顔面神経麻痺:原因は?症状は?検査や治療は?後遺症や再発はあるの?
更新日:2020/11/11
- 脳神経内科専門医の村井弘之と申します。
- このページに来ていただいたかたは、もしかすると「自分が顔面神経麻痺になってしまった?」と思って不安を感じておられるかもしれません。
- いま不安を抱えている方や、まさにつらい症状を抱えている方に役に立つ情報をまとめました。
- 私が日々の診察の中で、「特に気を付けてほしいこと」、「よく質問を受けること」、「あまり知られていないけれど本当は説明したいこと」についてまとめました。
目次
まとめ
- 顔面神経麻痺とは顔の筋肉がうまく動かせなくなる病気です。
- 顔面麻痺の原因としてはさまざまなものがありますが、原因がはっきりしない特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)がもっとも多いです。
- ベル麻痺の発症では単純ヘルペスウイルスというウイルスが関係しているといわれています。
- 他にも脳血管障害、脳腫瘍、とくに脳幹部の脳梗塞などで顔面麻痺が起きる可能性があります
- 顔面神経麻痺は2/3くらいのケースでは次第に回復して治ると言われていますが、後遺症が残ることもあります。
- 顔面神経麻痺を良くするためには、リハビリテーションが大切です。
顔面神経麻痺は、どんな病気?
- 顔面神経麻痺とは顔の筋肉がうまく動かせなくなる病気です。
- 顔がうまく動かせないことで、目が閉じにくくなったり、表情がうまく作れなくなったりします。
顔面神経麻痺になりやすいのはどんな人?原因は?
- 顔面麻痺の原因としてはさまざまなものがあります。
- 原因がはっきりしない特発性顔面神経麻痺(ベル麻痺)がもっとも多いです。
- ベル麻痺の発症では単純ヘルペスウイルスというウイルスが関係しているといわれています。ウイルスの影響により顔面神経が腫れて麻痺が起きると考えられています。
- 他にも脳血管障害、脳腫瘍、とくに脳幹部の脳梗塞などで顔面麻痺が起きる可能性があります。
- 顔面麻痺が両側にある場合にはギラン・バレー症候群、ライム病、サルコイドーシス、シェーグレン症候群などを考える必要があります。
- 片側の顔面神経麻痺でベル麻痺の症状に似ているものとしては帯状疱疹ウイルス感染によるラムゼイ・ハント症候群があります。
どんな症状がでるの?
- 顔面神経は顔面の筋肉を動かす神経です。顔面神経が麻痺すると、麻痺した側に下記のような症状が出ます。
顔面神経麻痺の症状
- 額のしわ寄せができない
- 目が十分閉じない
- 口角が下がる
- 口の端から水がこぼれる
- 症状は1日~数日で増悪してピークに達したあと、ゆっくりと回復に向かいます。
- 顔面神経は味覚の一部を伝えたり、涙や唾液を分泌したりする働きもありますので、障害された部位によっては、味覚がわかりにくい、聴覚が過敏になる、涙液や唾液が出にくい、などの症状がでることもあります。
どんな治療があるの?
- 顔面神経麻痺の治療としては下記のようなものがあります。
すぐに行う治療
- 神経の腫れをとるために、ステロイド薬の内服をします。
- できるだけ早めに開始した方がいいと言われています。
- ステロイド薬の量は麻痺の強さに応じて決めます。
- 長期に内服するわけではなく、減量して1ヵ月以内に中止します。
- また、中等度以上の麻痺がある場合には、抗ウイルス薬も併用します。ビタミンB12(メチコバール)も通常処方します。
角膜の保護
- 顔面神経麻痺では目を閉じることが十分にできず、角膜が乾燥して障害されやすいため、ヒアレイン点眼液などを使用します。
- 寝るときはアイマスクなどを着用して埃の侵入や乾燥を防ぐことが必要です。
リハビリテーション
- 顔面筋のマッサージ、温熱療法、顔面の運動練習(額のしわ寄せ、目の開閉、口の開閉、口をすぼめる、頬を膨らませる、など)を根気よく続けることが重要です。
お医者さんで治療を受けた後に注意をすることは?治療の副作用は?
- 顔面麻痺がよくなりきらずに残るという後遺症がもっとも多いです。
- まれではありますが、病的な共同運動というものが起きることがあります。口を開閉するとまぶたも一緒に開閉したり、口を開けると涙が出たりする症状です。
- 病的な共同運動は、回復過程で顔面神経の線維が間違って結合することによって起きると考えられています。
- 麻痺していた側の顔面筋がけいれんして、片側顔面けいれんのようになることもあります。
- 顔面麻痺のリハビリテーションは続けてください。病的な共同運動や、片側顔面けいれん様の症状に対してボトックス治療を行って効果をあげているケースもあります。
治るの?治るとしたらどのくらいで治るの?
- 顔面神経麻痺は2/3くらいのケースでは次第に回復して治ると言われていますが、後遺症が残る患者さんもいます。
- 発症時の症状のピークが重症であればあるほど、回復に時間がかかり、後遺症が残りやすくなります。