舌癌:どんな病気?検査や治療は?完治するの?
更新日:2020/11/11
- 耳鼻咽喉科専門医の松浦 一登と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が舌癌になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 舌癌とは、舌の前方2/3にできるがんのことです。
- 舌癌は、口腔がんの約半分を占めます。舌の両脇にできることが多く、舌の先や表面の中央部分にはほとんどできません。
- 典型的な症状は、舌の両脇(舌縁)の硬いしこりです。日ごろから鏡で口の中をチェックし、気になるものや症状がある場合には早めに耳鼻咽喉科、歯科口腔外科などを受診してください。
- 治療は手術が中心となります。
舌癌は、どんな病気?
- 舌癌とは、舌の前方2/3の舌可動部にできるがんのことです。
- 舌癌は、口の中に発生するがん(口腔がん)の約半分を占め、ほとんどは扁平上皮癌という種類のがんです。舌の両脇(舌縁)にできることが多く、舌の先や表面の中央部分にはほとんどできません。
医療従事者向けコラム:舌について
- 舌は、表面の粘膜と内部の筋肉でできています。前方2/3の舌可動部という部分と、後方1/3の舌根に大きく分けられます。
舌癌の症状は?
- 舌癌の症状は、以下の通りです。
舌癌の症状
- 舌の両脇(舌縁)の硬いしこり:最も典型的な症状です。
- 粘膜のただれ
- 赤い斑点、白い斑点
- 口内炎が治りにくい
- 痛みや出血、口臭:がんが進行した場合、出ることがあります。
- 首が腫れる:首(頸部)のリンパ節にがんが転移した場合、出ることがあります。
セルフチェック
- 舌癌は鏡を使って自分で見ることができるがんです。日ごろから鏡で口の中をチェックし、気になるものや症状がある場合には早めに耳鼻咽喉科、歯科口腔外科などを受診してください。
舌癌になりやすいのはどんな人?原因は?
- 舌癌は、男性、50歳~70歳代に多いがんです。しかし、20歳~30歳でもなることがあります。日本全国で1年間に約4,200人が診断されています。これは日本人全体の癌の発生した数の約0.4%で、希少ながんに分類されています。
- 舌癌の原因は明らかではありません。しかし、舌癌が発生する主なリスクはタバコとお酒です。そのほか、長い間の機械的な刺激(歯が常に舌に当たっていることや合ってない入れ歯、未治療の虫歯など)もあります。
- また、「白板症」という粘膜の白色の板状・斑状の変化がある場合、正常な粘膜と比べてがんになる可能性が高いため、十分な注意が必要です。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 診察で舌を見て、舌や首のあたりを触ります。がんが疑われる部分の大きさや形、しこりの範囲・深さ・硬さを確認します。首を触って、がんがリンパ節に転移しているかどうかをみます。
- 次に舌癌と確定するために、細胞診や組織診を行います。細胞診は、ブラシや綿棒などで舌の表面をこすって細胞をとり、組織診は、組織の一部を切り取って調べます。口内炎や治りにくい潰瘍などは症状や見た目が似ているため、数週間続く場合にはこれらを行います。
- 舌癌と診断がついたら、超音波検査(エコー)、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査を行います。また、タバコやお酒を飲んでいる人が多いので、他のがんがないか、上部消化管内視鏡検査を行うことをおすすめします。
どんな治療があるの?
- 舌癌の治療は手術が中心ですが、状況によっては、放射線治療の1つである「組織内照射」を行うこともあります。
- また、手術後は、抗がん剤と放射線治療を組み合わせる「術後補助療法」を行うことがあります。
舌癌の手術
- 舌部分切除術:早期の舌癌でがんが小さい場合に、舌可動部の一部分を切る「舌部分切除術」を行います。切る範囲が小さいので、食べたり飲み込んだりする機能や、話しをする機能にはあまり影響を及ぼしません。
- 舌半側切除術、舌(亜)全摘出術:がんが進行して大きい場合、舌を半分~全部取ってしまいます。このとき食べたり、飲んだり、話したりする機能が大きく低下するので、手術後の舌の機能を保つために、自分の体の一部(お腹や太腿の皮膚・筋肉)を移植する再建手術を合わせて行うことがあります。
- 頸部郭清術:頸部のリンパ節への転移がある場合に、転移リンパ節を周りの組織ごと取り除く「頸部郭清術」を行います。また、リンパ節への転移がなくても、今後リンパ節転移が起こる危険性が高いと判断された場合にも、行われることがあります。
医療従事者向けコラム:舌癌の治療方法はどうやって決めるの?
- がんの進行度や体の状態などから決定します。がんの進行度は、元となるがん(原発巣)の状況と転移の状況を総合して判定され、「病期(ステージ)」として示されます。
どのくらい治るの?
- 舌癌の患者さんの約70%は、診断された5年後も生存していると言われています。ステージ別だと、ステージⅠで約95%、ステージⅡで約80%、ステージⅢで約60%、ステージⅣで約50%となっています。(全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2019年3月集計)による)
どのような療養生活を送ればいいの?
- 治療を受ける前から、歯科による口腔ケアを行うことをおすすめします。手術や放射線治療での合併症を予防することができます。
- 治療後には、かむこと・飲み込むことや話す機能を回復させるためのリハビリテーションが必要です。これらは、医師や看護師の他に、言語聴覚士や管理栄養士、歯科医師、歯科衛生士といった多くの専門家の協力の下で行っていきます。
治療後の通院は?
- 舌がんの再発は治療後2年以内に生じることが多いため、2年間は1〜2カ月に1回程度の定期的な受診が必要です。その後、通院間隔は開いていきますが、少なくとも5年間は経過観察を行うのが一般的です。
- 診察では主に視診・触診を行いますが、視診・触診ではわからない深い部分の再発を調べるために、MRI検査やCT検査を行うことがあります。
予防するには?
- リスクである、タバコとお酒をひかえることが、最も効果のある予防法といわれています。また、虫歯の治療や義歯の調整も有効です。