エラストグラフィー検査:どんな検査?何が分かる?異常と言われたら?
更新日:2022/05/20
- 肝臓専門医の留野 渉と申します。
- このページに来ていただいた方は、医師からエラストグラフィー検査を勧められ、聞き慣れない検査のために、どのような検査であるのかについて不安を感じておられるかもしれません。
- エラストグラフィー検査について理解する上で役に立つ情報をまとめました。
- エラストグラフィー検査について、「どのような検査か?」、「何が分かるのか?」、「異常と言われたらどうしたら良いか?」について記載をさせて頂いています。
目次
まとめ
- エラストグラフィー検査とは慢性肝疾患の方、あるいはその疑いのある方について、肝臓の組織が硬くなっていないかどうか、またその程度を評価する検査です。
- 肝臓の硬さ、線維化が進むにつれて、肝臓がんが発生する確率や、肝硬変や肝不全へ進行するリスクが高まることが知られているため、肝臓疾患の治療方針を決定するために重要な情報を得ることができます。
- 腹部超音波を用いた専用の測定装置を用いて検査を行います。
- 検査時間は約5分間から10分間です。
- 検査に伴うリスクや合併症は無く、体に負担をかけずに肝臓の硬さを知ることができます。
エラストグラフィー検査とは、どんな検査?
- エラストグラフィー検査とは、超音波を使って組織の硬さを測定する、新しい画像の診断方法です。
- エラストグラフィーで、肝臓の硬さを測ると、ご自分の肝臓が線維化(線維が増えて硬くなること)を起こしているかどうか、またその程度(線維化ステージといいます)を測ることができます。
エラストグラフィー検査を受けるべき人は?
- 以下の病気を持っている方は、エラストグラフィー検査を受けるのをおすすめします。
検査を受けた方がいい病気
- ウイルス性肝炎(B型肝炎やC型肝炎など)
- 脂肪肝
- アルコール性肝疾患
- 自己免疫性肝疾患(自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎など)
- 薬物性肝障害
- 以上のような長く続く肝臓の病気を持っている方、あるいはその疑いのある方が対象となります。
- 特に、肝臓の病気を長年持っている方、血液検査で肝臓の機能の異常(AST、ALT、γGTPなどが高い値)が続いている方は、検査をおすすめします。
- 腹水(おなかのすき間に体の液体がたまること)のある方や、ひどい肥満がある方は、検査の振動が肝臓にうまく伝わらないために測定ができない場合があります。
エラストグラフィー検査の手順は?
- 様々な種類のエラストグラフィー検査がありますが、代表的なフィブロスキャン検査について説明します。
手順
- 検査台の上に仰向けになり、右腕を挙げた姿勢になります。
- 肝臓の位置を超音波検査で確認します。
- 専用の測定器具(プローブ)を皮膚に垂直に押し当てます。右の脇腹、肋骨の間から検査を行います。
- できれば、医師の合図に合わせて2-3秒間息止めをして下さい。息止めをした方が検査結果のバラつきが少なくなります。
- 医師がスイッチを押すと、振動が肝臓内に伝わり、その伝わる速度を超音波で計測し、その速度から肝臓の硬さが分かります。振動が加わるときに少し押される感じはありますが、痛みはありません。
- 検査時間は約5分~10分です。入院の必要はありません。
エラストグラフィー検査の合併症は?
- エラストグラフィー検査は、合併症やリスクはありません。
- 体に負担をかけることなく肝臓の硬さを知ることができます。
エラストグラフィー検査で異常と言われたら?
- エラストグラフィー検査で異常と言われたら、お腹の超音波やCT、MRIなどで肝臓癌がないか、胃カメラで胃・食道静脈瘤がないかどうかを定期的に検査、また肝臓を一部取る生検をすることで、早く発見、早く治療を行うことが重要です。
- 硬さの程度によって、その必要や検査の間隔は異なってくるため、担当医とよく相談して決めることが大切です。
- また、エラストグラフィー検査で肝臓に硬さがある、または線維化が進行している恐れがある場合には、肝生検をおすすめする場合があります。
ガイドラインなど追加の情報を手に入れるには?
- より詳しい情報や最新のガイドラインについては、以下のウェブサイトを参照してください。
- 日本肝臓学会 ウェブサイト
- http://www.jsh.or.jp/medical/
- 日本超音波医学会 超音波エラストグラフィ診療ガイドライン:肝臓
- https://www.jsum.or.jp/committee/diagnostic/pdf/elast_kan_ja.pdf
もっと知りたい! エラストグラフィー
なぜ肝臓の硬さをエラストグラフィーで測るといいの?
- 肝臓の病気を持っていると、長い年月をかけて肝臓の組織は線維化を起こし硬くなります。もっとも硬くなった状態を「肝硬変」といいます。
- 肝臓の線維化が進むと、肝臓がん、胃食道静脈瘤、肝不全が発生する確率も高くなるので、エラストグラフィー検査で硬さを知ることが、治療をどうするかの重要な情報の一つとなります。
検査前の注意点は?
- 食事によって検査結果に影響が出るため、原則として食事を抜いて行います。飲水や、必要な薬の内服は可能です。
なぜ右腕を挙げた姿勢なの?
- 右腕を挙げるのは、肋骨と肋骨の間をできるだけ広くして、検査結果に骨の影響が出ない様にするためです。
検査は何回行うの?
- 検査結果は、有効な測定を少なくとも10回行い、それらの測定値の中央値を測定結果(肝臓の硬さ)とします。
- 測定がうまくいかないとエラーが表示されます。
硬さの単位は?
- 肝臓の硬さの測定結果は、キロパスカル(kPa)で表示されます。
肝臓の脂肪化について
- フィブロスキャン検査では、肝臓の硬さの測定と同時に、超音波が肝臓の中を通るときだんだん減少することを利用した、CAPと呼ばれる技術により、脂肪肝の程度も数値で測定することが可能です。
- 近年増加している脂肪肝の診断、診療に役立っています。