食道・胃静脈瘤:原因は?症状は?内視鏡で治療ができるの?
更新日:2020/11/11
- 日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本門脈圧亢進症学会技術認定取得医の中村 真一と申します。
- このページに来ていただいたかたは、おそらく、肝臓の病気で通院されており、内視鏡検査を受けた方だと思います。食道・胃静脈瘤が発見されて、「大きな病院に行ってください」、「専門の先生にみてもらってください」と言われて不安を感じておられる方が多いのではないでしょうか。
- いま不安を抱えている方に、食道・胃静脈瘤とはどんな病気なのか?を中心に役立つ情報をまとめました。
目次
まとめ
- 食道・胃静脈瘤とは食道や胃の入り口付近にある表面近くの血管がこぶ状に膨れたものです。
- 肝臓が悪くなっている方にみられることが多いです。
- 通常は無症状ですが、膨らんだ血管が破れると出血します。
- 治療は内視鏡で行います。治療後も血管が再びふくれてくることがあるので、定期的に検査をうける必要があります。
食道・胃静脈瘤は、どんな病気?
- 食道・胃静脈瘤とは、食道や胃の入り口付近の表面近くにある血管がこぶ状に膨らんだものです。
- 腸管からの栄養を含んだ血液は門脈という血管を通って肝臓に流れ込みます。しかし、何らかの原因で門脈の血液が肝臓に流れにくくなると、肝臓以外の場所、とくに食道や胃の方へ血液が逃げていきます。その結果、血管が異常にふくらんでこぶ状になります。これが静脈瘤です。
- 通常は無症状ですが、破裂すると多量に出血して、血を吐いたり(吐血)、黒い便が出たりします。
食道・胃静脈瘤と思ったら、どんなときに病院・クリニックを受診したらよいの?医療機関の選び方は?
かかりつけ医への受診がおすすめの場合
- 多くは肝臓の病気が原因です。すでに消化器内科や肝臓専門の医師の診察を受けている方が多いと思います。とくに症状がなく、内視鏡検査で食道・胃静脈瘤といわれた場合は、まずかかりつけ医へ受診してください。
専門医療機関への受診がおすすめの場合
- 治療をすすめられた場合は、肝臓や内視鏡専門の医師がいる病院を受診してください。
救急車を呼ぶ場合
- 血を吐いたり(吐血)、黒い便が出た場合は直ちに救急車を呼び病院を受診して下さい。
- めまい、ふらつき、冷汗がある場合もすみやかに受診して下さい。
食道・胃静脈瘤になりやすいのはどんな人?原因は?
- 食道・胃静脈瘤になる方は、もともと肝臓が悪い場合が多いです。特に、肝臓が硬くなってしまう、肝硬変という状態の方にみられます。肝臓に悪さするウイルス、お酒、脂肪などが原因となります。
- 膵臓に病気がある場合にもみられることがあります。
どんな症状がでるの?
- 膨らんだ血管が破れない限り、通常、症状はでません。つかえ感、痛みはありません。
血管が破れた(出血した)場合
- 血を吐く(吐血)、黒い便が出るなどの症状をきたします。また、貧血によって、めまい、ふらつき、冷汗などを自覚することもあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 内視鏡で食道や胃を観察します。
- 食道・胃静脈瘤の膨らみが大きい場合や、赤みが目立つ場合は、治療が必要になります。このような場合には、画像検査(CTや超音波内視鏡検査)で静脈瘤の状態をくわしく調べます。
どんな治療があるの?
内視鏡を用いた治療
- 現在、最も主流な治療法です。
- 膨らんだ血管に薬を注射して血液を固まらせたり、膨らんだ部分を輪ゴムでしばって血液が流れないようにしたりする方法があります。
カテーテル(細い管)を用いた治療
- 太ももの付け根や肝臓の血管からカテーテルという細い管を入れ、膨らんだ血管を薬でかたまらせます。
手術
- 内視鏡やカテーテルでは治療できない場合に、手術で治すことがあります。
お薬を用いた治療
- 門脈の血圧を下げて、静脈瘤の血圧も下げます。
- 内視鏡で治療した場合は、注射したところやしばったところが傷んでいるため、食道や胃の壁を守るお薬を飲みます。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
内視鏡を使った治療を受けた場合
- 胸が痛い、ものがつかえる感じがすることがあります。熱が出ることもあります。
- 治療したところから出血する、ごくまれに食道の壁に孔があくことがあります。
- 食道・胃静脈瘤の治療は、その原因となっている病気を治すものではありません。肝臓に血液が流れにくい状態は治療後も続くため、再びこぶ状に膨らむ可能性があります。半年~1年に一度は内視鏡検査を受けて、食道・胃の状態を確認してください。
- 治療後にも、血を吐く、黒い便が出た、めまいやふらつきがある場合には、すぐに病院を受診してください。
予防のためにできることは?
- 食道・胃静脈瘤の発生を予防することは困難です。食事や生活習慣に気をつけて、肝臓が悪くならないようにしてください。
今ある静脈瘤が破れないようにするには。
- 食事の仕方に注意してください。固いもの、小骨などのとがったもの、刺激のあるもの、お酒は避けてください。
- 十分な睡眠や休息も大切です。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 例えば内視鏡で治療した場合、数週間で消滅あるいは縮小させることができます。
追加の情報を手に入れるには?
- 食道・胃静脈瘤専門のガイドラインはありませんが、「肝硬変診療ガイドライン2015 改訂第2版」(日本消化器病学会編、南江堂)が参考になります。
- 医師や専門家向けですが、厚生労働省の班会議から、「門脈血行異常症ガイドライン2018改訂版」が発表されています。
おわりに
- 食道・胃静脈瘤は慢性の肝臓病があることで起こる病気です。元の肝臓の病気を悪くしないようにすることが大事です。