つわり:原因は? 症状は? いつからいつまで続くの? 治療はあるの?
更新日:2020/11/11
- 産婦人科医の小畠 真奈と申します。
- このページに来られた方は、「このはき気はつわり?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、つらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- つわりについて「妊婦さんに特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」をお話しします。
目次
まとめ
- つわりというのは、妊娠のごく初めのころに、大半の妊婦さんが経験する「はき気とおう吐」です。
- つわりのときは、こまめに水分をとるようにしてください。
- 食べられるものを少しずつ口にするようにしてください。
- 5%以上の体重減少がある場合は、かかりつけの産婦人科を受診してください。
つわりって何?
- つわりというのは、妊娠のごく初めのころに、大半の妊婦さんが経験する「はき気とおう吐」です。
- 妊娠5週ごろ(生理が遅れてから1週間)に始まることが多く、妊娠8週ごろ(妊娠3か月の初め)がピークとなり、妊娠14週以降(妊娠4か月の後半)になるとほとんどの場合、自然によくなってきます。
- 遅くとも妊娠20週くらいにはよくなりますが、まれに出産まで症状が続くこともあります。
- はき気のみ、あるいは1日1〜2回程度のおう吐ならば、おなかの中の赤ちゃんへの危険はありません。
- 症状が強い場合は「妊娠悪阻【にんしんおそ】」と呼ばれ、妊婦さんや赤ちゃんの健康に影響がでることもあります。水分もとれないようなときは、かかりつけの医師にご相談ください。
つわりと思ったら、どんなときに病院へ受診したらよいの?
- 生理が遅れている、月経以外に性器からの出血がある場合は、妊娠の可能性があります。
- 薬局などで購入できる妊娠検査薬で検査するか、できれば直接産婦人科を受診してください。
- 妊娠検査薬で陽性が出ていてまだ産婦人科に受診していない場合は、なるべく早く受診してください。
- すでに受診した後でも、次のような症状がある場合はかかりつけの産婦人科を受診してください。
かかりつけの産婦人科への受診がおすすめな場合
- 5%以上、体重が減少した
- 水分がとれない
- ふくらはぎが熱をもって腫【は】れたり、痛みがある
救急車を呼んだほうがいい場合
- 意識がない
- もうろうとしている
症状をやわらげるために自分でできることは?
- つわりの症状をやわらげるためには、次のようなことをしてみてください。
つわりの症状をやわらげるためにできること
- 妊婦用のマルチビタミン剤をとる
- 布団のなかにいる間(空腹を感じる前に)にパンやクラッカーを食べる
- こまめに水分をとる
- いやなにおいを避ける
- 3食しっかり食べるより、少量の食事を何回かに分けてとる
- 薄味のたべものをとる(バナナ、米、リンゴソース、トースト、紅茶などは低脂肪で消化が良いです)
- ショウガからつくったジンジャーエール、おろしショウガでつくったジンジャーティー、ジンジャーカプセル、ショウガあめを試してみる
- 精神的なストレスを減らす(つわりの時期には実家に帰ることも考えてみてください)
- 頻繁に吐いていると胃酸で歯のエナメルが溶かされてしまいますが、重曹液でうがいをすることで歯を守ることができます。
- 仕事は休む必要はありませんが、症状が強い場合には休養をとるようにしてください。
つわりになりやすいのはどんな人? 原因は?
- つわりは4人に3人の妊婦さんが経験するものです。
- 次のような方はつわりになりやすいとされています。
つわりになりやすい人
- 双子や三つ子を妊娠している
- 以前の妊娠中につわりの症状が強かった
- 母親や姉妹がつわりの症状が強かった
- 車酔いをしやすい
- 片頭痛がある
- 女児を妊娠している
- つわりの原因はまだわかっていませんが、ほかの病気が原因となっていることもあります。
- 妊娠中にはき気やおう吐を引き起こす病気には、胃潰瘍、食中毒、甲状腺の病気、胆石症などがあります。
- 次のような症状がある場合には、かかりつけの産婦人科医に相談してください。
ほかの病気の可能性があり、病院に相談いただくことをおすすめする場合
- 妊娠9週以降にはき気・おう吐が出現した
- お腹が痛い
- 38度以上の熱が出る
- 頭痛
- 首が腫れている
どんな症状がでるの?
- つわりでは、次のような症状がみられます。
つわりの症状
- はき気:とくに朝方に強いといわれますが、実際は1日中続く妊婦さんも多くいます。
- おう吐:はいてしまう回数もさまざまです。
- 頭痛:水分がとれないときに痛みます。また、もともと片頭痛のある妊婦さんもつらいようです。
- 唾液が止まらない:ティッシュペーパーが手放せないこともあります。
赤ちゃんへの影響
- はき気やはくこと自体は赤ちゃんには影響しませんが、それによる妊婦さんの体重減少が大きい場合、赤ちゃんの出生体重が軽くなることがあります。
血栓症にご注意ください
- 妊娠初期は血液が濃くなり、血管の中に血栓【けっせん】という小さな血のかたまりができやすい状態になっています。
- つわりで水分がとれないと、この状態がさらに悪化して、足の静脈に血栓が詰まってしまい、痛みを引き起こす可能性があります(下肢静脈血栓症【かしじょうみゃくけっせんしょう】といいます)。
- この血栓が肺の血管に流れて行って詰まると、エコノミークラス症候群(肺血栓塞栓症【はいけっせんそくせんしょう】ともいいます)という危険な状態の原因となります。
病院ではどんな検査をするの?
- お医者さんでは、体重測定、尿検査、血液検査(肝臓、甲状腺、腎臓のはたらきをしらべます)を行って、つわりによる影響が深刻でないか確認します。
どんな治療があるの?
- ご自身で環境を調整したり、食生活を工夫することで改善しない場合や症状が強い場合は、病院での治療が必要になります。
- 症状が強くなりすぎないうちに治療を受けると改善しやすいので、つわりがつらい場合はぜひかかりつけ医にご相談ください。
症状が軽い場合
- ビタミン剤(ビタミンB6製剤)を内服します。
- ビタミンB6が効かない場合は、はき気を抑えるお薬(制吐剤【せいとざい】)を服用します。
入院が必要な場合(妊娠悪阻の状態)
- 症状が改善しない場合や体重減少が続く場合は、入院になります。
- 脱水がひどい場合は、点滴で水分とビタミン剤を補給します。ビタミンB1は脳神経の症状(まれに起こる病気です)を予防する効果もあります。
- 吐き気がよくならない場合は、ほかのお薬が必要になります。
- 体重減少が続く場合は静脈から栄養成分を補給する経静脈栄養やチューブで胃などに直接栄養を入れる経管栄養が必要になることもあります。
つわりの治療に副作用はあるの?
- ビタミン剤内服や点滴での水分補給による副作用の心配はありません。
予防のためにできることは?
- 精神的なストレスを避けることがいちばんです。
治るの? 治るとしたらどのくらいで治るの?
- 妊娠12週くらいまでに自然に治ることがほとんどです。
- まれに12週を過ぎてもはき気が続く場合があり、さらにまれですが出産まで続くこともあります。
追加の情報を手に入れるには?
- 妊娠中の生活についての情報源として、日本産科婦人科学会が監修した、妊婦向けの「Baby plus」という無料の妊娠・出産情報アプリがあります。
- http://www.jsog.or.jp/modules/babyplus/index.php?content_id=