体質性黄疸:病気なの?それとも体質?検査は?治療は必要?
更新日:2020/11/11
- 肝臓専門医の本多 靖と申します。
- このページに見ていただいている方は、もしかするとご自身やご家族の方が体質性黄疸と指摘され、不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 体質性黄疸とは、遺伝的な原因によって、血液中のビリルビンが上昇する病気です。
- 血液中のビリルビンが上昇すると、皮膚や白目が黄色くなります。
- 体質性黄疸のほとんどは、ジルベール症候群です。症状はほとんどなく、治療の必要もありません。
体質性黄疸は、どんな病気?
- 体質性黄疸とは、遺伝的な原因によって、血液の中のビリルビンという成分(赤血球に含まれる黄色い色素)が増える病気です。
- ビリルビンが増えると、皮膚や白目の部分が黄色くなります。
- 体質性黄疸では、肝臓の機能に障害はありません。
- 体質性黄疸の中で最も頻度が高いのはジルベール(Gilbert)症候群です。ジルベール症候群は、思春期以降に指摘される黄疸や、検診などの機会に発見されることがほとんどです。過労やストレスで黄疸が強くなったり、食事をしなかったりすると黄疸が強くなることがありますが、治療の必要はありません。予後も良好な病気です。
コラム:ビリルビンと黄疸
- ビリルビンには総ビリルビンと直接ビリルビン、間接ビリルビンの3種類があります。総ビリルビンは直接ビリルビンと間接ビリルビンを合計したものです。
- 血中の総ビリルビンが2~3mg/dLを超えると黄染が認められます。
体質性黄疸の種類
- 体質性黄疸のほとんどは、ジルベール症候群です。全人口の2~5%に認める病気で、間接ビリルビンが優位に上昇します。
- その他に3つの体質性黄疸がありますが、100万人から1000万人に1人の割合で発症する非常にまれな病気で、日本では数十例から数百例とされています。以下にそれぞれの病気の説明をしますが、興味がある方はご一読ください。
体質性黄疸の種類
- デュビン・ジョンソン(Dubin-Johnson)症候群:主に直接ビリルビンが上昇
- ローター(Rotor)症候群:主に直接ビリルビンが上昇
- ジルベール症候群:主に間接ビリルビンが上昇
- クリグラー・ナジャールまたはクリグラー・ナジャー(Crigler-Najjar)症候群:主に間接ビリルビンが上昇
- デュビン・ジョンソン症候群、ローター症候群:日本では数百例とされ、非常にまれな病気です。どちらの疾患も新生児期から成人期までに黄疸で発見されることが多いですが、治療は不要で、予後は良好です。
- クリグラー・ナジャール症候群:体質性黄疸の中で唯一、生まれた直後から明らかな黄疸を認めます。日本では数十例とまれな病気ですが、新生児期より適切な治療を行わないと生命に関わる病気です。生まれた直後から発症するので、小児科領域の病気です。
体質性黄疸と思ったら、どんなときに病院への受診したらよいの?
- 以下のようなときは、病院へ受診してください。
病院へ行くべき場合
- 皮膚や白目が黄色いと言われた場合
- 健康診断で、肝臓の機能は悪くないのに、ビリルビンが上昇していると言われた場合
- かかりつけ医を受診し、直接ビリルビンと間接ビリルビンをそれぞれ測定し、診断します。場合によっては、肝臓の専門医がいる病院を受診していただくこともあります。
- なお、体質性黄疸の多くは、治療の必要はなく、病気の経過は良いので、安心してください。
体質性黄疸になりやすいのはどんな人?原因は?
- 体質性黄疸は遺伝する病気です。
- ほとんどが常染色体劣性遺伝という遺伝の形式のため、両親や親族に体質性黄疸の方がいなくても、お子さんにだけあらわれる場合もあります。
- ジルベール症候群は全人口の2~5%に認めます。その他の体質性黄疸は、日本では数十例から数百例とされています。
どんな症状がでるの?
- クリグラー・ナジャール症候群以外の体質性黄疸は、ほとんど症状はありません。
- ジルベール症候群は、疲れ、ストレス、食事をしない、などで黄疸が強くなることがあります。
お医者さんに行ったらどんな検査をするの?
- 病院では、総ビリルビンのほか、直接ビリルビン、間接ビリルビンを測定します。
- 他に、インドシアニン・グリーン試験(後述)、腹腔鏡検査(お腹の中にカメラを入れて観察する検査)、肝生検(肝臓の一部を取って調べる検査)などがありますが、日常の診療で行うことはほとんどありません。
コラム:インドシアニン・グリーン試験とは?
- インドシアニン・グリーン試験とは、緑色の色素を注射し、その15分後に採血を行い、色素がどれくらい外に出されたかを測定する検査です。
- 肝臓が異物を処理する能力を調べます。
どんな治療があるの?
- クリグラー・ナジャール症候群以外の体質性黄疸は、治療の必要はありません。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 遺伝性の病気なので、治ることはありません。
- しかし、クリグラー・ナジャール症候群以外の体質性黄疸は治療の必要はありません。予後良好ですので、心配する必要はありません。