子宮・卵管造影:何がわかるの?どんな時に必要?痛みや苦痛はないの?
更新日:2020/11/11
- 産婦人科専門医・生殖医療専門医の髙見澤 聡と申します。
- このページに来ていただいた方は、子宮や卵管についてのお悩みがあり、造影の検査を希望されておられるかもしれません。
- 子宮・卵管造影の検査をするにあたり、それがどのような検査であるのかについて役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「本当に知ってほしい」ことについて記載をさせていただいています。
目次
まとめ
- 子宮・卵管造影検査とは、卵管の通過性と子宮内腔の状態を調べる検査です。
- 不妊症の基礎検査で、不妊症の方全員が対象となります。
- 造影剤を用いてレントゲンで写真を撮ることになります。
- 造影剤アレルギーの方、一部の甲状腺の病気のある方は検査することができません。
- 異常かどうかを確認する検査であり、異常時はさらに検査が必要です。
どんな検査?
- 子宮・卵管造影検査とは、卵管の通過の有無と子宮内の状態を調べる検査です。
- 造影剤を子宮内に注入しながらレントゲンを使って、造影剤が流れる場所を観察します。
- 左右卵管の通過の有無の他、子宮内腔の形状(子宮の奇形)・大きさ(容積)・子宮内のポリープや粘膜下筋腫(子宮筋腫の一種)などや癒着の有無、卵管水腫(卵管に水がたまる病気)や卵巣の周りへの癒着の有無をみる検査です。
- 不妊症の基礎検査の一つです。
どういう人がこの検査を受けるべき?
- 子宮・卵管造影検査は不妊症の基礎検査で不妊女性全員が対象となります。
- 造影剤アレルギーのある方は検査できません。
- 甲状腺に病気がある方のなかには検査が出来ない方もいます。内科の先生と相談して下さい。
実際には、どんなことをするの?
検査前にすること
- 造影剤アレルギーの有無を確認します。アレルギーのある方は検査できません。
- 細菌性膣炎やクラミジア感染症を調べます。感染があれば治療後に検査をすることになります。
- 採血検査で甲状腺機能を確認します。異常があれば内科で精密検査と治療をして造影剤の使用が可能かを判断してもらいます。
検査時期
- 月経終了直後から排卵予定日の4〜5日前までが適した時期です。
検査手順
- 検査は、レントゲン透視室というレントゲンで造影剤が流れる様子をみられる検査室で行います。
- チューブなどを用い造影剤を子宮内に注入します。まず、子宮内に充満させ子宮の大きさ、子宮内の形状、子宮内ポリープなどの有無を観察します。
- 造影剤を注入しながら卵管へ流れを追い、卵管の走行および閉塞の有無を観察します。
- 検査中、適宜レントゲン写真を撮り記録を残します。
- 麻酔は不要です。
- 当日1~2時間後(水溶性造影剤)または翌日(油性造影剤)にレントゲン写真を撮り、卵管の周りへの癒着がないかをみます。
- 下記に造影剤の種類とその特徴を示しました。
油性造影剤
- 禁忌:ヨード過敏症、重篤な甲状腺疾患
- 体内残留:数カ月
- 妊娠効果:あり
- 疼痛:あり(ないことも)
- 画像:鮮明
- 検査日数:2日
- 塞栓症:あり
水性造影剤
- 禁忌:ヨード過敏症、重篤な甲状腺疾患
- 体内残留:速やかに吸収排出
- 妊娠効果:不明
- 疼痛:比較的弱い
- 画像:不鮮明
- 検査日数:1日
- 塞栓症:なし
検査にかかる時間は?痛みはある?
- 検査そのものは数分で終了します。
- 卵管の閉塞や狭窄があった場合、痛みを強く感じることがあります。
- 緊張から卵管の収縮がおき、痛みが増すことがあります。
- 過度に怖がらず、リラックスして検査に臨んで下さい。
- 痛いときは無理に我慢せず、教えて下さい。検査を中断したり場合によっては中止します。
他にどのような検査法があるの?
