出生前診断(羊水検査):どんな時に必要なの?異常があると言われたら?
更新日:2020/11/11
- 産婦人科専門医・臨床遺伝専門医の宮下 進と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「胎児に異常があるかもしれない」「出生前診断が必要かもしれない」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 羊水検査は、胎児の染色体検査、遺伝子検査、細菌やウイルスなどの病原体を検査するために行います。
- 医療機関により異なりますが、外来または入院で行います。
- 通常、妊娠15~16週(4ヶ月目おわりころ)以降であれば羊水穿刺を受けることができます。
何のための検査?
- 羊水検査は出生前診断のための検査方法の一つです。 羊水穿刺により採られた羊水を検査します。
- 胎児の染色体検査、遺伝子検査、細菌やウイルスなどの病原体を検査するために行い、このうち染色体検査が最も多く行われています。
- 出生前診断のための検査方法には、間接的な非確定的検査と胎児を直接調べる確定的検査があります。
検査の種類
- 非確定的検査:超音波検査、母体血清マーカー検査、コンバインドテスト、母体血中cell-free DNA検査(いわゆるNIPT:無侵襲的出生前遺伝学的検査) など。これらの検査だけでは確定診断はできません。
- 確定的検査:羊水にはあかちゃんの皮膚からはがれた細胞が浮いているので、これを調べることで胎児を直接検査していることになります。
羊水穿刺の方法は?
- 医療機関により異なりますが、外来または入院で行います。
- 腹部を消毒した後に、エコーで子宮の中を観察しながら、胎児を傷つけないように長い針を刺して羊水を約20ml採取します。
- 皮膚には局所麻酔をするため強い痛みを感じることは少ないですが、生理痛のような鈍い痛みや違和感がある場合があります。
結果はすぐに出るのですか?
- 染色体検査(G分染法)では細胞の培養をおこなうため結果が判明するまで通常は2週間程度を要します。
- FISH法という方法では1週間以内に結果が得られますが、検査の範囲が限定されます。
- 遺伝子検査では染色体検査より長い期間を要する場合が多いです。
- 検査目的に応じて検査をいつ受けるかを担当医とよく相談して下さい。
妊娠中ならいつでもできるの?
- 妊娠15-16週(4ヶ月目おわりころ)以降であればふつう羊水穿刺を受けることができます。
- あまり早い時期では安全におこなうことができません。
- 染色体・遺伝子検査の場合、9-11週では絨毛生検という別の検査方法もあります。
- 何を調べるのかその目的により施行時期や検査方法が決まります。
羊水穿刺を受けた後にどんなことに気を付けたらいいの?
- 羊水穿刺では子宮の中まで針を刺します。その経路での出血、細菌感染、刺激による子宮の収縮、流産、赤ちゃんの死亡などを引き起こす可能性が0.3-0.5%程度あるといわれています。
- 羊水穿刺を受けた後はしばらく安静にしていただき、出血や子宮収縮が無いことを確認する必要があります。
- また数日以内に羊水が漏れ出ることがありますが、多くは自然によくなります。
費用はどれくらいかかりますか?
- 外来、入院で総額は異なりますが、通常は手技料と検査料で十数万円以内です。
- ただし出生前診断全般には健康保険等が適用されないため、研究目的でなければ、自費診療として全額を請求されることが多いです。
- 費用負担については検査を受ける前にご確認下さい。
もし赤ちゃんに病気がみつかったらどうなるの?
- 胎児に病気がみつかる可能性は否定できません。
- 羊水検査を受ける前に、検査でわかること、わからないこと、出てくる結果の意味について説明を受けた上で、貴方自身、場合によりパートナーも含めて、一番心配なことはなにか、結果に応じてどうしていきたいのかを整理しておく必要があります。
- 最終的には貴方自身とパートナーで決めていくことになりますが、その支援のため遺伝カウンセリングの体制が整備されている医療機関も増えています。まずは担当医にご相談下さい。