卵巣腫瘍茎捻転の手術:どんな治療？入院期間や費用は？術後の生活は？

はじめに　

• 産婦人科専門医の津田 尚武と申します。
• このページに来ていただいた方は、卵巣腫瘍の茎捻転と診断されるなどして、どのような治療法があるのかについて知りたいと考えられているかもしれません。
• 卵巣腫瘍茎捻転に対する手術方法について理解するために役に立つ情報をまとめました。

どんな治療？

• 卵巣腫瘍の茎捻転とは、卵巣にできものが出来て卵巣が根元からねじれてしまった状態です。
• 卵巣腫瘍が茎捻転すると、卵巣への血管がねじれて強い下腹の痛みが起こります。処置をしないと、卵巣組織がダメージを受けるため、緊急手術が必要となります。
• 卵巣が根元から捻れているため、薬での治療では治りません。手術で卵巣の腫瘍だけ、もしくは卵巣・卵管を取り除くことが必要です。

この治療の目的や効果は？

• この治療の目的は、茎捻転の原因となった卵巣腫瘍を卵巣から取り除くことにあります。
• 卵巣腫瘍のねじれが発生すると卵巣への血液の流れが悪くなって、正常の卵巣の組織までも同時にダメージをうけ、卵巣が機能しなくなってしまいます。
• 卵巣の機能を保つためにも、卵巣腫瘍茎捻転と診断されたら、緊急に手術を行い、卵巣腫瘍を取り除いてねじれを戻す必要があります。早期に手術を行えば、卵巣の機能は手術前と同じに保たれます。
• 時間がたって、既に卵巣が死んでしまっている場合は、腫瘍のある卵巣、卵管は取り除く必要があります。しかし、反対側の卵巣が正常であれば、片方の卵巣だけでホルモンの働きは正常に保たれます。
• 既に卵巣が働いていない年齢でも、死んでしまった卵巣をそのままにしておくと、お腹の中で炎症を起こします。そのため手術により卵巣と卵管を取り除く必要があります。手術により炎症やお腹の痛みは良くなります。

どういう人がこの治療を受けるべき?

• 次の場合に卵巣腫瘍茎捻転を疑います。

卵巣腫瘍茎捻転を疑うとき

• 突然の下腹部の痛みがある
• 診察で卵巣腫瘍がある
• 痛みの部位が腫瘍と一致している

• 痛みの原因が卵巣腫瘍であることを確認するため、CT検査やMRI検査が行われます。
• 診断が確定したら、手術を行います。

実際には、どんなことをするの?

• 手術方法は、腹腔鏡で行う場合と、開腹で行う場合の２種類があります。
• 腹腔鏡下手術では、おへそとお腹の下部の数カ所に小さな穴を開けて、内視鏡の器具を入れて手術を行います。切り取った腫瘍は最後におへそにあけた穴から取り出すため、傷が小さく、入院期間も開腹手術と比較して短くなります。
• ただし、腹腔鏡下手術は施設により行っていない施設があり、また腹腔鏡下手術には特殊な機器が必要であり、緊急の場合は開腹手術となることがあります。

理解しておきたい リスクと合併症

• 卵巣摘出の可能性：　卵巣腫瘍のみをとる場合は、ふつう卵巣を残します。しかし癒着や出血で卵巣を残すことが難しいとき卵巣、卵管を摘出することがあります。
• 輸血が必要となる場合：可能性は低いですが、どんな手術でも出血が多くなる場合があります。出血が多くなり、血圧の低下を来すような場合（出血性ショック）では輸血が必要となります。
• 術後の腸閉塞：手術後にはおなかの中で組織がくっついてしまうことがあります。それにより腸の運動が制限され、腸閉塞（イレウス）を生じることがあります。そうなると食事をとり始めた後に下腹痛や、腹部がはった感じ、吐き気、嘔吐が出てきます。実際に術後に腸閉塞を認めた場合、絶食や点滴の治療を行います。

治療後について

• 退院後１〜２週間程度は入院していた時と同様に、ご自宅でゆっくり休むことをお勧めします。退院後の入浴や、車の運転に関しては、担当医師とよく相談してください。
• 術後数日は傷の痛みがありますが、数日のうちに軽くなります。
• 1週間以上も創部が赤く腫れて痛みや熱い感じがをする場合には、感染を起こしている可能性があります。病院を受診してください。

ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには？

• より詳しい情報などについては以下のウェブサイトを参照してください。
• 日本産科婦人学会HP
• 産婦人科診療ガイドライン（婦人科外来編2017）

もっと知りたい！　卵巣腫瘍茎捻転の手術

どのような人がこの病気になりやすいですか？　卵巣がんの可能性はありますか？　

• 全ての卵巣腫瘍が茎捻転を起こすわけではありません。茎捻転を起こす卵巣腫瘍の多くは、奇形腫と呼ばれる比較的若い女性に多い腫瘍です。従って卵巣腫瘍茎捻転も中高年よりは若い女性に多い病気です。
• 卵巣腫瘍のサイズは、6〜１０cmのものが捻転することが多いです。卵巣がんが茎捻転を起こすことは稀です。

手術後にまた卵巣腫瘍ができることがありますか？　

• 卵巣が残されている場合には、この手術を受けた後にも、再度卵巣内に腫瘍が発生することがあります。
• 術後に定期検診の必要は必ずしもありませんが、毎年の子宮頸癌検診を受けられる際に産婦人科のクリニックで卵巣腫瘍のチェックをしてもらうようにしましょう。