつぶってリラックスしてください。横になったらゆっくり過ごし、眠くなるのを待ってください。
- 効かないときにお酒を合わせて飲むことは危険なので、絶対にしないでください。
睡眠薬を飲み始めるときの注意点は?いつまで使うの?
- 睡眠薬を飲むときは次のことを守ってください。
ご自分の判断だけで飲むお薬の量を調整しないでください
- 医師から処方されたお薬は、決められた量を決められた時間・方法で飲むことを絶対に守ってください。
- 市販のお薬でも1回に飲む量や数、飲んでよい上限の量が書いてあります。
睡眠薬を飲む期間は医師と相談してください
- 眠れない原因(精神的なストレス、体の痛み、かゆみなど)が解消したら、睡眠薬を飲む量を減らす、または止めることを検討してください。
- ただし、心や体の病気のために長期間にわたって睡眠薬を飲む必要がある方もいますので、飲み続ける期間は医師と相談してください。
副作用ってよく聞くけど、どんなことが起こるの?飲むときの注意点は?
- 睡眠薬の副作用には、以下のようなものがあります。
睡眠薬の副作用
- 眠気:お薬を飲んだ翌朝にも眠気が強く残り、すっきり起きられなかったり、午前中にまで眠気が続いたりすることがあります。
- ふらつき、転倒:筋肉の働きを弱める作用(筋弛緩作用)があるお薬もあります。足にうまく力が入らずふらつき、転倒してしまい、特にお年寄りの方では骨折の原因となります。横になったらゆっくり過ごし眠くなるのを待つようにしてください。
- 物忘れ:お薬を飲んだ後からの記憶がなくなることもあります。電話やメール、食事、家族との会話などを後から思い出すことができないこともあります。
- 依存、効果が下がる:お薬を長い間飲むと、急に止めようとすると不眠が悪化したり、効果が薄れてきたりすることがあります。
もっと知りたい! 睡眠薬のこと
眠れない時だけ睡眠薬を飲んでもよいですか?
- はい。お薬によっては、眠れない時だけ使うという方法もあります(とんぷく、とんようといいます)。この方法は、不眠が比較的軽い、または眠れない状況が限られた場合のみの方に有効です。
- 医師に相談し、どの薬をどのように飲めばよいのかを相談して下さい。
飲み続けると依存症になったり、効き目が悪くなったりしますか?
- はい。不眠は改善したのに睡眠薬をやめられない「依存症」、同じお薬で同じ量を飲んでも以前より効果が薄くなる「耐性」が起こることもあります。
- これらは、長い間飲んでいるとき、効果が短いお薬を飲んでいるとき、複数の睡眠薬を合わせて飲んでいるときになりやすいです。
- 依存症では、やめたらまた眠れなくなるかもしれない不安感が強くやめられない、実際飲むのをやめてみたら眠れなくなった経験があってやめられないなどが起こります。
- 耐性ができ、効果が薄れてきたからと言って、自己判断でお薬の量を増やすと副作用が出やすくなります。必ず医師にご相談ください。
お酒を飲んだ後は睡眠薬を飲んでも良いですか?
- いいえ、お酒を飲んだ後に睡眠薬を飲むと、睡眠薬の副作用を格段に起きやすくさせます。つまり、意識がなくなる、記憶がなくなる、転んでけがをするなどが起きやすくなります。
- 「眠れない」と悩む人はお酒を避けてください。
お酒を飲んだら眠りやすくなりますか?
- お酒を飲んだ後、寝付きは良くなりますが、睡眠が浅くなって目覚めやすくなります。
- よく「寝酒」という言葉を耳にしますが、これはお酒により一時的に得られる眠気で眠りやすくすることをいい、不眠を改善するものではありません。
追加の情報を手に入れるには?
- より詳しい情報や最新のガイドラインなどについては以下の書籍やウェブサイトを参照してください。
書籍
- 『精神科の薬がわかる本 第3版』姫井昭男
- 『睡眠薬中毒』内海聡
- 『睡眠障害のなぞを解く』櫻井武
ウェブサイト
- 厚生労働省 eヘルスネット 不眠症
- https://www.ehealthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html
- エスエス製薬 睡眠改善薬ってどんなもの?
- http://www.ssp.co.jp/drewell/sleepaid/
- 田辺三菱製薬 スイミンネット 睡眠や不眠について知る
- http://www.suimin.net/step1/medicine/q_05.html
- http://www.suimin.net/step1/medicine/q_01.html
- http://www.suimin.net/step1/medicine/q_03.html
- NHK きょうの健康 睡眠の悩み これで解決「睡眠薬を正しく使う」
- http://www.nhk.or.jp/kenko/kenkotoday/archives/2016/01/0113.html