- 超音波を使った検査が以下の2つあります。
- アレルギーや甲状腺の病気で造影剤が使用できない方も検査できます。
- 外来診察室で簡単に検査ができ、レントゲン透視などの特殊な設備・機器も不要です。
ソノヒステログラフィー(SHG)
- 生理食塩水を子宮内に注入し、経腟超音波で子宮内を観察します。ポリープなどのできものをよく映し出し、子宮卵管造影検査では写らない小さいポリープなども検出できます。
- 注入した生理食塩水がお腹に溜まるのを観察することで卵管の通過性があるとされますが、左右どちらが通っているかまでは解りません。
超音波子宮卵管造影検査(HyCoSy)
- 超音波造影剤を使用して卵管の通過の有無をみる検査です。
- 近年、診断が容易になり精度も子宮卵管造影検査と同等以上と評価されています。
- 世界的には子宮・卵管造影検査に替わり普及が進んでいますが、日本では、有効な超音波造影剤が発売されていないため普及に至っていません。
理解しておきたい リスクと合併症
- 子宮・卵管造影検査を行う上で下記のような症状をきたす場合があります。
造影剤アレルギー
- 造影剤使用経験の有無にかかわらず、アレルギー症状がでることがあります。
- 吐き気・動悸・かゆみ・発疹(皮膚のぶつぶつ)などの症状が現れます。そのような場合、様子をみるか症状に対する処置を行います。
- 呼吸困難、意識が悪くなったり、血圧の低下など症状を起こす場合もあります。起きるのは非常に稀ですが、治療が必要で入院を要する場合や後遺症が残る可能性もあります。
造影剤による塞栓症
- 造影剤が子宮の筋肉を通って、静脈に入ってしまうことがあります。
- 油性造影剤は肺の毛細血管で詰まることがありますが、通常の検査での使用量で症状がでることはありません。
- 水性造影剤は血液に溶けるので塞栓症は起きません。
- 検査中に血管への流入がみられた場合は、検査を中止します。
甲状腺の抑制
- 造影剤は、甲状腺の働きを抑える可能性があります。
- 甲状腺の病気がない方に影響はありませんが、病気のある方で検査後に体調変化があれば、内科で相談して下さい。
腹膜炎
- 腹膜と呼ばれるお腹の内容物を包んでいる膜が炎症を起こすことです。
- 起きる確率は稀(0.1%以下)です。
- 検査後の抗菌薬は必須ではありませんが、処方されたら指示通り服用して下さい。
被曝
- レントゲンを使うため被曝しますが、許容される範囲内であり健康被害が出ることはありません。
検査後にこんな症状があったらスタッフに伝えてください
- アレルギー症状(悪心、気分不快、意識がもうろうとする、呼吸困難、皮膚のぶつぶつ・発疹、皮膚のかゆみ等)や強い腹痛、38℃以上の発熱、多量の出血があれば連絡して下さい。
- 軽い腹痛~違和感、多少の体熱感、少量の出血は心配いりません。
妊娠しやすくなるの?
- 油性造影剤では妊娠への治療効果が認められています。
- 一方で、水性造影剤では確認されていません。
検査で異常があった場合は?
- 子宮・卵管造影検査は子宮・卵管に異常があるかの検査ですので、異常所見があった場合は二次検査が必要となります。
子宮の異常
- 子宮奇形などの形態異常やポリープを疑う場合は、子宮鏡検査(子宮用の胃カメラのようなもの)をします。
卵管の異常
- 卵管の通過の有無、卵管水腫(卵管に水がたまる病気)、卵巣の周りの癒着を疑う場合は、腹腔鏡検査が適応となります。
- 検査に伴う痛みや緊張は卵管の収縮を起こし、実際は通過しているのに閉塞と写ることが少なくありません。
- 正確な診断には腹腔鏡検査は必須ですが体へのダメージがあるため、するしないは担当医とよく相談して下さい。