口腔乾燥症:原因は?口腔ケアなどの対処方法は?治療はあるの?
更新日:2020/11/11
- 口腔外科と口腔内科の専門医の山崎 裕と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が口腔乾燥症になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 口腔乾燥症【こうくうかんそうしょう】とは口の中が渇く症状で、ドライマウスとも呼ばれます。単に口がかわくだけでなく、さまざまな症状を引き起こし、全身にも影響します。
- 主な原因は、多くの種類の薬、年をとることによる筋力の低下、ストレスなどです。
- 多くの方が長生きされるようになった近年、口腔乾燥症の患者さんは非常に増えています。
- 適切な対応で良くなる場合が多いので、専門である歯医者さんに一度、ご相談ください。
口腔乾燥症は、どんな病気?
- 口腔乾燥症とは、実際に乾燥している・していないにかかわらず、「口の中がかわく」と感じる病気です。
- 口のかわきには、「冷たい水を飲みたい」と思う場合と、「なんとなく口内が乾く」場合の2種類があり、原因や対応が異なります。
- 冷たい水を飲みたくなる場合は、体の中でエネルギーを作る過程の異常(代謝性障害【たいしゃせいしょうがい】といいます)が関係しています。
- 単に口が乾く場合の多くは、唾液の分泌が減ることでおこります。これには多くの原因があります。なかには唾液の分泌は問題なくても常に口が開いていることによって水分が蒸発してしまうことでもおこります。
- 口がかわいているとおっしゃる方の中には診察しても口のなかの乾燥を認めない場合もあり、その場合は精神的なものが原因であることが疑われます。
受診前によくなるために自分でできることは?
- 意識して水分を摂るようにし、口の中を潤わせるとよいでしょう。
- 食事が十分に摂れていなかったり、汗をたくさんかいているのに水分を摂っていない場合には、食事や水分をしっかり補給してください。
- 寝る前は口の中を十分に潤わせてから、マスクをつけて寝るとよいです。ただし、鼻は覆わないでください。
口腔乾燥症になりやすいのはどんな人?原因は?
- 口腔乾燥症は下記のような方がなりやすいです。
口腔乾燥症になりやすい方
- 薬をたくさん飲んでいる方:とくに向精神薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗コリン作用薬、制吐薬、抗ヒスタミン薬、降圧薬、風邪薬、胃酸を抑える胃薬など
- 強いストレスを受けている方
- 老化による筋力の低下がある方
- 口の機能に麻痺がある方(原因:脳の血管の障害など)
- 唾液をつくる組織(唾液腺といいます)の機能に障害がある方(原因:シェーグレン症候群や頭頚部癌に放射線治療を行った方など)
- 代謝性障害を起こしている方(原因:発汗が多い、脱水、下痢、糖尿病、甲状腺機能亢進症、腎機能不全、貧血など)
- アルコールやたばこを多くたしなむ方
- 口で呼吸をしている方(原因:鼻の病気や花粉アレルギーなど)
どんな症状がでるの?
- 口の中が渇くことで、いろいろな困った症状が起こってきます。
口腔乾燥症による症状
- 口がかわいてしゃべりづらい
- 口がにおう
- ねばねば、べたべたなど不快感がある
- 口の中に食べものが張り付くため、食事のときに飲み物が必要になる
- 舌がひび割れやすく、ヒリヒリして痛い
- 口の端がひび割れて痛む(口角炎【こうかくえん】といいます)
- 味覚がおかしくなる
- 入れ歯を入れていられなくなる
- 虫歯や歯周病【ししゅうびょう】になりやすくなる
- 夜間、水を飲むために起きてしまう
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- ガムまたはガーゼを噛んでいただき、一定の時間に分泌される唾液の量を測る検査をします。
- 口腔水分計【こうくうすいぶんけい】で舌の表面に保持されている唾液による湿り具合を測る検査も行われることがあります。
コラム:その他の検査
- カンジダ症が疑われる場合、カンジダの培養検査が行われます。
- シェーグレン症候群が疑われる場合、血液検査、口唇腺の病理検査、唾液腺造影検査、眼科での涙液の分泌検査などが行われます。
どんな治療があるの?
- 口が乾く原因が取り除けるものである場合は、できるだけ原因を取り除いて唾液を分泌しやすくします。また、唾液腺の機能に応じた治療を行います。
原因を取り除ける場合の治療の例
- 歯や入れ歯の問題でうまく噛めない場合:歯医者さんに行って歯科治療を受けてください。
- いろいろなお薬を飲まれていることによる副作用の可能性がある場合:主治医とお薬について相談します。
- 脱水症や糖尿病など代謝性障害や、唾液腺そのものの異常の場合:まず原因となっている病気の治療を行います。治療できないものについては症状を和らげる対症療法を行います。
- シェーグレン症候群や、頭頚部癌への放射線治療による場合:唾液の分泌を刺激する薬や漢方薬による治療を行います。
唾液腺の機能に応じた治療
- 唾液を分泌する力が十分残っている場合:ガムをかむなどの噛む刺激を与えたり、唾液腺をマッサージして、唾液が出るように促します。
- 唾液の分泌能がほとんど残っていない場合:口を潤すジェルやスプレーなどの保湿剤や、人工の唾液で頻繁に口の中を潤します。保湿剤は洗口液、ジェル、スプレーなどさまざまなタイプがあり、味も違いますので好みのものを使用してもらいます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- うがいは強く何度も行うとかえって逆効果になりますので軽くで十分です。
- ジェルタイプの保湿剤を塗るときは、先にうがいなどで口の中を十分に潤してから薄くのばして下さい。
- 唾液の分泌を刺激する薬は、副作用の頻度が高いです。汗が多く出る、吐き気がする、お腹が痛い、お腹が膨らんだ感じがする、下痢がちになる、何度もトイレに行きたくなるなどの症状が出たら、一度受診されることをおすすめします。
- 症状が良くなったからといってすぐに対応を止めてしまうとまた元の症状に戻りやすいので、根気強く毎日欠かさず習慣にすることが大切です。
予防のためにできることは?
- 鼻の通りを良くして鼻呼吸ができるようにします。特に寝る時は寝室の湿度を高くし、枕の高さや寝る姿勢などに気を遣ってください。マスクをするのも良いですが、鼻は出すようにしてください。
- シュガーレスガムを噛んだり、保湿剤を使ってみるとよいでしょう。
- 普段の食事では、いつも以上にしっかり奥歯で噛むのを意識してください。
- 口の中を清潔に保つよう、口腔ケアをしっかりしてください。
- 唾液は血液から作られます。血液は、しっかり食事を摂ることで作られますので過度なダイエットは控えて下さい。
- 最近、唾液の分泌の刺激にはうま味成分の刺激が有効であることが分かってきました。うすめた昆布茶や昆布のだし汁を口内に長く含むことも予防につながります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 治療によって効果の出るスピードは違います。
- 薬物療法は効果が出にくい場合もあります。
- ガムを噛んだり唾液腺のマッサージをしたり、保湿剤を使ったりすると、比較的すぐに効果がでることが期待できます。