禁煙:禁煙のメリットは？禁煙後に太るって本当？禁煙外来もあるの？

• 日本呼吸器学会指導医、禁煙学会認定指導医の津田　徹と申します。
• このページに来ていただいた方は、本当に禁煙しなければいけないのか、禁煙できるのだろうか、との不安がおありかもしれません。
• タバコを止める決意をされた方に、役に立つ情報をまとめました。
• 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしい」ことについて記載をさせていただいています。

どうしてもタバコをやめなければいけないのでしょうか？

• 禁煙をお医者さんなどに勧められても、すぐにタバコを止められる方はほとんどいらっしゃいません。禁煙を決意され、ご自身でタバコを止めるまでには、順を追って納得していく過程が必要です。
• ですから、ご自身の心の変化に応じて、対応していただくことが大切です。下記を参考にして、ご自分がどのステージにいるかを把握してみてください。

禁煙する気がない「無関心期」

• アドバイスを素直に受け入れられない時期です。
• 「自分がタバコを吸い続ける理由」を探しながら、タバコを吸い続けてしまいます。

禁煙を考えているが、 1ヵ月以内ではない「関心期」

• 禁煙したほうがよいということは理解していますが、「もう少ししたら禁煙しよう」と考えてしまいます。

1ヵ月以内に禁煙しようと考えている「準備期」

• 禁煙をする動機が高まり、タバコを吸っていることによる問題を解決していく未来の自分を考えるようになります。

ニコチン依存症とは何ですか？　病気なのですか？

• ニコチン依存症とは、常にニコチンがないとだめな体になってしまうことです。病気ですので、健康保険を使って治療を受けていただくことができます。
• タバコに含まれるニコチンという成分は、コカインやヘロインといった麻薬よりも依存性が高いことが知られています。
• 血液に溶けたニコチンは、脳のニコチン受容体にくっつくと、快楽物質のドーパミンを出します。タバコを吸って、ストレスがなくなったと感じるのはこのためです。
• しかし、ニコチンが少なくなってくると逆にイライラしてしまい、またタバコを吸ってしまいます。これがニコチン依存症です。
• タバコを吸うのを止めれば、ニコチンによる気分の上がり下がりがなくなります。タバコを我慢することによるストレスも感じにくくなります（図表１）。

図表1 ニコチン依存症のメカニズム

ニコチン依存症は病気で、治療の対象となることを認識しましょう（「日本循環器学会　あなたにもできる禁煙ガイド」を改変）。

お医者さんにかかれば禁煙できますか？

• まずは、禁煙外来にご相談ください。
• 治療時には、通常、3か月間で5回、病院に来ていただきます。最近は遠隔診療もあり、この限りではありません。
• 3か月間病院に通っていただいた患者さんの禁煙の成功率は、8割弱です。
• ただ、5回病院に来ていただける患者さんは4割弱にとどまります。また、禁煙に成功した方でも、禁煙外来に通うのを終えた後に再びタバコを吸ってしまう方が半数程度いらっしゃいます。

禁煙外来で使うお薬

• ニコチンパッチ、バレニクリン（チャンピックス）というお薬がよく使われます。
• ニコチンパッチ：ニコチンが含まれている絆創膏のようなパッチで、タバコを吸っていないときのイライラなどを軽減させます。ニコチンパッチによる禁煙の成功率は76.9％です。
• バレニクリン（チャンピックス）：脳のニコチン受容体に作用する飲み薬です。タバコを吸っていないときのイライラを軽減し、タバコを吸ったときの満足感を抑えます。バレニクリンによる禁煙の成功率は79.1%です。

禁煙を続けるためにはどうすればよいでしょうか？

• 人は誉めてもらえるとやる気が続きます。禁煙外来のお医者さんに、タバコを止めようと努力するあなたのことを誉めてもらってください。

禁煙の努力を誉めてもらってください

• 禁煙外来を予約できた！
• 禁煙外来を受診できた！
• 前回の受診から1本も吸わなかった！素晴らしい！
• 3カ月間、禁煙外来に通った！禁煙達成おめでとうございます！

• また、ご自身でも、タバコを止めることでよくなったことを見つけてみてください。

禁煙するとよいこと

• 喉の調子が良くなり、痰が減る！
• 自分からタバコの臭いが消える！
• 他人の服のタバコの臭いがくさい！
• 家族から喜ばれる！

禁煙に何度も失敗した場合はどうしたらよいでしょう？

• １回の挑戦で禁煙に成功する方は珍しいです。
• 普通は2、3回禁煙にチャレンジされた後、永久禁煙者になっていかれます。
• 失敗しても、その度に得るものがあったはずです。これからも是非チャレンジしてください。

禁煙すると体重が増えてしまいます

• タバコは食べ物の味を変えます。これまで食欲がなかったのは病気だったからです。
• 禁煙すると食べ物が美味しく感じられ、2～4ｋｇ体重が増えるのはよくあることです。
• 体重が気になる方は、禁煙が成功した後にダイエットについて考えてみてください。

タバコを吸わないとイライラします。どうすればよいでしょうか？

• タバコを止めるとイライラするのは、身体に残っていたニコチンが徐々に減っていくためです（離脱症状【りだつしょうじょう】といいます）。離脱症状は3日を過ぎると山を越え、おさまってきます。
• タバコを吸いたい気持ちにならないよう、下記に記すようなタバコと結びついている行動パターンを意識して変えたり、タバコを吸うきっかけになる環境から距離を置いてください。また、タバコを吸いたい気持ちになってしまったら、タバコを吸う代わりにほかのことをしてやり過ごします。※中村正和ほか編『決定版 賢者の禁煙』 法研（2007）,p76を参考

タバコと結びついている行動パターンを変える

• 洗顔・歯磨き・朝食など、 朝の行動の順序を変える
• 昼食をいつもと違う場所でとる
• 食後は早めに席を立つ
• コーヒーやアルコールを控える
• 過労やストレスをためないようにする

タバコを吸うきっかけになる環境から距離を置く

• タバコ、ライター、灰皿などを処分する
• パチンコ店や居酒屋など、タバコの煙が多い場所に近寄らない
• 喫煙者に近づかない
• タバコを買える場所に近づかない

タバコの代わりに他のことをする

• 深呼吸をする
• 水や氷を口にいれる
• 散歩や体操をする
• 掃除をしたり、体を動かす
• 歯を磨く
• 糖分の少ないガムやタブレット、干し昆布などをかむ

禁煙できても、ちょっとしたきっかけでまたタバコを吸ってしまいます

• もらいタバコは特に危険です。せっかく禁煙したのに、お酒の席などでつい一本、と気持ちがゆるんでしまうと、またニコチン依存症に陥ってしまいます。
• これまでの禁煙への努力と、どうしたら禁煙できるかを思い出してください。むしろ、タバコをすすめる人も禁煙の道に引きずりこみましょう。

精神病があり、タバコを止めることが不安です

• 精神の病気のある方は、禁煙によるイライラや不眠のために病気が悪化する可能性があります。
• 禁煙に使うお薬が病気を悪化させることはないと言われていますが、精神科の先生と連携しながら禁煙を進めていただくことが大切です。

ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには？

• 次の書籍をお薦めします。
• 中村正和ほか編『決定版 賢者の禁煙』 法研（2007）