ブドウ糖負荷試験:どんな検査なの?異常があると言われたら?
更新日:2020/11/11
- 糖尿病専門医の関口 直孝と申します。
- このページに来ていただいた方は、糖尿病の疑いまたはその心配があり、どのような検査があるのかについて知りたいと考えられているかもしれません。
- 代表的な検査方法であるブドウ糖負荷試験について理解する上で役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
まとめ
- ブドウ糖負荷試験は、糖尿病かどうかを調べるための検査です。血糖値を一定に保つ力があるかを判定します。
- 健康診断で糖尿病が疑われた方や、妊娠中に血糖値が上がってしまった方が対象となります。
- 検査の方法や診断基準が定められているため、評価がより正確になります。検査・診断後の対応・配慮が重要です。
どんな検査?
- ブドウ糖負荷試験とは、決められた量のブドウ糖を飲んでいただいてから一定の間隔で血液検査を行い、血糖値を一定に保つ力があるか調べるものです。糖尿病の診断に使われる検査です。
- 通常の血液検査では、空腹時あるいは食後の血糖値を測定しています。食後の場合、食事の内容や量、食事から採血までの時間によって血糖値が変わってきてしまいます。
- ブドウ糖負荷試験では、飲むブドウ糖の量が75gと規定されており、採血のタイミングも定められています。このように検査の条件が一定であるため評価がより正確となり、再検査を行う際にも前回との比較が可能です。
- また、インスリンも同時に測定することにより、インスリン分泌の程度や、インスリンの効き具合を評価することもできます。
どういう人がこの検査を受けるべき?
- 健康診断で尿に糖が出ている(「尿糖」が+になっている)と指摘された方、血糖値が高いと指摘された方:糖尿病か否かの判定を行う目的で、二次検査(精密検査)として施行されます。
- 以前に境界型(耐糖能異常)と診断された方、血縁者に糖尿病が多い方、心臓病や脳卒中など動脈硬化が疑われる方:ブドウ糖負荷試験による評価が勧められています。
- 妊婦健診で血糖値が高いといわれた方:妊娠中の血糖値の異常は、お母さん、お腹の赤ちゃんの両方に大きな影響を及ぼすことが知られています。そのため、耐糖能異常や妊娠糖尿病がないかを確認する目的でブドウ糖負荷試験が行われます。
検査を勧められない方
- すでに著しい高血糖が確認されている方:検査用のブドウ糖を飲むことでさらなる異常高血糖を引き起こす危険性があるため、検査はできません。
実際には、どんな方法で検査をするの?
検査前日
- 検査前日の夜は早めに食事を済ませ、検査の約12時間前からは何も食べないようにします。
- 飲み物は、糖分の入っていないものであれば飲んでも大丈夫です。
検査当日
- 検査当日も、何も食べずに来院してください。空腹の状態で採血し、血糖値を測ります。
- ブドウ糖75gを含む液体を5分以内で飲みます。飲む前、飲み始めてから30分後、1時間後、2時間後の4回にわけて採血し、それぞれの血糖値を測ります。
検査にかかる時間は?
- 検査だけで少なくとも2時間かかります。
- 受付や、検査終了後の説明時間まで含めると、ブドウ糖負荷試験を受けていただく際には3時間以上の余裕をもってお越しください。
他にどのような検査法があるの?
- ブドウ糖負荷試験は2時間以上かかり、前日は何も食べられない検査のため、事情によっては検査ができない場合があります。
- 糖尿病を疑う場合は、1回~2回の検査でも診断が可能です。次のようなことを調べて診断します。
糖尿病の診断項目
- 血糖値・HbA1c値:1~2か月間の推定平均血糖値を反映します。
- 糖尿病の典型的な症状:口の渇き、多尿などがないか。
- 糖尿病網膜症:糖尿病による眼の合併症がないか。
検査結果はどのように評価したらいいの?
- 糖尿病の診断には、検査の最初に測った空腹の状態での血糖値(空腹時血糖値といいます)と、ブドウ糖を飲んだ後2時間経ってから測った血糖値(ブドウ糖負荷後2時間値)を使います。ブドウ糖負荷試験の結果は、これらの値により次の3つの型に分類されます。
ブドウ糖負荷試験の結果の分類
- 正常型:空腹時血糖値が110 mg/dL未満、かつブドウ糖負荷後2時間値が140 mg/dL未満の場合。すなわち、空腹時血糖値もブドウ糖負荷後2時間値も正常範囲の場合、正常型と判定されます。
- 糖尿病型:空腹時血糖値が126 mg/dL以上、もしくはブドウ糖負荷後2時間値が200 mg/dL以上のいずれかを満たす場合。すなわち、空腹時血糖値あるいはブドウ糖負荷後2時間値のどちらか一方が基準値以上であれば、糖尿病型と診断されます。
- 境界型:正常型にも糖尿病型にも属さない場合(両型の間の場合)、境界型と判定されます。
妊娠中の方
- 妊娠中の方では、基準が異なります。
- 空腹時血糖値≧92 mg/dL、ブドウ糖負荷後1時間値≧180 mg/dL、ブドウ糖負荷後2時間値≧153mg/dL のうち、1つ以上当てはまると「妊娠糖尿病」と診断されます。
検査後に大事なことは?
- 当然のことですが、検査自体が重要なわけではなく、検査後の注意と行動が大事です。
正常型の場合
- このまま健康維持につとめてください。
- なお、ブドウ糖負荷後1時間値が180 mg/dL以上の場合は、糖尿病発症の可能性が高いことが知られています。経過観察が望ましいです。
糖尿病型の場合
- 1度のブドウ糖負荷試験だけでは慢性の高血糖を証明したことにはならないため、あらためて別の検査も受けていただきます。
- 糖尿病による合併症や高血圧・脂質異常など、ほかの疾患がないかも含めた評価が必要となります。
- 糖尿病と診断された場合は、適切な治療を受けてください。
境界型の場合
- 今後糖尿病を発症する可能性があるため、生活習慣を見直していただくことや、定期的な検査を受けていただくことが必要です。
- 特に、ブドウ糖負荷後2時間値が140 mg/dL以上の境界型の方は、心臓病や動脈硬化のリスク(危険度)が高いため、注意を要します。
妊娠糖尿病の場合
- 産婦人科と内科で、適切な治療を受けていただき、健康管理を徹底してください。高血糖状態が続くと母子ともに影響を受けてしまう危険があります。