インプラント治療:どんな治療?利点と欠点は?治療期間や費用は?
更新日:2020/11/11
- 日本補綴歯科学会専門医の富塚 健と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかするとインプラント治療を勧められ不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- インプラント治療は、人工の歯の根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、これに被せ物や義歯を入れる治療方法です。
- 顎の骨を削る外科的な処置を伴います。
- 義歯やブリッジによる治療に比べると治療期間が長くなります。
- 義歯に比べるとより硬いものを噛むことが期待できます。
- インプラント治療をするためには、インプラント体を埋める顎の骨の状態の条件がそろっている必要があります。
- インプラント体の周囲そして被せ物や義歯は、日常の入念なセルフケアと定期的なチェックが欠かせません。
どんな治療?
- インプラント治療は、人工の歯の根(インプラント体)を顎の骨に埋め込み、これを土台にして被せ物や義歯を入れて噛む機能などを回復する治療方法です。
- インプラント体の材料には、チタン合金やセラミックスなど、体の中に埋め込まれても害を及ぼさないものが使われます。
- 最近はインプラント治療にもバリエーションが増え、インプラントを一緒に使って義歯の安定を目指すという方法もあります。
義歯やブリッジとの違い
- 歯がないところを補う方法には、義歯(入れ歯)、ブリッジがありますが、インプラント治療は、顎の骨を削る外科的な処置を伴うところがこれらと大きく違う点です。
- また、一般的には義歯やブリッジによる治療に比べると治療期間が長くなります。
利点と欠点は?
- インプラント治療には利点と欠点があります。
利点
- 義歯やブリッジ、とくにブリッジの治療では周囲の歯を削る必要が生じますが、インプラント治療では、その必要性は低いです。
- インプラント体は顎の骨に埋め込まれるため、義歯に比べると違和感が少なく、より硬いものを噛むことが期待できます。この場合、インプラントと噛み合わせる歯が、どのような状態であるかによって異なります。
欠点
- 外科的な処置を伴うため、健康状態などによっては、インプラント治療の適応にならない場合があります。重度の糖尿病、喫煙などがその例です。
- インプラント治療は、歯が失われた場所であれば必ず適用できるわけではありません。長期にわたって安定した機能を確保するためには、インプラント体を埋める顎の骨の状態(骨の量や質)などの条件がそろっている必要があります。
- 必要な治療のステップが多いので、治療期間は義歯やブリッジの場合より、長くかかります。
- インプラント治療後、よい状態を維持するためには、日常のインプラント周囲の入念なセルフケアが大変重要になります。
治療の流れ
- インプラント治療の流れです。
治療前
- 初めにインプラント治療の適応になるかどうかについて、十分な検査が必要になります。これらの結果をもとに、適切なインプラント体の本数や埋め込む位置などを決めてゆきます。
検査の内容
- 全身状態の評価
- エックス線写真やCTによる画像診断など:顎の骨、歯肉、噛み合わせの状態の確認のため
- インプラント治療を開始する前に、口の中全体の状態を整えておくことも重要です。
- とくに残っている歯に歯周病がある場合は注意が必要です。歯周病の細菌が、インプラント周囲にうつって炎症を起こすインプラント周囲炎が発生する可能性が高まるため、あらかじめ治療をしておきます。もし、インプラント周囲炎が起きるとその治療は難しく、進行するとインプラントが自然に抜けてしまいます。
- インプラント体を埋める部位の顎の骨や骨を覆う粘膜の状態を改善する処置が使われることがあります。これらの処置はインプラントの埋め込み前や、埋め込みと同時に行われます。
インプラント治療の内容
- インプラント体の埋め込み手術は、局所麻酔あるいは全身麻酔をしたうえで行われます。全身麻酔は、広い範囲の手術であったり、埋め込む本数が多いなど、やや大掛かりな手術の場合に使われます。
- インプラントの手術は2回法といわれるものが標準的です。初めに土台であるインプラント体を顎の骨に埋め込み、一定の期間が経ってインプラントがしっかり顎の骨と結合したと考えられるタイミングで2回目の手術(2次手術)を行います。
- 2次手術が完了すると歯肉の上に専用のパーツが取り付けられた状態となります。周囲の歯肉が安定したら、型どりをし、被せ物や義歯を作ります。
治療後
- インプラント体の周囲そして被せ物や義歯は日常の入念なセルフケアと歯科医院での定期的なチェックが欠かせません。
- これらを適切に行わないと、インプラント治療は成功しません。
費用は?
- 基本的には、保険外診療です。
- ただし、腫瘍、顎骨骨髄炎、外傷などにより、広い範囲で顎の骨が失われ、義歯やブリッジでは噛む機能の回復が難しい場合には、保険診療の対象になります。これを広範囲顎骨支持型補綴といい、この治療を受けられるのは基準を満たしている保健医療機関においてのみになります。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- 「口腔インプラント治療とリスクマネジメント2015」 公益財団法人日本口腔インプラント学会 編
- https://www.shika-implant.org/publication/dl/riskmanagement2015.pdf
- 「口腔インプラント治療指針 2020」 公益財団法人日本口腔インプラント学会 編
- https://www.shika-implant.org/publication/dl/2020_guide.pdf